ポポロ教会に入って左側すぐ、キージ家の礼拝堂がある。
この礼拝堂、映画 「<天使と悪魔>」でも登場する。
秘密結社・イルミナティのアンビグラム、左右上下同じに見えるように意匠された図象が、ラファエロの墓を示唆すると解いたラングドン教授、彼の墓があるパンテオンに急行したものの、救出すべき枢機卿の姿を見つけることができない。
パンテオンで考え込む教授。
そして、アンビグラムが示していたのは、ラファエロが設計しベルニーニが完成させた、キージ家の礼拝堂だと気付き、ローマの街をポロ教会へと車を飛ばす。
そのキージ家の礼拝堂、クーポラのモザイクもラファエロのデザイン。
内部にはベルニーニの彫刻 「預言者ハバクク」(上/左)と 「獅子と預言者ダニエル」(上/右)が並ぶ。
まさに、このポポロ教会、ローマで活躍した最高の芸術家たち、盛期ルネッサンスの巨人ラファエロ、バロック期に活躍したボローニャ派のアンニバル・カラッチ、無頼の画家にして光と影の魔術師カラヴァッジョ、そして、彫刻家であり建築家のジャン・ロレンツォ・ベルニーニと、四人の天才・奇才の作品がこれでもかと並ぶ。
それに加え、ロヴェーレ家の礼拝堂の 「幼子キリストの礼拝」(<ポポロ教会>)を描いたイタリア・ルネッサンスの画家ピントリッキオの作品となれば、祈りの場所であるとともに一流の美術館と比べて遜色がない存在でもある。
13世紀ヴィザンチンの板絵 「マドンナ・デル・ポポロ=市民のマドンナ」が飾られた主祭壇近く、ベルニーニが改修した翼廊にパイプ・オルガンのためのバルコニーがあって、ベルニーニの実に可愛い 「天使の像」(下)がけなげにも支える。
ミケランジェロの 「ピエタ」には、切ないまでの女性の美しさが白亜の大理石から紡ぎだされている。
ベルニーニが創造する女性像は、その 「天使の像」からサンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア聖堂の 「聖テレジアの法悦」やサン・フランチェスコ・ア・リーパ聖堂の 「福者ルドヴィカ・アルベルトーニ」のように、端整にして優雅、時にはコケティッシュなまでに艶めかしいものまであって、このバロックの天才彫刻家の多能さに舌を巻く。
その、男心をそそる 「聖テレジアの法悦」と 「福者ルドヴィカ・アルベルトーニ」は、別の機会にまた。