
なんて大胆な映画だろうか。トランプを実名で挙げて彼の犯罪を描くのだが、これはトランプを描くのではなく女性への性的虐待を描く映画だ。だが、入り口にあの悪人トランプを配することで、これが映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタインによる性的暴行を告発した2人の女性記者による回顧録の映画化、という域に止まらない作品だということを示唆する。
先日見た『ウーマン・トーキング 彼女たちの選択』同様ブラッド・ピットがここでも製作総指揮を務めた。アメリカはトランプなんかよりブラピを大統領にしたらいいのに、なんて思う。監督はマリア・シュラーダー。もちろん女性監督である。
これは今まで泣き寝入りしていた(するしか術がなかった!)女たちが立ち上がる映画だ。ふたりの女性記者が主人公だが、このワインスタインの罪を暴くまでのドラマはふたりの背後にいるたくさんの女たちの支えにより実現する。
2時間9分、最初から最後まで緊張感が持続する。(ただ後半、少し息切れするが)お話は安易な美談には到底収まらない。だってこれは始まりに過ぎないからだ。こういう映画が作られるアメリカは凄い。だが、こんな現実が蔓延るアメリカは怖い。(同じようなことが隠蔽されたままの日本はもっと怖いけど)
主人公のふたりを演じた担ったゾーイ・カザンとキャリー・マリガンが素晴らしい。ふたりは仕事をしながら子育てもする。そんな姿もちゃんと(さりげなく)描かれるのもいい。そこにはパートナーの援護がある。本筋だけでなくそんな描写もしっかり描かれる。