ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

ヨーロッパの装飾文様

2014-03-02 20:38:58 | 本のレビュー

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ずっと、知りたいと思っていた事柄を満載した本に出会えることは、そうそうない。だから、美術館のミュージアムショップで、この本を見つけた時は、思わず抱きしめたくなったしまったほど。

ヨーロッパの歴史や文化に惹かれ続けるようになって、久しいけれど、その一方装飾にも魅せられてきた。 古代ギリシアの壺などを見ると、競技する男性や、海洋生物を描いた絵の他、上下に素晴らしい模様がほどこされているのに気づく。三角形などの幾何学文様だったり、植物を思わせる模様(この本で、それを「パルメット」という名前だと知った)だったりするのだが、この装飾がギリシア的なるもへの憧れさえ、呼び覚ましてしまうのだ。

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そして、上の写真にあるのは、ロゼッタ紋という、上から花弁が放射状に広がる花を思わせる文様。壺や壁画、衣装、家具などあらゆるものに取り入れられる文様・・・デザインというには、一つの文明にあまりに普遍的に用いられすぎ、「飾り」として片隅につつましやかに存在しているかもしれない。しかし、古代エジプトの壁画や神殿の柱などに使われたロータスやパピルスの花弁の装飾模様など、『文明』に美を与えるのは、実はこれしかないのではないかと思わされる。

この本の素晴らしいところは、文様の説明だけでなく、その文様が歴史上持っていた意味まで解説してくれているところ。 古代エジプトならではの青いアイラインをほどこしたホルス神の目--それは、単体で壁画などに描かれているのだが、こうした目だけが描かれたのは、目に「邪眼」などの超越的な力があるとする古来からの、思想のあらわれなのだとか。

他にも、中世紀のステンドグラスや、アラベスク文様など、「目からうろこが落ちる」--そのものズバリの解説。 以前、装飾模様を手掛ける女性画家の小説を書いたことがあったけれど(「ノエルの本棚」所収の「植物幻想」より)、文様の世界への扉が開かれた気分。


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