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最後の王者 MotoGPライダー・青山博一の軌跡
ずっと読みたかった本を手にする事が出来た。2009年、61年続いていたロードレース世界選手権250ccクラスの最終シーズンにチャンピオンを獲得した青山博一の活躍を追ったルポルタージュだ。
ホンダのスカラシップによって世界への挑戦を開始した青山だったが、チャンピオンまでの過程は決して容易いものでは無かった。次のシーズンもKTMで継続参戦するかと思われたシーズン終了間際に突如、KTMは選手権からの撤退を発表する。青山は他の移籍先を探さざるを得ない状況に追い込まれるが、既に有力チームは契約を済ませており、彼の行き先はどこにも無かった。そんな窮状を救おうと多くの関係者が手を差し伸べ、ようやくスコット・レーシングにシートを得る事が出来たのだ。
思わぬ形でホンダのRS250RWに乗る事になった2009年シーズンだったが、そのマシンは開発が終了したもの。更にスペアマシンも無い貧弱な体制での戦いを強いられることとなる。
彼は、我が身の境遇に腐ることなく、走る喜びを力に変え、着実に一歩一歩ポイントを積み重ね、念願の世界チャンピオンの栄冠を手にする事になったのだ。
本紙は、青山の事だけでなく、高橋裕紀がシーズン中にもかかわらずシートを失う事件に関しても分かりやすく描写されている。私も当時の事を思い出し再び憤りを感じてしまった。
著者の西村章氏は、緻密な描写を分かりやすい表現を用い書いており、MotoGPの事を全く知らない人も読んで面白いと感じる事が出来るだろう。それが、本書が小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞した所以でもあろう。
反面、私のような筋金入りのファンにとっては、説明がまどろっこしくてテンポよく読みづらい面もある。また、ブログで情報発信している身なので、ほとんどの事柄は既知の事であり、新しい情報を得る事も無かった。
そんな訳で、一般の人たちに特に読んでもらいたい一冊だ。MotoGPという世界がどういうものか。面白さや厳しさを感じる事が出来るだろう。
もちろん、ディープなファンも読んで損は無い。お正月に読む一冊にどうでしょうか。
最後の王者 MotoGPライダー・青山博一の軌跡
著/西村章
単行本: 231ページ
出版社: 小学館
ISBN-10: 4093798206
ISBN-13: 978-4093798204
発売日: 2011/3/16
定価: 1,680円(税込)