虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

デビルズ・バックボーン (2001/スペイン)

2005年03月09日 | 映画感想た行
EL ESPINAZO DEL DIABLO
THE DEVIL'S BACKBONE
監督: ギレルモ・デル・トロ
製作: ペドロ・アルモドバル ギレルモ・デル・トロ 
出演: エドゥアルド・ノリエガ マリサ・パレデス フェデリコ・ルッピ フェルナンド・ティエルブ イレーネ・ビセド
 
 スペイン内戦下の共和党の人間が維持する孤児院。共和党の闘士の父をなくした少年カルロスは義足の女性院長、彼女を愛する老カサレス先生、美しく粗暴を感じさせる若い男などに迎えられる。彼はそこで、不思議な気配を感じるようになり、それはかつて彼のベッドを使っていた、行方不明のサンティの霊ではないかと考える。

 幽霊とは何か?
 過去からよみがえってくる苦悩の記憶か

 たとえば激しい痛み…
 死者の中で生きているなにか
 時の中にさまよう人間の想い
 古い写真のように…
 琥珀の中に閉じ込められた昆虫のように…
 (冒頭ナレーション)


 美しい画面と血の色に縁取られた哀切な涙を誘う映画。
 幽霊は哀しく、人間は恐ろしい。
 スペインの内戦という舞台は、また共和党という敗れ去るものたちの中での葛藤の未来を暗示して恐ろしい。人間らしいものの残滓が醜い欲だけという美しい青年。一歩を踏み出すことの出来ない胎児をつけた酒を飲む老人。老いて尚美しい、片足の院長。黄土色の草原のただ中の孤島のような石造りの孤児院の真ん中の爆弾など、道具立てはアルモドバル製作だけあって、ほどほどエグく、中での子どもたちのそれなりに子どもらしい生活と、日常と非日常の接点がそこここでせめぎあうよう。
 ラストでは、カルロス少年と共に、泣かずにいられない。そのとどまった心に。

 パデレス、ルッピのベテランはいうまでもなく、賢いカルロス、力に負けて、より弱いものに牙を向けてしまうが、最後には自分を取り戻すハイメなど、少年たちの演技も素晴らしい。ノリエガは実に美しく、それが一層陰惨である。そして彼もまた強い力に負けて、弱いものに残酷さを向けているのがわかる。

 DISUCASのレンタルで借りたが、年度末試験中の高校生が「終わったらまた見直すから、返さないで!」と叫んでいた。私にとっても、儲け物と感じた映画。