温泉クンの旅日記

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長良川温泉(2)

2020-09-20 | 温泉エッセイ
  <長良川温泉(2)>

 旅先ではいつだって早寝早起き、それに温泉好きだからこそだが朝はとにかく早い。
 高血圧気味つまり暖気運転無用だから、ガバっと起きるや、キーだけ持って大浴場に向かった。
 係員の勤務時間には早すぎるのでタオルが入手できるかどうかちょっと気になったが、思ったとおり脱衣所に積み上げてあった。さすがは一流ホテル、早起き客のことも考えてくれている。

 

 白湯でサクっと身体を温め、源泉っぽい半露天の浴槽でのびのびとくつろぐ。
(昨日は短時間だが悩みに悩んだなあ・・・)

 

 岐阜グランドホテルはB&B泊だった。リバービューではない街側だが十二畳ある広い和室で、八千円台の料金。なにしろ“休前日泊”すると軽く三倍超くらいの値段だし、独り客が泊まれるかどうかさえも怪しい、岐阜では一流クラスのホテルである。

 夕食はホテル近くの居酒屋で飲食して、朝一番で温泉入ったら朝食とらずに出発しようと決めたのだが、突然の豪雨に、まるで乾かないジーンズ。
 浴衣姿はこのあたりでは浮いてしまうし、コロナ禍で臨時休業も多い。歩ける距離に営業している居酒屋や食堂も見つけるのはいかにも大変そうだ。

 ホテルで夕食という手はどうかと調べてみると、最上階の展望レストランのフランス料理、一階の中国料理、地下一階の日本料理、いずれも夕食はコースで九千円から二万円くらいは覚悟しなければならない。単品料理はなさそうだ。長旅で初日から贅沢をするつもりは微塵もない。

 

 

 一階ラウンジの売店で名物のアンパン、裏名物のカレーパン、があるらしいがこの時間では望み薄だろう。

 

 荷物をチェックすると・・・酒はたっぷりあるが、食料は常備している非常用のカップ麺が一個。
 待てよ。この際だから非常用カップ麺で我慢して、出発を遅らせて朝食をしっかり食べるという手はどうか。
 悪くないぞ、っていうかそれがいい。グレード高いホテルの朝の和定食で大満足した経験は、過去に何度もあった。
 そう決めて、昨夜は腰据えて呑んだのである。

 着替えを済ませ、荷物と部屋を片付けると、ゴロリと横になってテレビニュースを観て時間を潰す。空腹のときに限って時間が経つのが遅いのが腹立たしい。
 七時丁度になるのを待って、エレベーターで地下に降りる。バーの横に朝食会場である「ロイヤルシアター」の案内があった。

 

 

 さすがに、ライブ・コンサートや七百名の講演会が開ける会場であるから天井も高くとにかく広い。

 

 ホテル曰く、岐阜県産の食材を使った「ぎふの朝ごはん」。
 なんとなんと、思わず口笛を吹きそうになる。四角い小鉢にきれいに盛られた箱膳料理みたいなご機嫌な和定食だ。

 

 まずは、オレンジ添え野菜サラダと、出来たての地元「明方ハム」のスクランブルエッグ。ハムだが、郡上の「明方(みょうほう)ハム」で、枝別れして設立されライバルとなった同じく郡上の「明宝(めいほう)ハム」ではないので、念のため。

 

 左半分の左上が陸蓮根(おくら)利休和えと岐阜のブランド鶏の清流美どりつくね、その右横に出し巻き玉子と鮭塩焼き、左下が飛騨ほうれん草うどん、その右が岐阜県産大豆「フクユタカ」を使用した、できたて豆腐亀甲餡。
 右半分の左上が野菜田舎煮(蓮根、人参、牛蒡、蒟蒻)、その右横に野沢菜煮たくもじ、梅干、大根ピリ辛煮。飛騨では漬物をくもじといい、それを煮たものが郷土料理の「煮たくもじ」という。
 左下が辛子明太子と枝豆ひじき煮、その右が飛騨牛と糸蒟蒻の時雨煮。
 それに焼き海苔、岐阜ハツシモ匠の味の白飯、地味噌仕立て飛騨山椒。飛騨100%りんごジュース、ひるがの高原ヨーグルト。
 そして食後のコーヒー。

 

 嫌いな食材まるで無しに狂喜して食意地が炸裂、なんと野菜をちょこっとだけ残してキレイに完食してしまった。どれもこれも憎たらしいほど旨い。ご飯のお代りは二杯にとどめておいたが。

 

 この“和”の朝食、パスして出発しなくて本当によかったァ。待った甲斐があったぞ。一、二時間の出発の遅れは、なにどうにでも遣り繰りできる。
 え? その感動は昨夜がカップ麺だけだったせいだろう、って。
 寝かせ耳をした仔猫のように、そんなん聞こえないし聞きたくもありませんぜ。



   →「長良川温泉(1)」の記事はこちら


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