多病息災発達障害者こよりの日常

両手で数えきれない障害と持病を抱えつつ毎日元気に活動中。発達障害の息子たちの子育ても終え、悠々自適の毎日です。

自閉っ子が「嫌だ」という感情を表に出した日

2018-05-04 17:02:07 | 子どものあれこれ
自閉っ子が 特別支援級にいた頃。


動きがのろく、弱視の自閉っ子は


他の 子ども、特に 同じ支援級の男の子の


標的にされることが多かった。


そのことは 連絡帳や、送迎の時に先生から聞いたり、


他の 女の子から、「昨日OO君が 自閉君を叩いてた」と


聴いたりしていた。しかし 本人は、


その事を家で話すわけでもなく、


また OO君が 近寄ってきても、嫌だと意思表示をすることもなく、


逃げる事もせず、叩かれたり 持ち物を 取られたりしていた。


そんな繰り返しが続いていたある日。


学校の 授業参観日があった。


自閉っ子はいつもと変わらない様子に見えたが、


OO君や、他の子達は、先生の雰囲気や


自分達を見ている自分の親や 他の子の親が来ている事で、


緊張したり、もぞもぞ動いたり、自分の親の方を何度も振り返ったりしていた。


授業の内容が何だったか、私は覚えていない。


子ども達が 代わる代わる何かを していた時、


何が気に障ったのか、OO君が 立ち上がり、自閉っ子を


思い切り蹴り上げた。


いつもは 表情も変えず、泣きもしない自閉っ子が、


いきなり大声で泣きだした。


先生も、当のOO君も 驚き、他の子の動きも止まった。


先生は OO君と自閉っ子を 引き離し、


OO君に あれこれ説明し、人を蹴ったり叩いたりしないよう


話している。


私は 自閉っ子が 学校で泣きじゃくる姿を初めて見た。


ああ、この子の中で 何かがつながったんだなあ、という気がした。


いままでは、「痛い」と感じても、


その痛みの原因が どこから来るのか、わからなかったと思う。


乳児期には 声が嗄れるほど泣き、息ができなくなり、


真っ青になっていた子。何とか呼吸をさせようと、


背中を叩いたり 逆さにしたりして、また呼吸を始めるとほっとした。


乳児期には うまく泣く事すらできず、体と心がつながっていない世界にいた子。


その子が今、蹴られた痛みを「他者から 自分の体に加えられたもの」だと感じ、


その不快さを 泣く事で表現している。


また 一つ、階段を上がったんだ、と思いながら、自閉っ子が


泣き止むまで、目を離す事ができなかった。


その後も OO君の 攻撃は止まらなかったが、


周囲の子どもの中から、 自閉っ子をかばう子が出てきた。


「そんな事したら、自閉君が嫌がるよ」と


2人の間に入ってくれた。


OO君は 発散する場がなくなり、他の方法で


自閉っ子への 攻撃を始めた。


物を取るふりをして、肘鉄を食らわせたり、


手が滑ったふりをして、何かを 自閉っ子にぶつけたり。


でも 自閉っ子も それなりに工夫して、


攻撃を避けようとしたり、「やめて」が言えるようになってきた。


それでも 何らかの形で、OO君からの攻撃は止まず、


中学卒業まで それは続いた。


自閉っ子は 徐々にたくましくなり、相手への反撃はしないけれど、


自分を守る術を 少しずつ身に着けていった。


学校の先生も、根本的な原因が見えないので、


対処のしようがない。また OO君の親御さんも、


自分が目にしていない時の事まで


逐一 自分の子に非があるように 言われる事に


反感を持った。


ある時 単なるけんか、感情の高ぶりからのもの、とは


言えないような事が起きた。


さすがに 親御さんも 学校からの報告を受け、


わが家に 電話をくれたが、


謝罪の言葉もなく、「学校から お宅に電話しておけと言われたので」という


口ぶりだった。


何をどう話しても 通じない。


その後は 学校側が 話をしたようだが、


その後 親御さんを 学校の行事などで 見かける事が


ほとんどなくなった。


中学卒業後は、別の進路を選択したので、


会う事も無くなったが、我が家にOO君から


「自閉君いますか」という電話が 何度もかかってきた。


自閉っ子は 当然「出ない」という。


断っても 説明しても 繰り返しかかってきた電話。


昔 自閉っ子や OO君を 見てくれていた先生に


ばったり会い、「OO君はどうしてるかご存知ですか?」と


聞かれた。先生が知らない事を 私が知る由もない。


「別の学校に行きましたので、私も子どもも知りません」と


伝えたが、その先生にとっても 忘れられない教え子だったのだろうと思う。


その後 成長し、体も 心も その他の面でも伸び、


働く事や 友人や同僚との 関わりを楽しんでいる自閉っ子。


無表情で、自分の体を持て余すように 写っている幼い頃の写真とは、


別人のようになっている。


この先の人生で、困難があったとしても、自力で乗り越えてくれるだろうと


そんな事を感じた。










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