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生き過ぎたなどと笑っている浴衣
飯塚 古野道子さんの句。
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N新聞読者文芸俳句部門、秋尾敏選の一席の入賞作品。
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浴衣って入浴の後に着る日本独特の薄手の着物のこと、かなあ。
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浴衣は夏の季語。夏だけに着るのかなあ? 暑さを凌げるんだろうか。僕はこのごろあんまり着ないな。
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「生き過ぎた」と言っては笑っている浴衣の人はお年寄り。
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若い頃の浴衣を出して着てみたんだろうか?
浴衣の柄が少々派手で似合わなくなっているのかなあ。
それとも、似合っている自分が華やかに鏡に映っていて、苦笑いに及んだんだろうか?
いろいろ推測ができる。
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傍に誰かがいるのかなあ? 娘さんなのかなあ? 若いお孫さんなのかなあ? もしかしたら、亡くなったご主人様の遺影の前なのかなあ?
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「などと」とあるから、断定していない。余裕を持たせて柔らかくしてある。
「いいのよいいのよ」「この浴衣、似合ってるわよ」「もっと長生きしてね」などとまわりが補充保護してあげたんだろうか?
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<生き過ぎた>と思う人はたぶん多いんじゃないかなあ。日本は高齢化社会だから。半分は照れているんだろうなあ。
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<長生きできたという幸福感>を、まわりに疎まれないように、若干、軽量にしておこうというのかなあ。
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10人が10人みんな長生きができるわけではない。早く亡くなってしまった人もいる。
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何だか自分一人がたくさんの幸運を独り占めしたみたいで、すまなくなるのかなあ?
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面白く読ませてもらった。ぴしっと糊のきいた浴衣の糊の匂いがしてきた。
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浴衣の人が笑っているが、浴衣も笑っているのかもしれない。
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あなたさまに50年愛用してもらえました、わたし嬉しいです、ってにっこり。