幸福学専門30年 筬島正夫が語る本当の幸せ


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センター試験にキルケゴールの実存への3段階

2009-01-29 | なぜ生きる


今年(平成21年)のセンター試験をパラパラと見てたら、

「おっっ!」

なんと倫理の問題にキルケゴールの実存への3段階に

関する問題が出ているではないか!

   
    ウィキペディアより

ちょっと嬉しくなってブログに書いてみることにしました。

以下、その箇所です

・・・・・・・・・・・・・・・・

第4問 次の文章を読み、下の問いに答えよ。

(前略)

西洋近代哲学において理性は、世界を光の王国につくりかえる自由の

原理と考えられていたのである。

しかし、ガス灯や電灯で闇を追い払った近代文明が様々な問題を

抱えていたように、理性による光の王国も多くの問題を孕んでいた。

キルケゴールは、

(d)倫理的であろうとすると絶望せざるを得ない人間の現実
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
を直視した。

そこからみれば、理性を通じた自由の実現という構想は、人間の現実を

無視した空論にすぎない。

このようなキルケゴールの考え方は、後のヤスパースなどに影響を

与え、実存主義の道を切り開いた。

(後略)


問5 下線部(d)に関して、キルケゴールはどのように考えたか。

その説明として最も適当なものを、次の1~4のうちから一つ選べ。

1:本来の自己を見失って絶望する人間は、理性によっては根拠づけられる
ことのない信仰への決断によって、本来の自己を回復できる。

2:現世の悪に絶望するキリスト者は、神から与えられた現世の務めに専心
することによって、人間としての本来のあり方を獲得できる。

3:超越的な神がもはや存在しない現実に絶望する人間は、自ら覚悟を
もって価値創造に挑むことで、本来の力を獲得することができる。

4:肉体を支配する悪の原理に絶望するキリスト者は、信仰による決断を
通して、魂から肉体を解放し、本来の故郷に帰ることができる。


★答えは






















(1)です

解説には以下のように書かれていました。

第四問

問5 正解は①

いわゆる「実存の三段階」の最終段階である宗教的実存についての正しい記述

である。


●倫理の試験の問題原文と・解答・開設のサイト

http://www.toshin.com/center/

ここにアクセスして頂き「倫理」の「問題」をクリックし、

さらに「第四問」をクリックしていただくと出てきます。



デンマークの哲学者セーレン・キュルケゴール

「世界中で最も多量のインクを使った人」といわれるほどの

勉強家でした。

実存哲学の先駆者といわれます。



セーレン・オービエ・キェルケゴール
 Soren Aabye Kierkegaard,1813-1855
 著「あれかこれか」「不安の概念」「死に至る病」など。

 ※実存  :実際にそこにあるもの。
       特に人間存在をいう。
       主観とか、客観とかに分けてものごとを
       とらえる前の存在の状態。 
 
  実存主義:人間の実存を中心に考える思想
       客観的なとらえかたや、
       観念的なとらえかたを批判する。 


そのセーレン・キルケゴールは、人生の根本問題に、

深刻に取り組んだ哲学者でした。

彼の信念は「ギーレライエの手記」と呼ばれる日記に記されています。

『私に欠けているのは、私は何をなすべきか、

 ということについて私自身に決心がつかないで

 いることなのだ。(略)

 私にとって真理であるような真理を発見し、

 私がそれのために生き、

 そして死にたいと思うようなイデー(理念)を

 発見することが必要なのだ。

 いわゆる客観的真理などをさがし出してみたところで、

 それが私に何の役に立つだろう!』

格好いいですね!!(そういう問題ではないか?)

また、キルケゴールは

「 自分自身を忘れるという、もっとも危険なことが世間では、
 いとも簡単になされている」


 と著書『死に至る病』で警告しています。
 
この言葉は

「どのような喪失にしろ、これほど平静にすまされることはないもので、
 ほかのものなら何を喪失しても、腕1本、足1本、金5ターレル、妻、
 そのほか何を失っても、ひとはすぐに気づくのである」

と続きます。

自己を知る重要性を訴えた人でした。

このころ、デンマークでは、ヘーゲルらの哲学が流行していました。

そこには、いかめしい体系はあっても、

肝心な「自己の生き方」が抜け落ちていたのです。

キルケゴールは、彼らの哲学を拒絶し、

「自分がそのために生き、そのために死ねる真理」を探そう、

と思ったわけですね。

そんな彼の前に現れたのが、レギーネ・オルセン

たちまち、恋に落ち、27歳で婚約したのですが、

約1年後、約束を一方的に破棄しました。

恋する人を得ても、大事な問題は未解決のまま。

『たとえ全世界を征服し、獲得したとしても、
 自己自身を見失ったならば、なんの益があろうか』

と、当時の日記に書いています。

すごい言葉ですね。

このキルケゴールの哲学を学ぶ時、忘れてはならないのが

『実存への3段階』です。


『あれか―――これか』『哲学的断片』『人生行路の諸段階』

などの著書を次々と出版し、その中で、

人間の真の生き方に到達する道を、3段階に分けて考え、記したものです。

①「美的段階」

 欲望のままに快楽を追う生き方。
 
 しかし、無限の欲は満たされず、不満と不安にとらわれ、
 
 やがて、絶望してしまう。

 人は快楽では真の幸福は得られぬと気づく。
 
②「倫理的段階」
  欲を抑え、道徳的に生きる生き方。

  しかし、不完全な人間に、完全な善はできない。
  
  結果、真剣に善に向かうと、良心の働きが鋭くなって、
  
  自分の悪が見えてくる。
  
  罪悪感が深まり、またもや絶望するほかなくなってしまう。

③「宗教的段階」
  人間を超越した絶対者の力によって幸せを与えてもらうしかない。
  
  不完全な人間の内側を探しても、絶対者は存在しない。
  
  だから、救済は信仰の決定的飛躍によってのみ得られると確信する。


これが『実存への三段階』です。
  
西欧で生まれ育ったキルケゴールにとって、「信仰」とはキリスト教でした。

彼は、聖書の記述を一切、疑わないように努力したそうです。

例え話や冗談として扱わず、まともに受け止めようとしたのです。

しかし彼は最後まで、キリスト教を信じ切れませんでした。

「キリスト教はどこにもない」

と絶望の叫びを残しています。

彼自身は「宗教的段階」をキリスト教に求め、結果、幸せには

なれなかったようですね。

しかし、実存主義は受け継がれ、のちにハイデッガーが現れるわけです。

ハイデッガーについては、またの機会に☆


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