温泉クンの旅日記

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塔のへつり

2020-09-27 | ぶらり・フォト・エッセイ
  <塔のへつり>

 山冠に弗と書くひと文字の「岪」という漢字だが、これは“へつり”と読み、会津方言で川に迫る険しい断崖のことである。難しすぎて、今ではかな表記である「へつり」が標準化されている。

 

 塔のような奇岩が圧倒的に連なる渓谷「塔のへつり」は、凝灰岩への100万年にわたる浸食と風化がつくりだした、南会津下郷町の景勝地だ。特異な形状から、1943年には国の天然記念物に指定された。奇岩だが屏風岩、舞台岩、烏帽子岩、護摩塔岩、象塔岩、などそれぞれに名前が付けられている。

 

 福島県観光交流課の調査によれば、平成29年(2017年)に大内宿を訪れた観光客は減少こそしているが年間約七十六万人、ついでに訪れる塔のへつりは年間約二十七万人とある。
 わたしも会津田島から大内宿の蕎麦を食べにいくついでに三、四回は訪れている。

 断崖には、わたしの苦手な揺れる吊り橋で渡れるようになっている。

 

 手すりの低い吊り橋には荷重制限があり、一度に三十人以上渡らないようになっているがコロナ禍なので今日はガラ空きである。
 吊り橋の途中で止まり、左手をみれば、阿賀川の下流にかかる会津線の鉄橋がみえる。

 

 断崖側に渡りきると、狭い回廊があって、一部だが、そそり立つ岩壁のへりの断崖内部を間近で見物できる。奥の方に小さな祠をみつけて記憶は確かだったなと安心する。
 傾斜が急な階段があり登れば、上の岩穴に、坂上田村麻呂が建てたという「虚空蔵菩薩」の堂がある。
 吊り橋を渡るだけでわたしは精いっぱい、それに登るよりも降りるのが怖いので一度も上がったことはない。

 

 

 景勝地なので飲食店を兼ねた土産物店がいくつかあるが、たいてい大内宿まで我慢するので寄ったことがない。

 

 今日もあちこち覗いたが、煙草吸えそうな店もなさそうなので駅に向かうことにした。駅までは三、四百メートル、歩いて五分もみれば充分である。
 地上駅で無人駅の「塔のへつり駅」は平成14年(2002年)、東北の駅百選に選定されたそうである。1日の平均乗車人員は30人から40人ほどだそうだから、塔のへつりには車が殆どなのだ。

 

 踏切がカンカン鳴り始めた。
(えっ! 電車が来るのか!?)
 ホームに走る。逃すと待ち時間が半端ないのだ。
 1面1線の単式ホームに入ってきたのは、残念ながら、上りの湯野上温泉からの気動車で逆方向だった。

 

 会津線は上りも下りも大体は1時間に1本しかないのである。さっき降りたときに時刻表をみて、覚えておけばよかったと軽く後悔する。
 トイレと待合室だけの、いかにも簡素な駅舎のなかの椅子に座って時間を潰す。ちなみに会津鉄道の「塔のへつり」、「湯野上温泉」、「芦ノ牧温泉」、いずれの三駅ともトイレは驚くほどキレイだ。

 

 駅舎を出て外で煙草を吸ったりしているうちに、電車の時刻が近づいてきたのでホームで待つ。

 

(この辺は、紅葉の時期も良さそうだな・・・)
 踏切がカンカンと鳴りだした。

 
 
 カーブを曲がって先ほどとは色違いの電車(いや気動車か)が、視界に入ってくるのを見て思い切り安堵する自分が、とてもおかしかった。




   →「大内宿と湯野上温泉駅」の記事はこちら
   →「牛乳屋食堂と芦ノ牧温泉駅(1)」の記事はこちら
   →「牛乳屋食堂と芦ノ牧温泉駅(2)」の記事はこちら


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