虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
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アムンゼン探検誌(平凡社世界教養全集)

2005年03月27日 | 
 中学生用の英語のサブテキストを探していて古書店で「The Coldest Place on Earth」という全滅したスコット南極探検隊についての本を見つけた。本文20ページ足らず、解説や、内容確認のための設問もすべて易しい英語で、しかも感動的なところははずさずに書いてあって、なかなかお得な買い物だった。
 それにつられて、平凡社世界教養全集(1962年初版・すごい名前の全集があったのだなあ)24を引っ張り出してきてアムンゼン探検誌を読む。この本にはほかにサン・テグジュペリの「人間の土地」アラン・ジェルボー「たった一人の海」が収められている。

 未知なる物への到達を希求する人間の記録や物語は、いつだって胸躍らせずにはいられない。
 アムンゼンのこの記録は、ほぼ自伝だが、彼のまさに鉄の意思に驚きも感嘆もさせられる。15歳の時に探険家になることを決心し、以後彼はそうなるための準備と努力を惜しまない。冬の夜も窓を全開にして眠る。ノルウェーのオスロの冬である。軍隊での訓練も、身体を鍛えるのも、探険家になるため。探検隊のトラブルは、隊長と船長の2人リーダーが原因と考えて船長になるため船員にもなる。すべて探検隊のリーダーになるためであり、観測者としての訓練も必要とあらば短期間で済ませる。
 何が必要かを考え、それに対する備えを微塵もおろそかにしない。
 何度も死に臨むような事態を乗り越えたのも、彼の北西航路をはじめとする数々の成功も、このあらゆる状況を想定した準備と、非情とも見えるような決断力・実行力故なのだと納得させられる。
 南極点初到達をめぐっての、国威をかけた競争では、スコット隊の悲劇もあり、アムンゼンが栄光だけでなく中傷や嫌がらせにも直面しなくてはならなかったのは知られたことだが、この本でもそれについて冷静に触れていると思う。イギリス人もほんとに子どもみたいな嫌がらせしてる。

そこまで周到なアムンゼンが、飛行船時代になって船長を兼務することが出来ずに、飛行船の雇われ船長イタリア人のノビレと若い頃に喝破したようなトラブルが起き、そのノビレを救助活動中に不慮の死を遂げた。そして、まさにそのさなかにアメリカのバードが機械化された最新装備の探検隊を率いて南極へ向かう。誰しもそこにくっきりとひかれた時代の区切りを見てしまうのではなかろうか。

 しかしこの本を読んで、そこに書かれた未開の土地や人(白人を見たことのないエスキモー)、装備の旧式に古い時代を感じても、何よりアムンゼンという巨人(やはり20世紀最大の探検家だと思う)と、人間の可能性への挑戦への感動には古いも新しいもない。

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