虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

ローレライ (2005/日)

2005年03月13日 | 映画感想ら行
監督: 樋口真嗣
出演: 役所広司 妻夫木聡 柳葉敏郎 香椎由宇

 福井晴敏の戦争サスペンスの映画化。
 特攻に反対したため臆病者とされ、干されていた海軍の絹見少佐は、中枢の朝倉大佐から広島に次ぐ日本への原爆投下を防ぐためにドイツから来た潜水艦イ507で爆撃機の基地を攻撃せよとの命令を受ける。
 その艦には、「ローレライ」と呼ばれる新型兵器が搭載されていたが、それは艦長である少佐にも秘密にされていた。

 この映画にも、めちゃめちゃ泣きました。
 ほとんど涙の切れ間無し状態でしたが、映画で感動していたかといえば、それはまた別問題。
 もちろんそこそこいい映画ではあったのです。ベテラン俳優の演技はたいしたものでした。
 やっぱり原作と切り離して考えないと、不満積みあがっちゃう。だって鶴見真吾の大湊中佐なんて、何のためにでてきたかよく分からないくらいの出番しかない!全体に緊迫感甘いのだ。圧迫感より清潔感感じた潜水艦生活だったし。
 映画なんだから、もうちょっとお話刈り込んでも良かったですかねえ。その分、野球のお兄ちゃんとか、もっと描き込んでおくとか。やっぱりヘアスタイルは気になりました。西宮大使の刺客になる兵隊さんはいくらなんでも長すぎでしょう。若い兵たちのルックスとパウラのコスチュームで時代感がかなり飛んじゃってました。
 一番の違和感は空気。戦争末期のものには写真や手記を見るだけでもどうしようもなく迫ってくる独特の空気があるのだが、それが希薄なのだ。
 戦争映画でなく、SFなのだ、と言い聞かせてもなお、それを探しちゃったのである。
 それに映画としても、あんな思い入れたっぷりシーンを持続させるよりも、もっとサスペンスをきっちりと積み上げて欲しかった。

 これだけ突っ込みまくりで、それでも泣けて仕方なかったのは、やはり私の中の記憶のせい。
 終戦の二週間前に十代の通信兵の息子に戦死された母の嘆き。一人息子が30歳になって兵隊にとられ、南方で餓死した母の嘆き。満州からの引き揚げの話。空襲や機銃掃射を何とか生き延びた話。こういう直接聞いた話や、読んだもの、資料で見たものが思い出されて仕方なかったから。
 皆自分をはぐくんだものを愛して大切に思っていた。そして死んで行き、大事なものを失ったのだ。

 この映画を見たら、ついでに
「戦艦大和の最期」吉田満(必読!)
「戦中派不戦日記」をはじめとする、山田風太郎の終戦前後の日記
「昭和史」半藤一利
「海軍めしたき物語」高橋孟
「欲しがりません勝つまでは」田辺聖子
そのほかの本を是非是非読んでいただきたいと、お願いします!

 う~ん、それと日本の男性、ほんとに軍服に合わなくなったのかな。「海底軍艦」の田崎潤は、腹が出ていようが寸がつまり気味に見えようが、あの白い詰襟がもう第二の皮膚とばかりにフィットしてたんですが、この映画ではどうもピタリと着こなしてる士官役少なかったと思います。その、「板についてる」って感じがないのです。
 
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