6つの連鎖短編からなるゴシックロマン。陸の孤島、中高一貫全寮制学校。ここは「ゆりかご」か「墓場」か。「養成所」か「療養所」か。さまざまな生徒たちがやって来て、去っていく。読みやすいけど、作品としてはあまり完成度は高くはない。余白が多いのは悪くはないけど、あまり中身はないから雰囲気だけで押し通す感じ。
独立した短編を通してこの学校という牢獄が描かれていく。彼らは10代の1番輝いている時間を閉じ込められて暮らす。恩田陸はこの余白だらけの物語を通して、彼らが抱えるどうしようもない想いと寄り添う。ドラマチックな展開は極力排してただあるがままを受け入れる。そこには諦めが根底にある。ぼんやりとして、やり過ごすことしかない。いつのまにか誰かが消えていても気づかないフリをするだけ。お話は何処かへて辿り着かない。着地点を見失ったまま迷走するばかりだ。