温泉クンの旅日記

温泉巡り好き、旅好き、堂社物詣好き、物見遊山好き、老舗酒場好き、食べ歩き好き、読書好き・・・ROMでけっこうご覧あれ!

船小屋温泉 福岡・筑後

2006-06-04 | 温泉エッセイ
 < 馬鹿ドラ >

「夕食は、6時半からでよろしかったでしょうか」
「・・・・・・」
「あのう・・・和泉さま?」



 ん。あ、なに、オレに話しかけたの。
 ここは、福岡県の筑後にある「船小屋温泉共和国」という変てこな名前の宿で
ある。四階建てで、老人会・子ども会・忘年会・新年会・宴会など、やたら「会」
のつくプランが多い宿泊もできる中規模な日帰り温泉施設だ。料金は格安である。

<出入国手続き処>という名前のいわゆるフロントで、無心に住所と氏名などを
カードにセコセコ書き込んでいたわたしは、声のほうに、無精ひげを生やし疲れき
った顔と眼をゆるゆると向けた。
「夕食ですが、6時半からでよろしいでしょうか」
「あ、はい、結構です」
「それでは、6時半にオマツリヒロバでお願いします。明日の朝食は、まじめ人間
の間になります」

 はーい、わかりました。若い女性出入国係官にそう応えてから、「オマツリヒロ
バ」って聞こえたけどなんだろう。お祭り広場かな。マジメ人間って、なにかな。
いいや、部屋にいってから案内書をみて、似たような広間の名前を調べてみよう。
判らなければ電話で聞けばいい。とにかくモー疲れた。一刻もはやくゴロンと横に
なりたい。

 昨日、横浜を出発したのが午後7時である。
 東名に乗り、走り出すとすぐに低気圧の歓迎を受けた。雨である。走るほどに雨
は強くなり風も加わった。この低気圧が日光や軽井沢などにかなりの積雪をもたら
したことをあとで知った。
 風と雨と夜、高速道路の三重苦のなか、爆走大型トラックに煽られながらようや
くたどり着いた浜名湖サービスエリアで二時間ほど仮眠した。

 名古屋・京都・大阪・神戸地区をラッシュ前に通過するため、午前2時に浜名湖
を出発、一路九州を目指した。雨はいよいよ激しい。時速90キロで走らせる。
 午前8時ごろ、岡山県にはいったところで雨がようやくあがった。車もすくなく
走りやすい。順調に時速110キロのペースで走る。
 順調は眠い。ときたま強烈な眠気に襲われてサービスエリアで仮眠を2回ほどと
る。

 午後3時半、本州より九州に渡った。疲労が激しく、残念ながら感動が湧きあが
らない。
 八女インターをおりて、ここ船小屋温泉に到着したのが午後5時である。
 横浜からの走行距離は、1,170キロ。浜名湖までが250キロであるから、今日いち
にちで、920キロ走ったことになる。これは、いままでで一番走った記録だと思
う。
 22時間から仮眠時間4時間を引くと、通算18時間運転したことになる。久しぶり
の馬鹿ドライブであった。

 この馬鹿ドラは、エコノミー症候群をはるかに凌ぐ、相当な疲労が身体に蓄積さ
れる。もうひととクチをきくのも億劫なほどである。夢にみた車での九州なのに
感動が疲労に押さえ込まれてしまった。だからひとには決してお勧めできないし、
わたしも、次回からの九州行きには本州で一泊するつもりである。そのほうが絶対
よろしい。
 ただこういう体験は、今後のわが馬鹿ドライブの参考にはおおいになる。はずで
ある。(まだ馬鹿ドラ、ヤンの?このひと)



 共和国の温泉は日本一の含鉄炭酸鉱泉とあるが、それほどたいしたものではなか
った。それでも温泉は、ガチゴチに固まった身体中の筋肉を、巧みにほどき、丁寧
にほぐしてくれた。とんでもなく長時間、集中を無理強いした神経群やらにもやわ
らかな弛緩をあたえてくれた。さすが温泉力だな、と思う。

 ここは浴衣ではなく男はアロハ、女性はムームーである。わたしは、浴衣もめち
ゃ似合うが、じつはアロハもびっくりするほど似合う珍しい日本人のひとりなの
だ。南方系なのかな。そういえば、フセインにもどこか似ていなくもない。

 お祭り広場にいってみると、カラオケ・ステージがあるいわゆる大広間である。
日帰りの客で混みあう一角に席が設けられていた。わたしは、こういうのも好き
だ。あっちこっちから「ばい」とか「よか」とか「とよ」が聞こえて、遠い旅先で
あることを実感する。
 夕食の料理をつつきながら、焼酎の水割りを何杯もお代りしているうちにカラオ
ケが始まったので、早々に退散した。

 この共和国はいろいろとネーミングに凝っている。

 男子更衣室は<鎧とストレス脱ぎ捨ての間>、女子の更衣室は<浮世のしがらみ
ふりはらいの間>。女将は<内閣官房長官>であるし、館内のスピーカーからは
<環境庁長官>やら<税関長>を呼び出したりしている。宿泊予約や問い合わせは
<外務省予約班>が承る。

 女性用のトイレのドアに<めい想の間>とあり、いま、わたしが爆睡前に行こう
としている男性用のそれは<チン黙の間>となっていた・・・。なーるほど。う・
ま・く、ないか。



 ちなみに朝食のまじめ人間の間のほうにはカラオケがありませんでした。
 アロハでご飯と味噌汁なんざあ、たまにはオツなもん、ばい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« はげのゆ温泉 熊本・阿蘇郡... | トップ | <蕎麦 ろ> 埼玉・児玉 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

温泉エッセイ」カテゴリの最新記事