の記事の続きです。
この頃、☆くんは、家族や周囲との関わりの中で被害的な捉え方をしたり、
自虐的な言葉を吐いたり、
イライラしたりすることが増えてきたそうです。普段は大の仲良しの妹さんにも、
けんかになると、高圧的な接し方をするようになってきたそうです。
レッスン中、席を外してくださっている親御さんに、
『思春期のアスペルガー症候群』(佐々木正美 講談社)の本を
お貸ししていると、さっそく読んでくださって、
「最近の言動にぴったり当てはまることが多く、参考になりました。さっそく
本屋で探してみます」とおっしゃっていただきました。
高学年になった☆くんは知能面でも、社会性の面でも目覚ましい成長を遂げているだけに、
みんなと同じようにできない自分を意識して悩んだり、
過去に自分がしたことを恥じたり、
「かまってほしい、甘えたい」という家族への要求と、「そろそろしっかりしなくては。もうすぐ中学生」という自覚の間で、
葛藤を抱えて
イライラすることが多くなっているのです。
☆くんは、夕食後に虹色教室に来ています。
1年ほど前までは、レッスンは始まっても、食べた食事の内容やこちらに来るまでにある牛丼店やカレー屋の話、
休憩時間にしたいことや好きな歴史上の有名人の話などを
唐突に話しだすことがしょっちゅうありました。
そのたびに、「今、何している最中だったかな?」と問い、「あっ、そうだ!このページの問題を全部するんだった!」と
本当に忘れていた様子で、オーバーリアクションで返事が返ってきて、
その後しばらく勉強に集中し、少しすると再び、唐突に好きなおしゃべりをしはじめる……ということを
繰り返していました。
それが、最近では、勉強中に無駄話をすることは皆無に近くなりました。
一番、驚いているのは、相当難しい問題にぶつかって、以前なら、「わかりません~!わからないわからない!」と
大騒ぎして、パニックに陥りそうなときも、
落ち着き払った声で、「先生、この2番がよくわからないんです」と静かに告げ、「よく読んでもう一度考えてみてね」と言うと、
これは難しすぎるからヒントをあげなくては……と思いながら様子を見ている最中にも、
「あっ、そうか。こうすればいいんだ」と自分なりに解決法を見つけだして、
解いてしまうのです。
特に驚いたのは、数検問題の5級(小5~中1レベル)の問題で、(現在の級ではなく、過去の級分けのままの問題集で
学んでいます)の次のようなふたつの問題を自力で解いたことです。
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(国土面積と森林面積、人口の表を見ながら解く問題です。)
①イギリスの森林面積は国土面積の約何パーセントですか。小数第二位を四捨五入して答えなさい。
②日本とペルーは、国土面積と森林面積の割合がほとんど同じです。ペルーの森林面積はおよそ何万キロ平方メートルですか。千の位を四捨五入して求めなさい。
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(各国の芸術点の表を見ながら解く問題です)
フィギアスケートの得点の決め方は、最高得点と最低得点を除いた得点の平均で出します。
フィギアスケートの世界選手権大会で、日本のある選手の各国審判による芸術点は下の表のようでした。
この選手の得点は何点ですか。四捨五入して、小数第一位まで求めなさい。
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↑の問題はどちらも、何を問われているのか全体像を理解し、すべきことを段取りし、
「最高得点と最低得点を除いた……」なんてひとことにも
見落とさないよう注意して、しっかり計算して解いていかなければならない問題です。
☆くんは同様の問題をこれまで解いたことはありませんから、
類推する力を使って、初めての見るパターンを自分の力で打破しなくてはなりません。
それなのに、「あっそうか!」とわかるようになってきたことに、
こちらの方が驚いているのです。
☆くんと言えば、面積を教えるときに、「たてと横」がどれにあたるのか指をさしただけで、
「わからないわからない~!」と大騒ぎしていた子ですから。
推理力がたくさん必要な問題を、どんな筋道で考えていってるのだろう?」と
まるで狐にでもつままれたような心地で、☆くんの問題を解く様子を眺めているのです。
☆くん、学校でも勉強の面では心配はないようです。
今回のレッスンでは☆くんのお母さんから面白い報告がありました。
☆くんは作文が大の苦手だったのですが、手塚治虫の『火の鳥』というマンガにはまって
何度も読み返すうちに、文章を書くことへの抵抗がなくなってきたそうです。
何でも原稿用紙3,4枚をすらすら埋めてしまうようになったのだとか……。
どこか上から目線の文章で、「あんたは教授か?」と突っ込みを入れたくなる部分も多々あるそうですが、
なかなかおもしろくて、よく文章を練って書けているそうです。
思春期に突入しようとしている☆くんは、周囲との関係に悩みやぶつかり合いも増えてきているようですが、
同時に衝動性を抑えて責任を果たそうとする姿勢や、知的な好奇心の広がりや、これまで蓄積してきたこと
が成果として目で見えるようになってきている面があるんだな、と感じました。
☆くんのお母さんは、いつも☆くんの気持ちをしっかり受け止めて、愛情をいっぱい注ぎこむ一方で、
☆くんの可能性をあきらめず、無理をさせたり結果を求めることはせず、
自分に課せられている責任や義務を根気よく教えてきました。
そうしたお母さんや家族の愛情に支えられて、☆くんは自分の荒れる気持ちにのみ込まれそうになるときも、
何とかそれを鎮めて、素直に反省して、前向きに辛いことを乗り越えていこうとします。
思春期にどのような大変さが待っているのか、まだわからないけれど、
☆くんが、失敗したら反省しながら、ゆっくり前に進んでいくならば、
☆くんに関わる全ての人(私もです)が、☆くんとともに成長していくことができるのだろうと
明るい気持ちで思っています。
いいこと聞きました。
やっぱり「火の鳥」くらいの崇高なマンガでないとダメかな(笑)
子供と一緒に周囲も成長していくというその意識が大切ですよね。