虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

父、帰る (2003/ロシア)

2006年06月09日 | 映画感想た行
VOZVRASHCHENIYE
THE RETURN
監督: アンドレイ・ズビャギンツェフ
出演: イワン・ドブロヌラヴォフ     弟イワン
    ウラジーミル・ガーリン    兄アンドレイ
    コンスタンチン・ラヴロネンコ     父

アンドレイとイワンの兄弟は母と暮らしていた。ある夏の日、12年前に家をでた父親が突然帰ってきて、兄弟を小旅行に連れ出す。写真でしか知らなかった父は、家を離れていたわけも帰郷のわけも何も語らない。そして当惑しながらも兄弟はそれぞれの反応を…

 作中の父も寡黙で情報量の少ない人でしたが、この映画自体もあからさまに語ることなく終わったことが多い映画です。スッキリさせてくれる親切な映画を見慣れた私の目には二人の兄弟といっしょに当惑したような感じです。こういうものだと受け取めるしかありません。
 解説にも「横暴な父」と形容されていましたが、私の見るところでは横暴とは思えません。要するに父親自身のの基準で接しているように見えます。ただ、男親というものを知らずに育った二人の兄弟には意味なく高圧的に思えるかもしれない。兄は父を慕う、というより、男の価値観というものに反応しているように思える。父への反感を募らせる弟はまだそれを受け入れる準備ができていない。それに不在・帰郷の理由を全く語らないことはきっと「大人の理由」なのだろうが、まだ世界を見る目が大人のほうまで開けていない弟には受け入れ不可能だろう。
 そしてあのラストである。初めて弟は「パパ」と我知らず、心の底から叫んでいる。
 (私も叫んじゃったんですけどね「何!?これ?」って)

 映像はきれい。北の夏の空の濃い青に白い雲。人物はというとなぜか沈んだような色彩を感じさせ、輪郭線がくっきりしたという印象。いかにも冷たそうな水の色。その色彩の中で私の感情が澱んで明確に言葉になりきらずにいる。