習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ゼロ・グラビティ』

2013-12-29 20:38:29 | 映画
 今年最後の映画に全米で大ヒット中のこの作品を選んだ。かなり期待した。アルフォンソ・キュアロン監督作品だ。半端な娯楽映画ではなかろう。では、今回の彼は何をどう見せてくれるのか。興味津々である。もちろん、今回はちゃんと3Dで見た。3Dでなくては作れない映画と評判だったからだ。

 ここ最近、基本的には映画は3D映画も3Dでは見ないようにしている。映画は見世物のではないと思うからだ。もちろん、見世物映画はある。だが、そういう映画は見ない。キュアロンは、3Dであることを表現の手段にしているはずだ、と思った。彼にとって3Dは描くべきものを正確に伝えるための手段だ。だから、3Dで見る必要があった。と、信じた。

 だが、見ながら、そうじゃないな、と思うことになる。これは、なんとただの見世物映画なのだ。あろうことか壮大な宇宙ショーなのである。体験型アトラクション映画の類だ。もちろん体験ではなく映画だし、ストーリーはある。だが、あまりに単純すぎる。91分の映画なのに、スカスカな印象が残る。このシンプルなストーリーラインを否定するわけではない。それがちゃんと必要ならば、それでいい。だが、この単純さは、映画に奥行きを失くさせる。宇宙を舞台にして登場人物は2人のみ。(サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニー)しかも、ひとりは早々に死んでしまう。たったひとりで、宇宙空間にほっぽり出されて、果たして生還出来るのか? という話だ。アトラクションによくある設定で、それだけ。


 ハラハラドキドキはある。でも、それこそアトラクションの醍醐味だ。荒唐無稽ではなくリアル。でも、それが作品の力にはならない。それすら体験型アトラクションの身上。宇宙でたったひとりという怖さが感じられらない。『地球、最後の男』のような映画を作れ、とかいうのではないけど、(しかも、あれがいい映画だというわけではないし)なんだかこれではなぁ、である。 誤解のないようにして欲しいのだが、これは、つまらない映画ではない。それどころか、とてもよく出来た映画だ。認める。嘘のような危機、また危機を乗り越えて、奇跡の生還を遂げる感動の映画だ。だが、そういうところが、やっぱりこの映画の物足りなさなのだ。

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