虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

広汎性発達障がいの子 と お人形遊び (伸ばす ではなく 広げる) 1

2011-09-13 13:13:35 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

今日は、自閉症スペクトラムの子と工作 で2010年12月~2011年7月までの

レッスンの様子を記事にしている広汎性発達障がいの4歳半★くん

のレッスン日でした。幼稚園を一日お休みして通ってくれています。

ささいなことなのですが、上の文の「レッスンの様子」という言葉は、最初、「成長」という言葉にしていたものを

書きなおしたものです。

こうして、レッスンの記事を時間で整理して眺めると、「★くん、すごく成長したな~。あんなこともできるようになった。

こんなこともできるようになった」と感激するのです。

でも、どうして「成長」という言葉を避けて、書きなおしたのかというと、

「成長」とか「発達」といった目に見える成果にこだわりはじめると、

結果的には、むしろ子どもの育ちを妨害することにしかならないからです。

なら、わざわざ教室に通ってもらって何を目指しているのかというと、

「子どもの世界を広げる」ということ、つまり縦に上方に「伸ばす」のではなくて、

その子を中心に球形のボールが膨張していくようなイメージで、「広がる」ことを大事にしているのです。

 

ですから、「わがままが言えなかった子が自分の要求をはっきり出すようになる」とか、

「隣のおばあちゃんに声をかけられると微笑むようになった」とか、「散歩中、観察する動物や虫の数が増えた」とか、

能力アップとは無関係に思われるようなものも、「広がり」のひとつひとつとして

大切に育んでいるのです。

 

そうする中で、「あれっ?いつの間に?」という縦の上方向の伸びも確認できるのは

うれしいことです。でも、最初から、それを意識して子どもと関わり始めたり、子どもを観察し始めると、

大きく丸く成長しようとしている畑の野菜を、

いびつな型に押し込めて引き延ばそうとするような不毛な努力に終わってしまう気がするのです。

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お父さんとお母さんといっしょに虹色教室に来た★くんは、

プラズマプレイトというプラズマ光が指先にそって動く科学グッズと

お茶犬のドールハウスで、遊び始めました。

カミナリがピカピカ光っているとき、お人形がトイレに行くという設定で

ごっこ遊び(もどき)を始めました。

今日の★くんは、レッスン開始時から、私と目が合うたびに、

顔いっぱいに笑顔を浮かべて、今からすることが楽しみで

たまらないという様子でした。

よほど、前回会った時のユースホステルでの体験が

楽しかったようなのです。

これまで★くんは、一本調子の、ちょっと相手を責めるような口調で話をする癖がありました。

「何か嫌なことが起こりそうで怖いので、先に怒っておく」と言ったらいいような

防御が行き過ぎた身構えた物の言い方です。

それが、今日の★くんは、ちょっとおませな女の子がしなを作って笑顔を振りまくように、

小首をかしげた格好で、何ともいえないかわいらしい笑顔を、何度も何度も、私や両親に向けていました。

 

★くんは、トイレネタが大好きで、お母さんにも「便器を描いて!」とねだることが多いそうで、

お茶犬のドールハウスを取ってきたときも、

遊ぶ前から、人形たちをトイレに行かせる気満々、

私がいっしょにトイレ遊びで盛り上がってくれるだろうという期待でいっぱい……という様子でした。

 

前回までは、お茶犬ドールハウスといえば、

「トイレ、トイレ」と、あわただしくトイレにかけこむストーリーが

延々と続いていたのですが、

今回の★くんは、プラズマプレイトを持ってきてちょっとだけ新しい趣向を取り入れる気らしく、

「カミナリだよ。ひとりでトイレに行ったらねぇ、怖いかもしれないよぉ!」と

怪談話でもするような口調で遊びをスタートしました。

私がマイメロディーの人形をトイレに入れると、

「じゃぁ、ぼくは、階段のぼろう」と、先生だけトイレの話で遊んでてね……とでも言うように、

あんぱんまんやミニーちゃんの人形を2階に上げだしました。

そこで、私が、「私も2階に行きたいわ。上でいっしょに遊ぼ」と言うと、

「いいよ~」と調子がいい返事が返ってきました。

 

これまで★くんは、人形に会話をさせる形で遊びが続いたことはなかったのですが、

「でも、はしごがないから上に上がれない」と言うと、手のひらをエレベーターのようにして降ろしてきて、

「さっ、これに乗って!上に行かせてあげる」と言いました。

その後、はしごを取ってきてかけたり、上の階で遊ぶなどのストーリーが展開しました。

 

広汎性発達障がいの子たちとお人形遊びを楽しむようにしていると、

遊びの幅が広がることはもちろん、ソーシャルスキルを教えたり、

双方向の会話のより自然で豊かなものに変えたりするときも、とても伝えやすいツールになります。

ただ、シルバニアファミリーのお家やシンプルな木製のドールハウスは、

自閉症スペクトラムの子に、白い画用紙を与えたときのような不安を与えることが多いようです。

トイレ、台所、玄関、階段、お風呂……など、具体的な何をすればよいのかわかる

閉ざされた空間があるもので、ひとつは、子どもがこだわっている好きなものが含まれているように

すると、遊びがスタートしやすいように思います。

たとえば、子どもが玄関の靴箱を開け閉めするのが好きなら、

ドールハウスの玄関に、開け閉めできる靴箱(手作りOK)を置きます。

電気をつけたり消したりするのが好きなら、プッシュライトを天井に貼り付けます。

最初は、「もう夜だね。暗いから電気つけよ。パチ。」

「まぶしいまぶしい!電気消してー!電気消してー!パチ」の繰り返しで

遊びは、十分だと思います。

子どもは今の状態をしっかり受容していると、それを踏み台にして

自分から次のステップに進みます。

私のマイメロ人形をトイレに残して、自分の人形たちを2階に上げ出した★くんのように。

 


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