レンブラント・ファン・レイン。
この17世紀オランダが生んだ不世出の天才画家、光と影の魔術師が紡ぎだす魂と技法、かつて<レイクスミュージアム>と<マウリッツハイス>で満喫した。
ところで、今回の主役はそのレンブラントではなく、勿論、ヨハネス・フェルメール。
彼は、画家中心のギルドである聖ルカ組合の理事に選ばれたことからも、生前は高い評価を得ていたようだ。
43歳で世を去ったとされているが、その生涯がはっきりとしていないことは、<フェルメール>でも書いた。
生涯に僅か三十数点しか残さなかった彼、この美術館に三点ある。
そのひとつが、現存する唯一の神話、狩猟と月の女神ディアナをモチーフにした 「ディアナとニンフたち」(上)だ。
頭に月の飾りをつけたディアナは、狩を終え休息している。
そこへ、狩に出た若き王子アクタイオンが通りかかり、偶然に沐浴をしているデイアナを見つけてしまう。
森の妖精・ニンフたちは、デイアナの裸体を隠そうとするのだが、はからずも覗いてしまった彼の運命やいかに、という場面を描いている。
この後、女神はアクタイオンに水をかけ牡鹿に変えてしまう。
そして、哀れにも彼自身が連れてきた猟犬に噛みつかれ死んでしまうのである。
フェルメールは、ディアナの傍らに男らしさの象徴である薊の花を描き、アクタイオンが間もなくここに来るであろうことを示唆している。
この絵は、古代ローマの詩人オウィディウスの 「変身物語」にその画題を得たとか。
物語は、登場人物が動物や植物など、様々なものに変身する15のエピソードから構成されているのだそうだ。
そう言えば、カラヴァッジョとベルニーニを訪ねる旅の最終日、ローマのバルベニーニ宮の国立古典絵画館で、カラヴァッジョの 「ナルキッソス」(下)を見たが、この絵のテーマも、やがて水仙になるナルキッソスや木霊に変るエコーなどの変身物語なのだ。
余談だが、<悔悛するマグダラのマリア>(210/01/29)で中断しているカラヴァッジョとベルニーニの旅、また何時の日か再開したいと思っている。
フェルメールの残るふたつの絵は次回に。
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