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映画・演劇のレビュー

藝術中心◎カナリヤ条約 プロデュース 『水盤舞台2012』

2012-08-21 21:21:43 | 演劇
 舞台には水盤(間口360cm×奥行270cm×水深12cmの浅いプール、つまり「水盤」)が用意された。これを使う。ここでどんなパフォーマンスを見せるのかが、それぞれの演者に与えられた使命だ。今回挑戦するのは、6名のダンサー、パフォーマー、役者。特別参加で栃村結貴子さんと、久保田寛子さんも参戦する。

出演者は、青山郁彦 / 遠藤智子 / HARMONISM / 村本すみれ(MOKK)(+関典子+坂下七海) / 藤下久美子 / 傳谷望。

 もうむちゃむちゃしてくれる。19日の5時からの回で見たのだが、最初の傳谷望さんによる激しい踊りにまず圧倒される。だが、こんなのは、まだ序の口。様々な切り口で、水と遊び、戯れる。そして、水で魅せる。ステージだけではなく、客席も水浸しになる。USJの『ウォーターワールド』も真っ青の世界。

 傳谷望さんの華麗な舞、後半では扇子を使った激しい動き、水盤へのダイブまで見せる。遠藤智子さんの指先に見とれるところから始まる。一転して、静かに水とたわむれる。表情豊かに、水面に映る姿も取り入れて、たおやかで美しい。村本すみれさんは関典子さんと坂下七海さんを引き連れて、3人で見せる。ゾンビのような3人が水盤に倒れ込む。白のワンピースに無表情。うめくような声をあげて、何度となく立ちあがり、また、倒れる。

 藤下久美子さんの単調な動きの繰り返し。黒い傘と、ピクニック・マットが、一つのリズムを作る。HARMONISMの、子供の水遊びからスタートして、水面に筆で絵を描くパフォーマンス。だんだんエスカレート、刷毛で水をかき分け、バトルとなる。青山郁彦 さんは、八岐大蛇とスサノオの対決を描くエンタメ芝居。

 でも、やはり圧倒的なのは栃村結貴子さん。テキストを使ってのセリフ劇のスタイルを取る身体のスペクタクル。3本の戯曲(『マクベス』『サド侯爵夫人』『真毒丸』)の名場面を栃村さんがひとりで演じる。しかし、ドラマを見せるのではない。セリフの持つ勢いを援用して、身体性を際立たせる。

 おかめとひょっとこの面を使い、江戸川乱歩の世界を朗読劇として見せる久保田寛子さんは、見事に水盤自身を使わないという禁じ手で挑む。

  全部見たら、3時間半(休憩含む)は、ちょっと長いけど、それぞれのアプローチがおもしろいし、とても楽しい時間だった。

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