事件番号 平成21(行ケ)10134
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年01月20日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣
カ この点に関し,本件審決は,本願明細書の発明の詳細な説明には,(活性酸素によって誘発される)生活習慣病(の予防)に対する効果の有無及び当該効果とヒドロキシラジカル消去活性などの抗酸化作用の大小との対応関係(例えば,どの程度の抗酸化作用を有していれば,生活習慣病(の予防)に対する効果を有するとするのかなど)に係る記載又はそれらを示唆する記載はないと説示する。
しかしながら,本願明細書には,本件補正発明の組成物が活性酸素によって誘発される生活習慣病の予防に対して効果を有することを当業者が認識することができる記載があることは上記のとおりであり,また,新請求項1には,どの程度の抗酸化作用を有していれば生活習慣病(の予防)に対する効果を有するかなどの生活習慣病の予防に対する効果とヒドロキシラジカル消去活性などの抗酸化作用の大小との対応関係についてまで記載されておらず,このような対応関係について発明の詳細な説明中に記載されている必要があると解されるものでもない。
また,本件審決は,疾病(の予防)に対する効果の有無を論じる場合,生体に対する薬理的又は臨床的な検証を要することが当業者に自明であるところ,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても,同検証に係る記載又はそれを示唆する記載はないから,新請求項1について,本願明細書の発明の詳細な説明はサポート要件を満たすということができないとも説示する。
しかしながら,医薬についての用途発明において,疾病の予防に対する効果の有無を論ずる場合,たとえ生体に対する薬理的又は臨床的な検証の記載又は示唆がないとしても,生体を用いない実験において,どのような化合物等をどのような実験方法において適用し,どのような結果が得られたのか,その適用方法が特許請求の範囲の記載における医薬の用途とどのような関連性があるのかが明らかにされているならば,公開された発明について権利を請求するものとして,特許法36条6項1号に適合するものということができるところ,上記ウのとおりの本願明細書の実施例1や図1の記載,本願発明の抗酸化作用を有する組成物は,極めて強力なヒドロキシラジカル消去活性からなる抗酸化作用を有するもので,活性酸素によって誘発される老化や動脈硬化等の種々の生活習慣病の予防に極めて好適であることなどの記載によると,同号で求められる要件を満たしているものということができる。
したがって,本件審決の上記判断は,いずれも誤りである。
(一読後のメモ)
審決は対応関係の記載がない(前の指摘)とするのに対し、『新請求項1には,どの程度の抗酸化作用を有していれば生活習慣病(の予防)に対する効果を有するかなどの生活習慣病の予防に対する効果とヒドロキシラジカル消去活性などの抗酸化作用の大小との対応関係についてまで記載されておらず,このような対応関係について発明の詳細な説明中に記載されている必要ががあると解されるものでもない』としている。この判示はクレームが具体的対応関係に言及していなければ、サポート要件を満たすためには明細書に具体的対応関係の記載は求められないとのものである。
明細書に課題を解決できると認識できる記載があるかという要件を離れた議論になっており、どのように理解するのか私の中でもう一考必要である。
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年01月20日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣
カ この点に関し,本件審決は,本願明細書の発明の詳細な説明には,(活性酸素によって誘発される)生活習慣病(の予防)に対する効果の有無及び当該効果とヒドロキシラジカル消去活性などの抗酸化作用の大小との対応関係(例えば,どの程度の抗酸化作用を有していれば,生活習慣病(の予防)に対する効果を有するとするのかなど)に係る記載又はそれらを示唆する記載はないと説示する。
しかしながら,本願明細書には,本件補正発明の組成物が活性酸素によって誘発される生活習慣病の予防に対して効果を有することを当業者が認識することができる記載があることは上記のとおりであり,また,新請求項1には,どの程度の抗酸化作用を有していれば生活習慣病(の予防)に対する効果を有するかなどの生活習慣病の予防に対する効果とヒドロキシラジカル消去活性などの抗酸化作用の大小との対応関係についてまで記載されておらず,このような対応関係について発明の詳細な説明中に記載されている必要があると解されるものでもない。
また,本件審決は,疾病(の予防)に対する効果の有無を論じる場合,生体に対する薬理的又は臨床的な検証を要することが当業者に自明であるところ,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても,同検証に係る記載又はそれを示唆する記載はないから,新請求項1について,本願明細書の発明の詳細な説明はサポート要件を満たすということができないとも説示する。
しかしながら,医薬についての用途発明において,疾病の予防に対する効果の有無を論ずる場合,たとえ生体に対する薬理的又は臨床的な検証の記載又は示唆がないとしても,生体を用いない実験において,どのような化合物等をどのような実験方法において適用し,どのような結果が得られたのか,その適用方法が特許請求の範囲の記載における医薬の用途とどのような関連性があるのかが明らかにされているならば,公開された発明について権利を請求するものとして,特許法36条6項1号に適合するものということができるところ,上記ウのとおりの本願明細書の実施例1や図1の記載,本願発明の抗酸化作用を有する組成物は,極めて強力なヒドロキシラジカル消去活性からなる抗酸化作用を有するもので,活性酸素によって誘発される老化や動脈硬化等の種々の生活習慣病の予防に極めて好適であることなどの記載によると,同号で求められる要件を満たしているものということができる。
したがって,本件審決の上記判断は,いずれも誤りである。
(一読後のメモ)
審決は対応関係の記載がない(前の指摘)とするのに対し、『新請求項1には,どの程度の抗酸化作用を有していれば生活習慣病(の予防)に対する効果を有するかなどの生活習慣病の予防に対する効果とヒドロキシラジカル消去活性などの抗酸化作用の大小との対応関係についてまで記載されておらず,このような対応関係について発明の詳細な説明中に記載されている必要ががあると解されるものでもない』としている。この判示はクレームが具体的対応関係に言及していなければ、サポート要件を満たすためには明細書に具体的対応関係の記載は求められないとのものである。
明細書に課題を解決できると認識できる記載があるかという要件を離れた議論になっており、どのように理解するのか私の中でもう一考必要である。