昼時をかなり過ぎたころに伊東駅の改札を出たのだが、まるで食欲がない。かなりの呑みすぎだ。昨晩は途中で日本酒に変えたのが失敗だった。何杯呑んだかなどと無理に思いださすと、ますます具合が悪くなりそうなのでやめておく。思考能力ゼロ、喰いたいものが浮かばない。まあ、食事は無理にとらなくていいか。うん、そうだ。アイスクリームならなんとなく食べられそうだ。たしか、パーラーみたいな店が一軒あったな。煙草吸えるようならそこにしよう . . . 本文を読む
群馬には郷土の歴史上の人物や名所、名品などを取り入れた「上毛かるた」という「いろはかるた」があって、群馬の人たちは子どものころ誰もが習い暗記しているという。群馬県人に上毛かるたの、たとえば「え」は何かと訊けば、「縁起だるまの小林山」と即答するらしい。その上毛かるたには温泉も登場する。「く」に「草津よいとこ薬の出湯」、「よ」に「世のちり洗う四万温泉」と歌われている。群馬では草津、四万ときて、今回は伊香保の老舗宿に泊る。上毛かるたでも、「い」は「伊香保温泉日本の名湯」と歌われる温泉である。伊香保はもう十数度行ったおなじみの温泉だが、老舗宿だから不思議と楽しみで心が逸る . . . 本文を読む
「熱燗と・・・イカフライ定食をください」思いがけず、とんとん拍子に高崎駅に到着してしまい、乗り継ぐ予定の新幹線までに三時間弱の間があいてしまった。達磨寺いらいの高崎である。時間が充分あるので、ならば定食屋でも探そうと、高崎の街をぶらぶらと散策したのだ。高崎駅西口からかなり歩いたところにある中央銀座商店街は、その全長四百メートルのアーケード街で、かつては群馬随一の賑わいだったそうだが、閉館した映画館やシャッターを閉めた店ばかりで人通りもない。「いまは昔」の感は、休日のせいばかりではなさそうだ。それでも最近とみに増した嗅覚のせいか、イメージどおりの大衆食堂を商店街のなかほどでばっちりと探し当てたのである . . . 本文を読む
三時少し廻ったところで、国民宿舎「両神荘」にチェックインした。入り口を入ってすぐ右のところに喫煙室があったのを横目で確認しておく。公営は最近どこも全面禁煙にしているのにもかかわらず、喫煙場所の案内はまずしてくれないので自分で探しておかねばならないのだ。わたしに用意された部屋は本館の一階の部屋だった。年季のはいった建物だが、掃除の行き届いた広さも充分な部屋だ。窓の外は、内庭が静かに広がっている。窓を開けると、そこにあるのは山の冷気だけである。距離的にそれほど遠く旅してきたわけでもないのに、人里離れた山間の宿でいかにも静かだ . . . 本文を読む
熱々のカレーうどんは寒い冬にかぎる。とくに旅に出たときなどによく猛烈に食べたくなってしまうのは、服装のせいかもしれない。白いワイシャツのときのように、気を使わないでうどんを啜れるからだろう。ある土曜日、大井町で友人たちと二時間ほど呑み、駅で解散したのだがまだ時間は早い。それに、わたしはまだすこし呑み足りなかった。小腹もすいている。そういえば、東品川に名古屋のカレーうどんの店があることを思いだした。「豊橋のは食べたことないですが、名古屋のでは『若鯱屋』という店のカレーうどんが大好きですね」豊橋カレーうどんを食べた話をしたときに、名古屋から単身赴任できている呑み仲間が力説したのである。生のクチコミは聞き逃せない。すぐさま東京にある店舗を調べて、木場と品川の店舗所在地を記憶しておいたのである . . . 本文を読む
山梨方面から帰るとき、中央道の上り線を走るのがあまり好きではない。どんなに早起きして走っても渋滞に巻き込まれるし、ついこの前に悲惨な崩落事故があったように山梨県境あたりのトンネルがやたら古すぎるので怖い。だから、富士吉田を抜けて東名高速を使ったり、塩山から通称「彩甲斐街道」といわれる国道で秩父に抜けたりする。長い県境の雁坂トンネルを抜けて暫く下っていけば、すぐに奥秩父である。三峰口の付近で国道を左折して脇道に入る。十分ほどで、「道の駅 両神温泉薬師の湯」が左手に見えてくる . . . 本文を読む
大晦日から正月三日まで「孤独のグルメ」というドラマにはまってしまった。大晦日が六時間、元旦から三日まで各三時間で、合計十五時間も観たことになる。地上波で週一回放映されたテレビ番組なのだが、放送時間が深夜のため、そのころに酔い潰れてしまうわたしはついぞ観る機会はなかったのである。原作の漫画も読んだことはなかった。わたしが食べた鳥取の素ラーメンも「孤独のグルメ」で既に漫画化されているそうである . . . 本文を読む
ねぶたの迫力がもたらした興奮状態が醒めていくにつれ、なんとなく今日を振り返ってしまう。十三湖でしじみラーメンを食べてからは、とにかく走りでがあった。ナビが、お得意の、店も自販機もまったくない寂しい山越えの嫌がらせのようなルートを選択したせいかもしれない。実際には一時間半くらいなのだが、津軽半島を山越えで横断した路は、対向車も滅多にこないつまらなさだったのでたっぷり二時間くらい掛かった気分である。ただ、暇なドライブ中に明日の昼メシをじっくりと考えることができた . . . 本文を読む
所沢駅西口にあるプロペ通り商店街は、師走のせいか恐ろしく活気に溢れていた。プロぺ通りとは、日本の航空の発祥の地らしく、飛行機のプロペラから命名されたそうだ。賑わう通りを、客引きとひとを掻き分けるようにして進み、今日のお目当ての店をみつける。オジサンが足早にわたしを追い越していき、慣れた足どりで店へ続く階段を降りていく。そのきっと常連だろうオジサンに少し遅れてわたしも店のなかへ入った。「酒場放浪記」という番組でこの店を知って一度行ってみたくなり、放送直後だと混むので、たっぷりのインターバル期間を置いたのだ。もっとも秩父からの帰り路ということもあるが . . . 本文を読む
2006年4月スタートしたので、「温泉クンの旅日記」も早や苦節七年を越え、八年目に突入しています。ブログを始めるにあたっては、十年続けるか、または百万アクセスまでは粘ろうと秘かに目標を掲げたのである。2013年の年間アクセス数はおよそ十一万アクセス、現在の累計が約七十七万アクセス。大それた目標と思えた「百万アクセス超え」も漸く視野の遥か向こうに微かにみえてきた。「あのニャ~、年明け早々から苦労話みたいにゃあ、自慢話みたいにゃあなのはやめといたほうがいいニャア」「海、いまオマエなんか言ったか? . . . 本文を読む