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映画・演劇のレビュー

『あの日あの時愛の記憶』

2012-08-21 21:17:44 | 映画
 こんな地味な映画がどうして公開されるのか、と不思議に思った。しかも、東京ではヒットしているらしい。大人の観客を集めて、ミニシアターで、確実な集客が出来ているのなら、それってまだまだ映画には可能性があるということの証明になるのではないか。この一見時代錯誤のラブストーリーの魅力を見極めるために、劇場に行く。

 1944年、ポーランドのユダヤ人強制収容所。そこで、恋に落ちた。脱走し、生き延びるも、別れ別れになる。そして、32年後、ニューヨーク。偶然目にしたTV番組。そこには、死んだはずの彼がいた。今では夫と子供のいる平穏な生活を送っている。だが、もう一度彼に逢いたい。

 大時代的なメロドラマだ。それをオーソドックスに見せる。そこに普遍的な愛のドラマを見出す。なるほど、よく出来ている。失われた映画のロマンがここにはある。

 テンポがいい。現在から、過去へ、一気に時代を超えてあの日あの時あの時間に戻る導入部がすばらしい。脱走というスリリングな出来事を、ドキドキさせながら、見せる。2人の心臓の鼓動すら伝わってくるような。緊張から解放され、むさぼるようにふたりが抱き合う森の中でのセックスシーンが美しい。

 ラストシーンもすばらしい。2人がバス停で、再会する瞬間をロングショットでとらえる。それ以上は見せなくてもよい。その距離の取り方がこの映画をリアリティーのあるものにする。

 見終えて納得した。大人の映画の魅力がここには確かにあることは認める。すごい映画ではない。だが、ただの甘い映画でもない。こういう映画が公開されて、ちゃんとこういう映画を見たいと思う人たちに届けられるのは、いいことだと思う。

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