










※6月の交流会は「黄色いスミレ・ハイキング」の予定でしたが、前日の大雨で林道のゲートが閉鎖されていたため、予定変更して行いました。
※鈴木さんがレポートを書いてくださいました。
6月3日は恒例の黄色いスミレ観察会。ところが前日から台風が日本の南岸を通過し大荒れの天気でした。集合時刻には雨もやみましたが、参加者は3名。天気は回復に向かう予報だったものの、相当量の雨が降ったことや各地で通行止めの情報もあり、黄色いスミレの観察は断念。いつも通りの乙女高原観察に予定変更です。
最初に通称カエル池に寄りました。3年前のボーリング調査から枯渇状態が続いています。この日は雨のため満水でしたが、ヤマアカガエルの貴重な産卵場所で、今後が心配です。
次にサワラ林で途中下車です。昨年、杉咲花主演のNHKドラマ「プリズム」のロケ地になったそうです。
沢に沿って斜面を登ってみると、樹齢100年を超えるサワラの大木と苔むした巨大岩のコラボが幻想的な空間を創り出しています。よくこんな場所を見つけたものだと感心します。
トチの大木の水場まで来ると青空が顔をのぞかせ、ヒガラ・ホオジロ・ウグイス・ホトトギス・アオバトなど鳥たちのさえずりが賑やかになり始めました。トチの花が真っ白に樹冠を覆いとてもきれいです。
辺りでは山菜として人気のミズ(ウワバミソウ)の群生や、種を飛ばしたあとのネコノメソウが観察できました。ネコノメソウの仲間は雨滴散布といって雨が降った時に種を飛ばすそうです。雨を利用するなんて驚きですね。
寄り道をしながら柳平にたどり着くと、乙女高原に向かう林道はなんと通行止め。
第2の変更をせまられ、ダムから見晴台まで続く遊歩道を登って乙女湖を一周することにしました。このときにはすっかり天気も回復し、五丈岩がくっきりと見えてきました。シロバナヘビイチゴの群生を横目に約400段の階段を上りきると、エゾハルゼミがうるさいほどの大合唱です。
その後はヤマフジやミヤマザクラの花、マタタビやサルナシの蕾、少し赤みを帯びてきたカエデ類のプロペラのような実などを観察しながら焼山峠まで下ります。スミレの中では遅咲きのエゾノタチツボスミレも咲いていました。
途中で最も美しい蛾とも言われるオオミズアオが枝先にじっとしているのを見つけました。よく見ると昨日の大雨のせいか羽がボロボロに傷ついています。嫌われることが多い蛾の仲間ですが、この日はキンモンガやコトラガなど模様の美しい蛾に出逢いました。
柳平の手前まで歩いてくると湖畔遊歩道の入り口があります。普段は車で素通りですが、「歩いてみようか?」と、またも予定変更です。
やや湿った遊歩道にはクリンソウが点在して咲いていました。また、水辺を好むサワグルミが小さな実をつけて林を作っています。そして思いもよらずフタバアオイの群落を発見することもできました。
すでに花期は過ぎていましたが、徳川家の家紋のモチーフにもなった葉が一面に生い茂っています。是非花の季節に訪れたいチェックポイントです。
遊歩道途中のベンチで乙女湖を見下ろしながら昼食を食べて帰路へと向かいます。黄色いスミレも乙女高原もたどり着けませんでしたが、普段通らないルートは新鮮で有意義な一日となりました。
※井上さんがレポートを書いてくださいました。
水色の空が春めいてきたことを感じさせる3月4日、いつものように牧丘道の駅に集合。今回の参加者は3名、植原さんの車に乗せてもらい、出発しました。
まず、乙女湖を見下ろす道路わきに車を止めて観察。乙女湖はまだほぼ全面結氷していて、白く見えます。そしてときどき、ゴォンというような音が聞こえてきます。氷の下で何かがぶつかっているのでしょうか。
鳥もいくつか見られました。ホオジロ、シジュウカラ、カケス、ヒヨドリなど。金峰山山頂は雪で真白、五丈岩もくっきり見えました。
ここまでの林道には雪はありませんでしたが、柳平から先は、日陰には雪があり、凍っているところもありました。
乙女高原到着。高原は日陰の場所に雪が残っていますが、かなりの部分には雪はなく、枯れ野が広がっていました。2週間前は全面真っ白だったそうですが・・・。日差しは暖かいですが、風はまだ冷たかったので、上着をもう1枚着こんで、草原に入りました。枯野には所々に黒い土が盛り上がっています。モグラか何かの仕業でしょうか。マツムシソウの小さな緑色の葉もありました。地面にピッタリくっついて冬越ししたのでしょう。オケラのドライフラワーは魚の骨のような苞葉が繊細で、自然の造形の妙を感じずにはいられませんでした。
また何かの植物の萼?の部分が固く丸くなっているのがありました。何だろうと植原さんがナイフで切ってみると、中には穴があいていて、繭のようなものが入っていました。なにかの虫こぶだったようです。おもしろかったです。
森のコース沿いの雪面を登っていくと、動物の足跡がいくつもありました。中には爪の跡までくっきり残っているものもありました。テンの足跡のようです。斜面を下っていくもの、横切っていくものなど見られました。そして雪面には、いろいろなドライフラワーが顔をのぞかせています。キリンソウ、クルマバナ、シオガマギク、セイタカトウヒレンなど。朝に比べて空が青くなり、シラカバの幹の白さがより美しく見えました。
展望台では富士山がきれいに見えていました。谷筋は雪で真白に、尾根は青く見えて、青と白の縦じまになっている富士山でした。ヨモギ頭に登ると南アルプスや八ヶ岳が木の間ごしに真っ白く見えていました。仙丈岳や間ノ岳のカールもよくわかります。遠く中央アルプスの山でしょうか。真っ白でした。それからブナ爺さんの所へ。いつ見ても不思議な枝ぶりです。どんな人生、いや樹生を過ごしてきたのでしょうか。
そこから水が森林道へ。林道は雪で真白。車の轍は凍っていて、歩くのに少し気を使います。ここにも動物の足跡が。シカ、テンなどでしょう。鳥の鳴き声がしたので、声のする方を見ていると、ヒガラが数羽、飛んできました。コガラも混じっていたようです。陽があたっているコンクリートの法面では、ハサミムシが歩いていました。虫も暖かさに誘われて出てきたのでしょう。林道からも南アルプスがきれいに見えました。
乙女高原の頭があると聞いて、行ってみることにしました。木を伐採するための道を登っていくと、確かに「乙女頭」という標識がありました。標高1730m、ヨモギ頭より5m髙いので、確かに乙女高原の最高地点かもしれません。ここからは金峰山がよく見え、五丈岩がいつも見る感じと違って、何かの碑のようでした。八ヶ岳も赤岳から天狗岳まで見え、硫黄岳の爆裂火口もちょっと見えました。展望を楽しんから、ロッジに戻って昼食。風もなくなり、陽ざしが暖かでした。
昼食を食べたロッジ前のベンチ、ずいぶん斜めになっています。霜の力で北側のほうが持ち上がって、斜めになってしまったようです。恐るべし、霜です。
午後はツツジのコースから、谷地坊主の湿地へ行ってみることにしました。草原に入って、枯草の上を歩いているとロゼット状の赤い小さな葉があります。何かと思ったら、メマツヨイグサです。これは特定外来植物なので、除去しなければならないなあと3人で話し合いました。
ツツジのコースの林のふちはまだ雪が10cm以上残っています。1月に見たテンの糞の場所も積雪で糞は見あたりません。ウサギの糞がたくさんあった所にも糞はありません。ウサギはどこに行ったのかと思っていたら。少し離れたところに糞がいくつかありました。ウサギはいるということなので、ほっとしました。
フデリンドウの冬芽がいくつかありました。フデリンドウは秋に芽を出し、冬芽の状態で冬を越すのだそう。
マツムシソウやウツボグサは葉を地面にピタッとくっつけるロゼットの形で冬越し。マイナス10℃以下にもなる冬の乙女高原で、健気に生きているのですね。
最後に湿地へ。谷地坊主はボサボサ頭で、まだ少し雪の残る中にいました。頭の上はなでつけられたようになったものも。
バッコヤナギの芽が銀色に光って、春を感じさせます。ロッジにもどって、観察会も終了となりました。冬と春のせめぎ合いの時期ですが、春の気配はいろいろなところから感じられ、楽しい観察会でした。