煙草の煙の換気のために細く開けておいた窓から、風に乗ってさざめきが入りこんできた。グラスを置いて煙草を手に立ちあがり窓に近寄ると、下方から、低いが力強いモーター音に雄叫びと嬌声が混じって聞こえる。あのスワンボートだな・・・。次々グループに分かれた団体客連中が借りだして、湖に乗り廻し始めたようだ。子どものようにはしゃいでいかにも楽しそうである。ちょっぴりうらやましい . . . 本文を読む
宿自慢の、湖が見えるパノラマ大浴場である。まずは掛け湯をして、濾過循環しているだろう透明な湯にサクッと身体を沈め温める。外にでると中くらいの庭園露天風呂が二つあった。いかにも源泉と思わせる、濁り湯である。木の間隠れに青い湖面が見える。温泉の匂いは、一瞬温泉通を狂喜させ平常心を楽しくかき乱すが、次いですぐに心を落ちつかせて沈潜させてくれる。わたしなどのような単純な温泉好きにはありがたい濁り湯だが、湯の中が見通せず脚元に不安を感じて敬遠する温泉通もいるのはもったいない限りだ . . . 本文を読む
道南でどの温泉がいいかと問われれば、わたしは一瞬もためらわずに「登別温泉」と答えるだろう。カルルス、新カルルスを含めて、登別温泉は大満足間違いなしの道内で無敵の温泉である。コスパーもよろしい。温泉だけに焦点をあてれば一軒宿だが支笏湖の「丸駒温泉旅館」、長万部の「二股ラジウム温泉」、八雲にある「上の湯温泉 銀婚湯」という選択肢もある。温泉はさておき(登別と比べるとだが)、風光明媚でなおかつコスパーも抜群な「洞爺湖温泉」も忘れてはいけない . . . 本文を読む
だれでも記憶のなかにはガラクタばかりでなくいくつかの宝物を持っているよな。キミもそうだろ?そして、持っている宝物は少ないより、たんまりと多いほうがそりゃもういいに決まっている。そのひとの豊かな人生の証になるんだからな。能取(のとろ)湖、紅葉のサンゴ草群落・・・。オレにとって、思いだす風景の宝物のひとつがまさにここなんだ。いわばあの菊池渓谷の記憶と同じくらい、ピカピカの輝きのお宝なのさ。十年以上前になるが、留萌に近い苫前というところから北海道を横断して、知床ウトロの夕陽を見に突っ走ったときにみて以来だ。ざっと三百七十キロ・・・。思えばとんでもなく無謀、若気の至りアーンド汗顔の至りというやつだ . . . 本文を読む