前記事で、「2012年Hondaモータースポーツ活動の概要」を報告した。
注目は、清成龍一が、アジアロードレース選手権への参戦が正式発表された事だろう。
清成には、BSBを含めた多くのオファーが有ったようだが、その中でアジア選手権を選んだのは、ホンダの大きな後押しがあったからに他ならない。
重要な市場として、ホンダのアジア戦略の一環が垣間見える人選となっている。
本人もコメントしているように、苦渋の決断だった事だろう。
近年、非常にレベルが高くなり、全日本のトップライダーですら簡単に勝てる状況にはないのがアジア選手権である。
しかし、一方、ライダーやチームのレベル差も大きく、WSBやBSB等と比較すると一段下がるのも現実問題としてある。
常に上を目指す者としてハイレベルに身を置いておきたいライダー心理を考えると、アジア選手権への転身は躊躇してしまうだろう事は想像に難くない。
ホンダは、これまで清成を大事に育て、いつかは最高峰へ連れて行きたいと考えていた。
年齢的な事もあったかもしれないし、本人の気持ちも踏まえたうえで、グローバルな視点から清成をアジア選手権へ向かわせる決断に至ったのだろう。
アジア選手権では昨年、カワサキがWSSで活躍していた藤原を抜擢してチャンピオンを獲得した。
ホンダ、ヤマハ、スズキもこの選手権の重要性を認識し、サポート体制を大幅に強化し、人材の育成を急務としている。
リーマンショック以降、欧州での二輪車販売は40%近く減少した。
対してアジア地域では、販売が伸びている現状おいて、日本メーカーにとって主戦場、メインマーケットと言えるまでに成長してきている。
よって、ここでレース活動に力を入れる事は当然な理屈でもある。
2012年は、清成を始め、多くの日本人ライダーがアジア選手権へ挑戦する。
日本人ライダーは、これまでと違った体制、文化、言語、そして未知のサーキットを克服するハードルが待ち受けている。
戦う相手は、粗削りだが凄まじく攻撃的で、どんな手段を使ってでも前に出てやろうとするライダー達ばかりだ。
日本から挑戦するライダーも彼らに見習うところは一杯あるだろう。
気持ちに負けることなく、さすがと思われる走りを見せつけてきてほしい。
また今年もオートポリスでアジア選手権開催が決定している。
清成とも久しぶりに会うことが出来るだろう。
昔と違い、世界で揉まれてきた今は、立派な大人になった事だろう。(なったのか?)
時間があれば、移籍の経緯やこれまでの事を聞いてみたいと思う。
昨年の藤原に引き続き、今年は清成のチャンピオンを期待している。
コメント:清成龍一
「昨季は不本意な結果で終わりましたが、それでも多くのチームからオファーを頂いた事にとても感謝しております。正直に言って、今回は悩みました。BSBのチャンピオンチームや他のシリーズからもオファーがあり、本当に悩みました。自分を新しいフィールドで走ってみたいと思い決意いたしました。自分にとっての目標はひとつ、シリーズタイトルを獲得することです。全勝を目指して、このタイトルを獲得したいと思います」