しばらく行くと路が尽き、階段に変わった。ここからは、いよいよ昇りとなるのだ。別名「白旗山」とも「旗立山」とも呼ばれた「源氏山」の由来は、源頼家(八幡太郎義家)が奥州遠征の際に、山の頂に白い旗を立てて戦勝を祈願したことによるとか、麓に代々源氏の屋敷があったとも言われている。山とはいうが実は名ばかりで、鎌倉武士はとかく大げさに言うのが好きだったそうである。正味な話は、標高九十メートルちょっとくらいの、子どもや足に自信がある老人や子どもでも登れる丘クラスなのだ . . . 本文を読む
いわせてもらえば、剣術とおなじように酒呑みにも流派がいろいろある。(と思う)あてが、刺身や焼鳥などがんじがらめに居酒屋メニューだけに縛られている一刀流な奴もいれば、食堂単品メニューでも焼き鯖定食でもオッケー、なんなら梅干だけでもいいという自在な陰流っぽい、型にはまらぬヤツもいるのだ。坂東橋駅にやってきたのは、しばらく前に友人からもらったショートメールのせいだ . . . 本文を読む
(そういえば、今日は週末だから運が良ければSLが対岸を走るのをみられるかも・・・)川向こうの樹木群に隠れたところに敷かれた磐越西線は、月に何度かの週末に、新津・会津若松間に蒸気機関車が一往復だけ走るのである。前に泊まったときに、川向こうからいきなり鋭い汽笛の音と走行音が渡ってきて慌てて眼を凝らすと、運よく、緑の着物の裾からチラリとこぼれる赤い蹴出しのようにほんの数瞬だけ機関車が爆走していくのがみえたのだった . . . 本文を読む
さっそく掛け湯をたっぷりして、浴槽に身を沈めていく。「おやおや!」誰もいないので杉下右京の真似をしてしまう。いい匂いの温泉臭の、肌当たりがとろりとするなんともいい温泉じゃないか。さすがは山形県だ。山形県は、全三十五市町村で温泉が湧出している、全国で唯一の県である。百四十三室の宿泊者数に比べ浴槽がちょいと狭いのは、加水せずに源泉をそのまま掛け流しすることを優先させたそうだ。よし、気がかわったぞ。都市部のホテルだがこのいい温泉は同好の士のために記録しておこうと決めた . . . 本文を読む
「おっ、久しぶりの『はでっぱ』じゃないか!」<唎酒プラン>の夕食には、地元で江戸後期創業の麒麟山酒造の三種類の酒がでた。いずれも辛口の酒で、青いぐい呑みが麒麟山の辛口の「伝辛」、緑のが、麒麟山「はでっぱの香」で「はでっぱ」とは、お米をはざ架け(天日干し)し造ったところからだそうだ。竹色のは麒麟山ブラウンボトルで地元限定でカラーボトルシリーズの純米吟醸酒である
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そろそろ降ってくるな・・・。さきほどからうっすら漂う雨の匂いをわたしの鼻が嗅ぎわけていた。坂道を降り切ったところ、右の角に佐助稲荷道の石碑をみつけた。銭洗弁天の方向から来るととてもわかりにくい位置である。
住宅街のど真ん中を奥まで進むと、佐助稲荷神社があった。ここは、出世や開運のパワースポットだそうだ。まだ傘はいらないが雨が降りはじめてきた。参道には赤い幟旗がはためく朱色の鳥居が並んでいる。鳥居は、神域と俗界とを隔てる門、結界である . . . 本文を読む