のら猫の三文小説

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次平の復讐 No.26

2012-11-29 08:25:36 | 次平の復讐

お香、鉄平の知人や大物たちと会う。




お香は、覚悟を決めて髪を直していると、番頭が貸衣装屋をつれて来た。

「奥様 取りあえず貸衣装ですが、袖を通した事のない新品を持ってこさせました、お好きなものを選んでください。」と言った。お香は番頭に礼を言って、服を着替えた。ほどなく駕籠が到着し、鉄平とともに、駕籠に乗った。

各藩邸では次平にそれぞれ屋敷を用意している。それぞれ城下に来て遠慮なく使って欲しい。ついては、医事方の相談役になってもらえるように、鉄平から言って欲しいと云うものであった。鉄平はお香を紹介し、私の妻です。よろしくお引き回し下さいと紹介した。

長州や福岡藩では、藩主や若君までぜひ会いたいと言って出てきた。田宮は、次平が幕府から屋敷を賜り、医事方相談役を賜った事についての各方面への挨拶や今後の江戸の医院の運営について意見を交換した。次平の江戸医院も、幕府から何人かの研修生を受け入れる必要があると田宮が言うので、「それは良いことですね。」と言った。

お香を紹介すると、「次平先生はご承知ですか」と言われたので、「次平先生には手紙を書いておきます。」と答えた。田宮も、次平先生も鉄平さんも結婚した。私もいい人をみつけようといった。 



良庵には、次平が幕府から屋敷を賜り、医事方相談役を賜った事について礼を申し上げた。良庵は、今回の決定に至る裏方での動きと今後の動向についての注意などを話してくれた。

お香を紹介すると、良庵は、これで鉄平さんは二人分動けますねと言った。鉄平は「暫くお香とは離れませんので、それは難しいと思います。」と答えた。良庵は「お熱い事ですが、お香さん 貴方は鉄平さん以上になりそうですね。良庵を宜しくお願いします。」と言った。お香は「おからかいにならないで下さい。私は何もわかりません。宜しくご指導下さい。」と言った。 お香は鉄平が、良庵の屋敷に行く前に鉄平の店から届いた「反物と小判」を、こっそり良庵に届けていた事を見ていた。 


お香、鴻池の当主と会う。



最後に夕刻、鴻池の別邸に、お香と共に伺い、お香を控えの間に待たせ、挨拶しようとすると、「鉄平さん、いつ口説いたですか、よくそんな時間がありましたね。親父には早速連絡しておきました。ぜひ紹介して下さい。なぜすぐここにつれてこないんですか?」 



お香が頭下げて、挨拶しようとすると、
「お香さんですね。江戸堀で髪結いをやっておられた様ですが、鉄平さんが髪結いの亭主になれなくて残念ですね。鉄平さんは今は人を助ける仕事をしておられます。鉄平さんを助けてあげて下さい。鴻池吉太郎です。よろしくお願いします。」
と気さくに挨拶された。

お香は、この人は何でも知っていると一瞬絶句したが、「ひもにするつもりが大変な事になりました。何も分かりません。宜しくご指導下さい。」とだけ答えた。「鉄平さんがひもか、さすが鉄平さんの奥さんだ。この人は鉄平さん以上の人になるかもしれません。次平先生は可憐な奥様を御貰いだそうで、鉄平さんはお香さん。これはよくお似合いだ。ご婚礼の日取りがきまりましたら、ぜひお知らせ下さい。次平先生は、帝の賜り物もあり、商人風情の出る幕はありませんでしたが、鉄平さんは商人。今後のお付き合いも宜しくお願いします。」と言われた。

その後鉄平とは大坂の店は順調でなによりだが、鴻池は何も言わないので、出資比率は維持してくれるように確認した。隠居は鉄平の大坂店内で、結局鴻池からの2千両出資されているが、千両はまだ使用しないで残っているし、このままでは初年度から、利益分配金は出資金の2割程度となりそうだし、鴻池の協力なしでも十分やっていけるし、金の無駄遣いになるという声が出ている事が気になっていた。

鉄平は「物産問屋の今後を考えても鴻池との協力は大切に思っている。大坂店の余剰金については、今後の様子を見ながら、運転資金を十分に取り、それでも残る余剰金の相当部分は、その運用は、別途鴻池さんに任せる事で考えている。いずれ源三とも話をしたい。江戸での物産問屋についても鴻池さんと協力して話をして行く事で検討していきたい。ただ手前共の各店では、急に大きくなって人の育成が追いついていない。次平先生の人柄を慕ってきた人と次平先生の治療に協力して大きくなった事を忘れてはいけない。暫くお香と一緒に各店をゆっくり回って考えたい。」と答えた。 



吉太郎はいった。「私もそれはやりたいですよ。鉄平さんに人の育成といわれると返す言葉がない。丹波屋の件はまことに申し訳ない。その上 その後のご配慮には、親父も感心していた。お香さん 髪結いのお仕事は、5年間居抜きで私どもに任せて頂けませんか?今 働いている方には悪いようにはしません。身の回りの運送も私どもに任せてください。明後日にも人をやります。」 

お香は「万事 お任せします。私は明日みんなに説明します。今働いてもらっていく人の身の立つようにお願いします。」と即答した。 



吉太郎は人を呼んで人形を持ってくるようにいい。何か別の用事を言いつけた。「お香さん。仕事の話はこれまで。ちょっと鉄平さんとカラクリ人形の話をします。お香さんには、呉服屋を呼んでますので、暇つぶしして下さい。」といった。 


丹波屋の件



丹波屋の件というのは、大坂の物産問屋での運送で、鴻池の指定した丹波屋という運送屋が、ある物を市価の倍ほど運送料を請求してきた。物産問屋が、うまく行っているのは、鴻池のおかげといわんばかりの態度で、請求してきた。

大坂の物産問屋の内部では、激怒して物産問屋の番頭の理平もさすがに抗議すると言っていたのが、源三にも伝わってきた。源三は人のふりみて自分の鏡とせよと言って、抗議も大人げないし、いいなりにお金を払うようにした。

むしろ、理平から知った鴻池側の河内屋が驚き、ご隠居と相談して調査した。この倍額請求は丹波屋の番頭が自分の金がいるので、密かに倍額にして請求して、差額を手に入れたものであった。そこでその番頭に暇を出し、丹波屋の主人に源三に謝りに行かせた。

その数日後 源三が河内屋に抗議した。「私共の調査では、倍額請求した番頭の子どもが病気に掛かり、医者代がかさみ、鴻池が出資している相手先なら問題ないだろうと倍額請求したもので、私共では高額請求していた医者から子どもに詳しい良心的な医者を紹介して、変えさせた。子どもさんは病状も安定し、番頭さんも差額分を返し、後悔している。そんな事をさせては私共に対して遺恨が残る。手前共は次平先生の治療に役立てる為に、少しでも安価で良質な薬を提供しようと旦那が作った店である。こんな事が手前どもの旦那に知れたら、私が叱られる。もしこのままであれば、私どもであの番頭さんを雇いたい。」 

河内屋は、ご隠居と話し、丹波屋は反省神妙であるとして、暇を取り消して、雇い直したと言うものであった。 



お香は、鉄平の店の番頭といい、吉太郎といい、心配りが尋常でない。こんな人たちと付き合うようになった鉄平に驚いていた。そして鉄平を変えた次平にも会いたくなった。 



お香はそう思いながら、鉄平に恥をかかせない程度の着物も持っておこうと思い、改まった所に合う数点の着物と帯を選んだ。値はいかほどと聞いたが、呉服屋は、奥様のお好みのものを選んでいただければ結構ですと言って値段は決して言わなかった。 



鉄平と吉太郎はカラクリ人形の話をしていた。まるで少年のような顔をして話をしていた。お香は鉄平がより一層好きになった。吉太郎は、一緒に食事をしていきませんかと声をかけたが、鉄平は「まだ新婚なので」と言うと、吉太郎は「野暮でしたね」と言って送り出した。 





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