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映画・演劇のレビュー

いちびり一家『ポラーノ 夜風にわすれて』

2018-02-15 20:57:40 | 演劇

 

姉と妹。死んでしまった妹を待ち続ける姉のところへ妹は帰ってくる。『銀河鉄道の夜』のカンパネルラのように。そこから始まる、ポラーノの広場への果てしない旅。

 

行方不明になった姉を捜し求める妹と、彼女が引き連れてくる人たち。ツアコンの彼女はいなくなった姉をみんなと一緒に探すことになる。彼らが行こうとしていたのはどこなのか。みんながみんなそれぞれ別々の場所を探し求めている。人がそれぞれ違う人生を生きるように、違う夢を抱くように。でも、知らない間に彼らはこの同じツアーに参加している。

 

いくつもの歌とダンスが、アツキイズムの演奏に支えられて、芝居が始まり終わる。素晴らしい美術と、それを縦横に駆使した圧巻のいちびり一家によるファンタジー。たった100分間の魂の旅。そこには「ささやかだけど、何よりも大切なもの」が描かれる。いちびり一家に僕たちは忘れたれたポラーノの幻の町を探す旅に連れて行って貰う。どこまでも行けるチケットを手にして旅に出る。芝居は旅なんだ、ということを今回もまた教えてくれる。

 

被災地の倒壊した家屋の中に閉じ込められた姉は、ひとり妹の帰りを待つ。妹の遺した本(大好きだった宮沢賢治の文庫本)を読みながら。そんな彼女のところにたくさんの人たちがいくつものドアを開いてやってくる冒頭のシーンが素晴らしい。ワクワクするオープニングだ。だが、僕たちは忘れてはならない。その前にここで彼女はひとりだったこと。そこに妹がやってきたこと。妹はすでに死んでいることを。

 

誰が誰を探しているのか、錯綜とする中、探している人と、探されている人とが逆転して、気がつくと、長いようで実は一瞬の1時間40分の旅が終わっている。

 

ラストで救助の人たちが彼女を呼ぶ声が聞こえてくる中、妹と別れていくシーンでは胸が一杯になる。何があっても生きなくては、と思う。そんな熱い想いにさせられる。

 


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