奪われた

春分の日の夜、突然の電話と共にnnn男爵がやってきた。そしてハリオンでカレーを食らう。

食事が済むと、男爵はボクの部屋に上がり込み、タバコをスパスパと吸い始めた。ライターが付かないと、ガスコンロで点火してまでタバコを吸うのだ。禁煙の部屋で。

それから、ケン・スズキが活躍する千夜釣行を見始めた。
ケン・スズキはご存知だと思うが、あのケンクラフトのケンである。映像は10年以上前のものだが、彼が北浦で、当時の最新ルアーテクニックの全てを見せるというのだ。男爵は食い入るようにケンの釣りを見つめている。

そして、男爵はボクのタックルケースを勝手に開け、中からケンが今使っていたルアーを取り出した。
バスパーだ。
バスの形をイミテートしたポッパー。ロッドワークでダイビングさせやすいポッパーで、ケンのルアーの中では出色の出来だ。

男爵はそれをそっとポケットに入れる。アレックスも。フローティングジッターワームも。
う…奪われた。

他にも「ビッグマウス フォーエバー」のDVDをお持ち帰り。
「1000円で十分だろう。金を払ってやるだけ有り難いと思え」などと宣って、サスペンドスポットやダイビングチェリーをポケットに入れた。完全に持ち出しになってるよ…。

善人からの搾取で成り立っているのが貴族の生活とはいえ、あまりに惨い。自分専用の小物入れを設置しろとまで言い出す始末だ。

次回は何か持って来させるか。釣りのDVDか何かを。