どの子にも涼しく風の吹く日かな 飯田龍太
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「涼しく」が季語。もちろん夏の。こどもたちが遊び戯れています。日に焼けて、腕も首も、胸も、ほっぺたも真っ黒にしています。水遊びをして戻って来ました。木陰に、山々を下りてきた緑の風が吹き渡ります。甲府盆地は盆地ですから、気温がどこよりも上昇します。暑いのです。暑いからこそ、木陰がパラダイスにもなります。わいわいわいわい、声が弾んでいます。しばしの休憩です。みんな仲良しなのです。風は平等です。みんなを涼しくします。
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これでいいのです。これでこどもたちは幸福なのです。満ち足りるのです。
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風が涼しい。この涼しさがたまりませんね。大人になって、賢くなって、それ相応の仕事をして、お金も貯めて、その後その後を追い掛けて、欲望が肥大化するとこれくらいでは満足を覚えません。
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涼しさに平等な幸福感を覚えているくらいで止めていたらいいのです。俳人飯田龍太は、こどもたちに吹いて来る風に目を止めて、人間全体の平等な幸福感を、垣間見ています。
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この句は平明です。明るく健康的です。こういう句なら、わたしだって楽に共鳴を起こします。