虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

発達障害なのかどうか気になるけれど、やっぱりちがうかなぁ~とも思う子を育てている方に

2011-08-22 15:27:00 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

ブログ以前の記事に次のようなコメントをいただきました。
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>服の裾やかばんの一部を口に入れたりしているときがあります。

こういった行動をするからと言って、
自閉症スペクトラムとは限らないとは思いますが、
次女が、スカートやかばん、水筒の紐などを
くわえている事がよくあるので、気になりました。

くるくる回ることはないですが、
常にぴょこぴょこジャンプしている感じです。

自閉症スペクトラムについて、お時間のある時に、
記事にして頂けると嬉しいです。
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自閉症スペクトラムについての記事を……とあるのですが、それは次の機会にさせていただいて
今回は「感覚の情報処理がうまくいかない」という状態についての話を書かせていただきますね。

「発達障害なのかどうか気になるけれど、やっぱりちがうなぁ~」

「もじもじして子ども集団に入っていこうとしないけど、親子で会話するときはしっかりしているし、
心配な子なんだか、心配いらない子なんだか……」

「発達障害の子ととても似ているところがある。でも、全然ちがうと思うところもある」

「乱暴ですぐに手が出るし、とっても不器用。でも子どもなんてこんなもんじゃないの?」

そんな風にはっきりした心配なところがあるわけじゃないけど、
何だか気になるところがちらほらある子っていますよね。

病院に診断に行くべきか迷うけど、行っても一笑に付されそうな気もする……という子。

親としてはあれこれ気になるんだけど、幼稚園の先生からは「心配ありませんよ」と言われて、

親の私が神経質すぎるのかなと反省……という子。

虹色教室でも、夏の日帰りレッスンなどには
こうした子どもの成長に気がかりを抱えた親御さんにたくさん出会います。


そうした悩みを抱えた親御さんのお子さんにもっともよく見られるのが、
「感覚の情報処理がうまくいかない」という状態のように思います。


親御さんの多くは、「自閉症スペクトラムかもしれない」「ADHDかもしれない」という
不安に直面したくないという思いや
「病院に行くほどでもない。他にもこんな子はたくさんいる」という思いから、
子どもの気になる姿を気にしつつも、何のアクションも起こさずにそのままになっているようです。

私がそうした親御さんの子どもに接していて気にかけているのは、

「自閉症スペクトラムやADHDと診断される子ほど困難は大きくないけれど、
軽い感覚の情報処理に問題を抱えていて自己コントロールが苦手な子が
幼児期にその問題に対する十分な対応をしなかったために、
後々、大きな問題に発展してしまうケースです。

本来は発達障害に属さないレベルの軽い苦手を抱えた子が、
幼児期に気になったさまざまなことを無視してしまったために、先々、
不器用さが原因で学習でつまずいたり、人と関わることが難しくなったりする」ことがあるのです。


『でこぼこした発達の子どもたち』(キャロル・ストック・クラノウィッツ すばる舎)
には、専門家に相談するときに使える「感覚統合発達チェックリスト」がついています。
とてもたくさんありますが、どのような内容か紹介するため、一部だけ引用します。

気になるところがたくさんあるという方は、ぜひ購入してチェックしてみてくださいね。


チェックリストの例

(触覚が非常に敏感な子によく見られる特徴)
●砂、指絵の具、ペースト、のり、泥、粘土などを使った遊びをいやがる。または、そのような遊びを考えるだけで泣きそうなる。
●痛みに過剰に反応し、小さなすり傷やトゲに対しても大騒ぎする。
●頑固、意地っ張り、融通がきかない、強情、言葉で強く主張したり、身体的に押しが強い、気難しい、といった
態度を示す。(実は苦手な触覚の刺激を避けようとしている)

(触覚が非常に鈍感な子によくみられる特徴)
●顔、特に口と鼻のまわりが汚れていることを感じない。顔に食べ物のカスがついていたり、鼻水がついていることに
気がつかない。
●物を落としたことに気がつかない。

(触覚の刺激を非常に求める子によくみられる特徴)
●身体や服が汚れるような遊びや行動を長時間やりたがる。靴下や上履きをすぐに脱ぐ。
●2歳以上になっても物を口に入れて調べる。
●他人に近寄って触ったり、相手が触られるのを嫌がっても気にしない。

(前庭感覚が非常に敏感な子によくみられる特徴)
●髪を洗ってもらうときなど、頭が逆さまになったり傾くのをいやがる。 乗り物酔いをする。

(前庭感覚の刺激を非常に求める子によくみられる特徴)
●速く動いたり回転する公園遊具や遊園地の絶叫マシーンなどが好き。

(固有感覚が非常に敏感な子にみられる特徴)
●強い刺激を筋肉に受ける体重負荷運動を避ける。(ジャンプ、片足とび、走る、這う、回転するなど)

(固有感覚が非常に鈍感な子にみられる特徴)
●力加減がわからず、おもちゃをすぐに壊す。


(固有感覚の刺激を非常に求める子にみられる特徴)
●覚醒水準を調整するために、頭を打ち付けたり、爪を噛んだり、指を吸ったり、
関節をポキッと鳴らす、などの自己刺激的な行為が行う。
●全体的に攻撃的。

(他にも非常にたくさんのさまざまな種類のチェックリストがあります。
「育てにくい」「しつけがうまくいかない」場合には
こうした原因があるかもしれません。気になる点がたくさんあるときは、
感覚統合の問題がないか専門家にかかることをお勧めします。感覚の問題は
必ずしも発達障害と直結しているわけではありません。
こうした問題にきちんと対処することで親子関係が
とても良好になることがよくあります。)

               (でこぼこした発達の子どもたち』(キャロル・ストック・クラノウィッツ すばる舎)より

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『でこぼこした発達の子どもたち』(キャロル・ストック・クラノウィッツ すばる舎)という著書の中に
感覚情報処理がうまくいかないと
どのような問題を伴うのかまとめてあります。

↓で紹介する特徴の多くは、
ADHDや自閉症スペクトラム障害をもっている子にもよく見られる特徴ですが、
そうした診断名がつくほどではないけれど、
よく似た気がかりを持っている子はけっこういます。
ハンディーがある子にもない子にも、
感覚情報処理という面から特徴を捉えて、それに対する働きかけを増やすと、
それまであったさまざまな問題が軽減することがよくあります。

子どもの発達で気になるところがいろいろあるときには
専門家に診てもらうことは大事ですが、専門家に診てもらうほどには問題が多くない
「気になる癖が多いな」レベルの子も、何も対処せずに終わってしまわず、
家庭でできる範囲ででも感覚の発達を促す遊びや活動をすることをお勧めします。



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<感覚統合障害によく伴う
覚醒水準、活動レベル、注意力、衝動性などの問題>

● 動き回る そわそわ イライラしがち 思いつきで遊んだり作業をしたりする 短期で興奮しやすい 椅子に座っていられない

●ボーッとしている 疲れやすい 自発性やねばり強さが弱い 興味が薄い 「あまりにも育てやすい」赤ちゃん

●好きなことをしていても注意を持続できない 整理が苦手 忘れっぽい

●分別なくエネルギッシュ 衝動的 順番を無視する おもちゃ箱をひっくり返す



また、感覚の情報処理の問題は、次のような他人との関わり方の問題を伴うこともあるようです。

●初対面の人に会って遊んだり、新しい食べ物をいやがる

●ある状況から別の状況に移るのをいやがる 日課の変更をいやがる

●分離不安 作業中にだれかが自分に近づくのを嫌がる

●簡単にあきらめる 完璧主義で期待通りに進まないと腹をたてる

●人と仲良くやっていくのは苦手 自分でルールを決めたがる まわりを支配する

●はっきり話す 文字をかくなどが苦手 自分の気持ちや要求をうまく表現できない

●変化、ストレス、感情が傷つくことに対して融通がきかない 

●他人に対する要求が多く、人が嫌がるような方法で自分に注意を向けたがる



          (『でこぼこした発達の子どもたち』(キャロル・ストック・クラノウィッツ すばる舎)
                           より   簡単に要約しています。


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働きかけ方については
また次の機会に記事にするつもりですが、
『でこぼこした発達の子どもたち』はとても読みやすく、
くわしい具体的なアプローチがたくさん載っている良書ですから、
ぜひ書店で手にとって読んでみてくださいね。


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5 コメント

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まさに… (ぱぐぱぐ)
2011-08-23 02:30:13
ウチもこの状態です。リストにチェックが入るわりにはやけにしっかりしている所があったり…。本当にでこぼこがあるという表現がぴったりだなと思います。
病院に連れていったらお母さんが神経質過ぎると言われてしまいそうだしとモヤモヤしています。

触覚が敏感なタイプで感覚遊びを拒否するので感覚統合の活動が難しいです。べちゃべちゃしていない素材を触ることは好きなので面白い感触のものがあればとっておくようにはしているのですが…

子どもはみんなべちゃべちゃなものが大好きというイメージがあったので正直、最初は息子の拒否っぷりにびっくりしました。

奈緒美先生の子どもの頃のお話はとても参考になります。外から見たら普通でも大きな困難を抱えてしんどい思いをしているのですね。息子が何に困っているのかをしっかり見てあげないとと思います。紹介していただいた本も早速図書館で予約しました。

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Unknown (つる)
2011-08-23 19:03:12
コメントを取り上げて下さって、
ありがとうございます。

そのとおりです。
年齢詐称してるんじゃないかと言われるくらい
しっかりしているところもあるのに、
気になる行動が多いので、
その気になるところに合致する事があると、
もしかして…と疑ってみたりしてしまいます。

今回、感覚の情報処理の問題について教えて頂いたので、
いろいろネットで見てみましたが、
そういう事だったのかと、納得できた感じです。

発達がでこぼこだったんですね。

どうやら次女は、
前庭感覚や固有感覚の刺激を非常に求める傾向に
あるようです。

長女の気になる部分も、対処してあげられそうです。

そして私自身は、触覚感覚が敏感なようです。
くすぐられるのは絶対ダメだし、
急に触れられたら飛び上がります。

子供が腕に抱きついてくるのも、
本当に嫌な気分になります。
(その分、今は大丈夫という時には、
私から、抱きしめるようにしていますが。)

紹介して頂いた本が、市内の図書館にはないようなので、
購入して手元に置きたいと思います。

ありがとうございました。


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Unknown (はちboo)
2011-08-23 20:31:01
ウチの息子も、2才ごろから幼稚園まですべてが敏感なタイプだったな~と改めて思いました。

今はあまり好きではないようですが、べちゃべちゃなものも、ほどほどなら遊べるようになったようです。

あの頃は記事に書かれているようにいろいろ自分で悩み考え、、、
もっと早くいろいろ行動を起こしていたらもっと楽しく一緒に遊べただろな~と。

まだまだいろいろ困難を抱えた息子ですが、今、こうやって懐かしいな~なんて思えることが、、少し私も成長したのかな?なんて思ったりした記事でした。

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Unknown (つる)
2011-08-26 16:56:21
昨日、本が届いたので、早速、読んでみました。
そういう事だったのか、といろいろな事が腑に落ちました。

長女は、触覚、聴覚、嗅覚が敏感、
次女は、触覚、前庭感覚、固有感覚の刺激を非常に求めるタイプのようです。
次女は、視力が悪くてメガネをかけていますが、
もしかすると、視覚もうまく情報処理できていないのかも…。

余談になりますが、昨日、読売新聞の1面に、
タイミングよくこの本の広告が載っていました。
その広告を見てみましたが、自分の子供に関係するとは思えず、
それを読んだだけでは、手にとってみようと思わなかったと思います。

こうして本を紹介して頂けたことを、本当に感謝しています。
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Unknown (ぽんき茶)
2012-04-24 13:02:42
先日、グループレッスンの始まる前に先生に相談しましたが、うちの子は、泣き叫びだすと、気が済むまで1時間でも2時間でも泣き通しです。もう少し言葉遊び等を意識して取り入れてみようと思います。
大きな声を出したりするのは感覚統合の問題だとの話しもありましたので、先生の記事を検索し、関連する記事を読んでみました。遊具を使った遊びなどは放っておいてもするのですが、砂場等は、私が山を作ったりトンネルを掘ったりするのを、所々手伝う程度です。もっと、砂場で遊ぶ機会を増やしたいなと思いました。これから外遊びが快適な季節ですので、沢山出掛けたいと思います。
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