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映画・演劇のレビュー

『神弓』

2013-12-29 20:36:17 | 映画
 こういう映画だとは思わなかったから、嬉しい誤算だ。見る前は、CG満載のファンタジーのような歴史劇かと思っていた。だが、実際はとてもハードなアクションで、しかも、生身の肉体を駆使した本格アクション時代劇。激しいのなんのって! 

 17世紀、清の朝鮮半島侵攻で起きた丙子の乱という事件を舞台にして、10万人の清軍を前にしてたったひとり、弓矢だけで戦う。そういう荒唐無稽な話、だと思っていたから実際の映画を見て、そのあまりの意外性に驚く。最終的にはたったひとりで戦う話にはなるけど、10万と、ではない。林の中を右往左往して、逃げまどいながら、清軍の精鋭たちとの頭脳戦が中心に描かれる。とてもリアルなのだ。

 でも、全編凄まじいアクションシーンばかり。ストーリーなんか、ないに等しい。そう思わせるほど、アクションシーンが冴えに冴えているということなのだ。ちゃんとストーリーはあるし、話もよく出来ているのだ。なのに、そんなストーリーを忘れさせるほどに、次々と起こるアクションの連続技に目を奪われる。

 妹を助けるために、敵の王子のもとにいかにして潜り込むのか、とか、人質にするはずの王子を殺してしまう展開とか、そのせいで敵の弓矢の達人を中心にする凄い奴らから追われるとか、話にはあれこれ仕掛けがあるのだけど、骨格となる話はとてもシンプルなのだ。

 見ながら黒沢明の時代劇を見ているような興奮を味わった。これはなんと『七人の侍』や『用心棒』『隠し砦の三悪人』というようなラインの映画なのだ。特に後半、追う者と追われる者の一騎打ちになっていく怒濤の展開には興奮させられる。主人公のふたり(というか、ひとりは敵だが)は、まるで『用心棒』の三船と仲代だ。パク・ヘイルとリュ・スンリョンである。

 それにしても走る、走る。弓矢が、びゅんびゅん飛ぶ、飛ぶ。CGじゃないのが、いい。役者が身体張ってる。ハリウッドの「作りもの」のアクション映画とはまるで違う本物の映画がここにはある。

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