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終わりよければすべてよし

2023-10-22 16:48:06 | うらけん

ソワレはこちらを観ました。

「尺には尺を」同様、まるでラース作品を見ているかのようにダメンズしか登場せず、「ヴェニスの商人」のポーシャみたいに頭がキレる女性が主人公で、面白いことにどちらも処女を、貞操を守ることを尊厳とした女性像が描かれている。

今では考えにくいと書いたら女性に失礼だとは思うが、シェークスピアの時代の独身女性は、処女か売春婦のどちらかしかいなかったんだろねって想像してしまう。

「尺には尺を」は脚本的にも面白いと思ったが、「終わりよければすべてよし」は、ぶっちゃけ、作風が似てたので「尺には尺を」の二番煎じ感が否めなかった。当たり前っちゃ当たり前なんだけど。

また、最後まで浦井バートラムが朋子ヘレネを毛嫌いする理由が全く分からなかったのが唯一の残念要素。

ヘレネ役って、実は、朋子さんじゃなくて那須佐代子さんが演じた方が姉さん女房風で嫌味感があってしっくりきたのかな?って思ってしまった。

朋子さんだと可愛さも相まって全然非の打ち所が見えてこないから、浦井バートラムにあそこまで嫌われる理由が全く見えてこない。ただただ不憫でならかった。


それ以外は、「尺には尺を」の二番煎じ感色が強いなー、そういうものかーと思ってしまったくらい。

だからかは分からないが、こちらは舞台演出にかなり動きが加わっていた。池、布、照明、客席降りなど。

こちらは、浦井氏と朋子姐さんがメインに話が展開し、「尺には尺を」では、浦井氏はそんなに出てこなかったし、朋子姐さんももっと出番が少なかっただけに、「終わりよければすべてよし」は2人ともメインなので本領発揮でしたね。

何と言っても、浦井バートラムのゲスぶりが、「尺には尺を」のクローディオよりも更に磨きがかかっていて、笑えるという意味ではなくめちゃくちゃ面白い役どころだった。

かつてのトロイラス役もゲスの部類に入るけど、まだ人間味があった。バートラムは完全に最低男だった。「尺には尺を」の岡本さん演じるアンジェロと同じ役割だった。

クローディオはまだジュリエットに一途な分愛すべきゲスぶりだったけど、こちらは完全に女たらしのゲス役だからね。だからヘレナになびかない理由が見えてこないんだけどね。

浦井氏の場合、主役をはる人だから良い役が回ってくるのは普通な分、悪役ではないが女たらしのゲス役なので見ていてめちゃくちゃ新鮮だった。悪役のマクベスも良かったが、ゲス役も意外とハマっていたのが驚きだった。

ヘレネを演じた朋子姐さんは、非の打ち所が全くなく、バートラムに一途なところも含め、フランス王を利用してバートラムと結婚するくらいの下心があってもいいやん!って言いたくなるくらい、浦井バートラムがゲス野郎にしか見えないくらい、同情の余地しかないヘレネ像に作り上げてました。

二幕目のヘレネなんて健気!ますますバートラムのゲスさが際立つ。そういう意味では面白い脚本。

人間だれしも下心はあるよ。

下心と一途さは全く別モノで、「尺には尺を」のアンジェロのように下心と裏切りとはもっともっと別物のわけやん。

じゃあ、ヘレネとアンジェロのどっちを応援しますか?ってことになるやん。

ヘレネに決まってるやん。

二幕目の朋子ヘレネこそマリア様だったよ。素晴らしかったです。


岡本さん演じるフランス王は、もうオチャメ。アンジェロ役と対照的な役どころだったね。

ソニンちゃん演じるダイアナは、バートラムに誘惑される役。マリア様みたいにめちゃくちゃ光輝いていて、そりゃ誘惑されてもおかしくないオーラを纏っていた。

「尺には尺を」ではチョイ役だった立川さんと那須さんの存在が大きく、特に立川さんの力がこもった台詞回しや魂を注入してる感があるくらい力説していて、ぶっちゃけお身体を心配してしまったほど。

「尺には尺を」では売春宿の女将?をパンク風に演じていた那須さんが、こちらでは貴族感溢れる気品さがあり、そのギャップが堪らなかった。「エンジェルス〜」の母親役もラビ役も出色だったが、那須さんの表現力と引き出しの多さに慄くばかり。

「尺には尺を」では、宮津侑生君演じるルーシオ役の道化っぷりが出色だったけど、こちらでは、ルーシオに相当する役のベーローレス役の
亀田佳明さんが出色だった。

ガチの道化師の風貌の吉村直さんもキュートで良かった。

最初に書いたように「尺には尺を」も「終わりよければすべてよし」もダメンズしか登場せず、男性は、ゲス、道化、ヘタレしか登場しない。代わりに、女性は、男性に蔑まれつも叡智に富んでいる。どちらもフェミニスト色が強い作品だった。

独身女性は操を守っていたり、本来結ばれてべき相手と一夜を過ごさせたり、最後は無理矢理
大団円感があったりと同じ設定なのも、2作並べてるからこそ見えてくる部分だった。

ヘンリーシリーズのように、同じタイトルの3部構成であったり2部構成の1日連続上演もかなり大変だったとは思うけど、違う作品の連続上演も本当に大変だと思いますが、初めての方もいらっしゃると思うし。

千秋楽に向かうにつれてもっともっと作品が熟成されているのが視えてくるので、お身体に気をつけて千秋楽まで頑張って下さい。


今後は、新国立劇場の鵜山組によるシェークスピアシリーズとして全37作を目指して欲しいです。

鵜山さんなら理解不能な「テンペスト」をどう演出するのか観てみたい。

それよりも、できれば、今の座組のまま「ハムレット」の上演を切望します!!


尺には尺を

2023-10-22 15:31:57 | うらけん
先ず初めに、

有楽町のマクドナルド様に感謝です。無事観劇でき、無事帰宅できました。本当に本当に感謝しかありません。

神様にも有楽町界隈を行き来されている方々にも感謝の気持ちでいっぱいです。

本当にありがとうございました!


ここから本題です。

さすが、シェークスピア大先生と新国立劇場鵜山組だけあるわ!

めちゃくちゃ面白かった!

まるで日本の時代劇「遠山の金さん」を見てる感覚があって、まさにあのお白洲シーンが白眉だった。「ヴェニスの商人」にもあったね。

言葉遊びはさておき、「ヴェニスの商人」よりもはるかにウィットに富んだどんでん返しと大団円と皮肉さ入り交じっており絶妙だった。

さすが問題劇だと言われてるだけあって、私みたいな庶民にはゴシップネタ的な問題だけど、ある程度の地位やステイタスをお持ちの方々にはなかなかの痛いとこを突く問題劇だったと思う。最後の最後までアイロニーたっぷりだった。

それくらい、まるで今の日本社会の状況を見通してチョイスされたのでは?と思うほど、日本社会を風刺する内容にもなっていて、めちゃくちゃタイムリーな内容で驚いた。

まさに今の日本やん!?と言いたくなるくらい、シェークスピア大先生が生きていた時代と何も変わってないことに更に驚きだった。

ラストのソニンちゃんの表情が全てを物語ってた。最高なアイロニーぶりだった。

ということで、新国立劇場に行ってきました。

本当はね、11月に観たかったんだけど、優先すべきことが11月に増えてしまい初日が開いて間もないホヤホヤの、マチソワ交互上演の初回を観てきました。

シェークスピア作品って、バレエと同じで頻繁に上演される演目が決まっている中、

新国立劇場は、ヘンリーシリーズしかり、世間では上演されにくい作品を積極的に上演して下さり感謝しかありません。戯曲も読んでない舞台も観たことない作品がまだまだあるからね。


「尺には尺を」って言いかえれば「目には目を」の意味になり、まさしくそういう展開のお話なのに、大団円の綺麗事で終わらないラスト、お前もか!?と言いたくなるとラストがマジ秀逸だった。

戯曲本を持ってないからラストは、戯曲通りなのか、鵜山さんの演出なのかは分からないですが、最後の最後までアイロニーたっぷりでマジ圧巻だった。

歴史は繰り返されるが、結局何も学んでないやん!?を象徴しているかのようだった。

私も人のことは言えない。実は、まだ舞台を観ていない時間帯に有楽町のマクドナルドで財布を落としてしまったからね。これで2回目の財布紛失。場所が特定出来たからよいものの、歩いている最中に落としていたらもう探しようがない。財布がないことに気付いたのは、マクドナルドを出て2時間以上経過していたからね。

店員さんが見つけてくれてなかったら本当に大惨事。なんてたって東京だよ。どうやって帰る?まだ携帯があるからなんとか高速バスか電車の予約が可能だけども、さすがに財布が見つかるまでは舞台を観る余裕もなかったよ。本当に、有楽町のマクドナルドさんに感謝です。

そんなことが、高速バスで東京に着いていきなり起こりました。

もうあの焦りは3度も味わいたくない。

私のことはさておき、

本当にめちゃくちゃ面白い脚本だった。

今回の鵜山演出というか、美術は、とってもシンプルなのに、ストーリー展開がわかりやすかったのもめちゃくちゃ良かった。

中ホールって、ホリゾントまで遠いのに前方の客席を潰したうえで舞台中央に壁を作り、贅沢な空間だった。

本作は、岡本さんとソニンちゃんが中心で、ソニンちゃんの演技だけだと悲劇的内容なのに、それ以外の登場人物がコメディーリリーフとして存在していて、その悲劇要素と喜劇要素のさじ加減やギャップが更に作品を深めていたし、また人間性の善悪がより浮き彫りされていたように感じた。

ソニンちゃんが本当にめちゃ出色だった!

浦井氏演じる兄が貫通罪?で死刑判決が下され、死刑放免してもらうためには、自分の処女を岡本さん演じる公爵代理に捧げなくてはならない。

兄への想い、女性としての尊厳、公爵代理への不信感などなど、私が財布を失くした時と同じように、死刑執行まで時間がない焦り、兄を助けたいがだからといって自分の貞操は失いたくない気持ち云々やらで心がかき乱されている。

そこだけじゃないが、ラストの公爵代理への赦免の表現も大変素晴らしかった。

岡本さんは、まるで「ヴェニスの商人」のシャイロックみたいな存在で、厳格さと下心といった男の理性と本能剥き出しの表現がでとても滑稽でまたチャーミングで良かった。「ベニスの商人」ほどの悲劇性は強くはなく、改心が裏テーマの役割を担っていた。

朋子さんなんて出番が少ないのに、めちゃくちゃ重要な役で、最後は泣かせる演技で白眉だった。

浦井氏もそんなに出番は多くないが、とんでも兄貴役で、死刑判決を一旦は受け入れるが、死にたくない気持ち、妹に犠牲になって欲しいと思っているちょっぴりゲスな役どころ。妹役のソニンちゃんが真剣であればあるほど兄貴の愚直さが滑稽で笑えてしまう。めちゃハマり過ぎ!藁

鵜山組の常連かつ大御所の勝部演之や立川三貴さんの存在も、お二人の存在だけで作品に厚みを出す役割を担っていて、本当に有り難い存在。

木下浩之さんの公爵が、遠山の金さんみないな役柄で、ラストのオチも最高だった。ツッコミ入れたかった。

本当に面白い作品でした。

めちゃオススメ!





「月」著者:辺見庸

2023-10-18 11:39:20 | 
そりゃ、りえちゃんも磯村君も出演を躊躇うわな。私が俳優だったら躊躇う。

やっぱり石井監督の脚本には優しさしかない、優しさが溢れているのが原作をよんで改めて気付かされた。

石井監督の脚本だけなら即決快諾したと思う。でも、原作を読んだら護身に走ってしまうかな。私なら。

それくらい辺見庸さんの言葉選びが挑発的かつ批判的で、ぶっちゃけ的を射てる。

まるでさとくんの言葉が辺見庸さんの言葉にしか聞こえない。あの植松被告の言葉とは思えないくらい、社会への批判色を強く感じた。

原作は障害者のきーちゃん目線で描かれており、きーちゃん目線でさと君を描写し、また、きーちゃんの片割れとなる分身となる人物を登場させることで、動けないきーちゃんに代わって、きーちゃんがいない所でのさと君を描写する役割を担わせている。

そして、原作には、りえちゃんとオダジョーさん夫婦も登場しなければ、ふみちゃんの役も原作に該当者はいない。

きーちゃんの片割れというコンセプトは、映画でも活かされりえちゃんが担うが、原作とは人物設定が異なる。原作の片割れは、殺人現場に登場してさとくんを止めようとする役割を担っているが、りえちゃんは現場にはいない。

映画では、施設の闇、登場人物の内面の葛藤や悩み、そして社会における自分の立ち位置を明確に描かれているが、原作は、さとくんの闇がメインで描かれている。きーちゃんは、身体障害者であって思考はとても頭脳明晰に描かれている。

また、障害者という動きや発言に重い障害があることを言葉で説明せず、文体で表現しているところが、文章芸術を感じた。漢字を使って欲しいところをひらがなで書いていてめちゃくちゃ読みにくい。

読者が頑張って脳内で漢字変換しないと文章を理解しにくいという手法を取っていて、実際に発語に障害がある方ってスムーズに喋られないからそれを文体で表現していると私は思った。実際は知らないけど。

映画は、原作の20%の要素を拝借して、石井監督のほぼオリジナルの脚本になっているけども、辺見庸さんが伝えたかったメッセージは、全部ではないが伝えていたと思う。

ここで書くのもなんだけど、映画「ロストケア」は原作の5%を拝借して、残りは、脚色のレベルを超えた完全なるオリジナル内容だった。関連性が薄すぎて読むのに3週間以上かかった。原作者へのリスペクト云々関係なく映画の方が断然良かった珍しいパターン。

はい、余談でした。

「月」は、原作は原作で、映画では伝えていない明確なメッセージも書かれているので、映画が原作の、原作が映画の欠けている部分を補完しあっているとは言えないが、映画には映画の良さがあり、原作は原作の良さがあった。

私個人的には映画の方が良かったけどね。

映画は、人間と命の尊厳だけでなく、現実社会の非道さに対して見ぬふりすることへの罪悪感も強く描かれていたけども、原作は、命の尊厳だけでなく、人間ってなんなんだよ!?という人間の存在理由自体を問題提起していたように感じた。辞書で書かれている人間の定義がその通りなら、それにそぐわない人もいるからね。

やはり、人間の存在理由も、人間を殺してはいけない理由と同じで、明確な答えを導くことができない。重いテーマだけど、大事なテーマ。


ということで、春画先生のお口直しに…m(__)m「月」の原作を読みましたが、ぶっちゃけ書くと、2日で読んでしまったけども、決して読みやすかったわけではない。もちろん文体表現の読みにくさもあったけども、それ以上に、最初の200ページは、ぶっちゃけ頭がこんがらがって理解出来ていない部分が多かった。

きーちゃんが頭脳明晰で哲学者みたいに描かれていて、私の脳では理解し難いものがあったし、登場人物が、障害者なのか健常者なのか、介護スタッフなのかそうでないのか、そもそも男性なのか女性なのかも分からなかったから余計頭が混乱した。

残りのページには、映画でも取り上げられている部分が多かったから読みやすかったけどね。

私個人的には、痛い描写があって、まるで私自身がさとくんの犯罪に加担しているのではないか、これからもそういう人物が登場するのではないかと思わせる描写があり、映画では描かれていない精神鑑定のシーンなんだけどね。映画でなぜさとくんがすぐに退院できた理由が、私には心が痛くなった。

私が加担した、というより悪用されたっていう感じ。全く関わりはないが、さとくんが一気に他人でなくなった感覚を味わった。

私も一歩間違えたらさとくんと同じだったことを、私自身に突きつけられているようだった。

そういう意味でも、石井監督の脚本は、私にたいしても優しさに溢れていた。全くの他人様ですが…。「愛にイナズマ」も絶対観ます!

原作を読むとなおさら、映画をオススメしたい。海外で賞を獲って欲しい。てか、獲れる作品です!







春画先生

2023-10-14 22:13:23 | 映画
追記:北香那ちゃん、ユリちゃんの「広島シャンゴ」に出てたんや!?自分のブログを読んで気付かされた(汗)完全に失念しておりましたm(__)m



安達祐実ちゃん、出てくるの遅すぎ!と思ってしまったくらい、

いったい私は何を観させられているのだろうか??と暗中模索状態だった。

まだ昨日の「月」の余韻が残る中観てしまったことに、チケットの取り方を失敗したと後悔するほどだった。「月」も本作も事前にネット購入していたが、まさかこんなに「月」が余韻たなびくとは思ってなかった…。

ということで、予告編を観たときに、春画を巡る愛憎コメディーものだと思って観たら全然ちがった。祐実ちゃんが登場してからは娯楽作品として楽しめたので、早く登場してほしかった。

祐実ちゃんは子役の頃から全然歳を取らないキュートさがあるのに、演技力や表現力はめちゃくちゃ素晴らしい。ユリちゃんのドラマでのバトルシーンが本当にリアルな感情をユリちゃんにぶつけていて、凄い女優さんだと思った。だから、早く祐実ちゃんに登場してもらって安心感が欲しかったのに…


てっきり、ウッチー演じる春画先生を巡って北香那ちゃんと安達祐実ちゃんのバトルが繰り広げられる内容なのかと思いきや、

香那ちゃんと柄本佑君が!!な見せ場と

香那ちゃんと祐実ちゃんが!!な見せ場と

香那ちゃんとウッチーが!!な見せ場が、

春画の世界観を遥かに超えてきた。

北香那ちゃんの最初の登場シーンでは、めちゃくちゃ清純なイメージしかなかったのに、春画との出会い、先生との出会いによって淫靡な世界に覚醒されていく様であったり、先生に対する狂気的な執着心であったり、先生の亡くなった前妻に対する嫉妬心の表現が、まるで道成寺の清姫が乗り移ったかのようで、清楚さとのギャップが凄まじかった。

香那ちゃんの、体当たりとは言いたくないが、役に対する覚悟と根性は称賛ものでした。新人賞を狙えるくらいのものはあった。

個人的には、まさかの柄本佑君演じる編集者とのシーンにドン引きしてしまって、いったい何を観させられているのか?なぜ平然と先生と編集者とドライブできるのか?香那ちゃん演じる弓子の心理状態が全く分からなくなって、早く祐実ちゃん出てきて!と思ったわけであります。

最初の10分ほどで、春画作品のディテールの細かさであったり奥深さの説明があって、ドラマと同時に春画の紹介があるのかと思いきや、それこそ浮世離れした恋愛関係を描いていたり、弓子の淫靡さと狂気さが際立ちすぎて、春画との直接的な関連性が全く見えてこなかったのが残念だった。ただの春画大好きとしか登場人物を描いていないように感じてならなかった。


ウッチー演じる春画先生は、由々しき肩書きがあろうとも、結局はただの変態。

柄本佑君演じる編集者も真面目そうではないが、チャラくもないが、男女相手問わず淫靡な世界の住民。

祐実ちゃん演じる春画先生の元嫁の双子の姉は、ラスボス的に登場し、結果的に弓子に新しい淫靡な世界へと導く。まるで春画先生が望むがごとく。

最後まで観たら、様々な愛の形を描いたミュージカル「アスペクツ・オブ・ラブ」みたいな内容です。良く書けば。

悪く書けば、金持ちの変態娯楽にしか感じなかった。

春画のどこに淫靡さがあって、浮世離れした恋愛関係になるのか私には全く理解できなかった。

あ、ちなみに、私は、淫靡とエロスは同じだとは解釈してません。


好きな相手がいて、他の男と寝るか!?それを繰り返すか??

その2人の目合いを音声で聞いて楽しいか?

男2対女1の3P楽しいか?

好きな相手ならなんでもできるんか?

女王様に目覚めて楽しいか?

奴隷になって楽しいか?

「月」のR15指定は納得できないが、この作品はR15で納得。

役者さんは本当に良く頑張って演じられていましたが、作品としては、メッセージ性がなくてイマイチだった。

春画といば、蛸と海女の絵。

小学生の頃に観た、緒形拳さん主演の「北斎漫画」で衝撃的だった海女と蛸の絡みのシーン。当時は、映画タイトルが分からずそのシーンの記憶しかなく、長い年月を経て再見することができた。

改めて絵を見た時は、やはりなんとも言い難い究極のエロスを感じたね。あの絵には最高級のエロスが棚引いている。映画は、小学生の頃は衝撃的シーンだったけど、大人になってから観たら、卑猥でしかなかった。蛸の中に人が入ってるんやろな〜的な着ぐるみ感に興ざめした。着眼点はいいんだけどね…。←何様や!?

絵には、見る者の想像力によって、実写では表現できないエロスが更に充満している。

海女と蛸の春画ではないが、「ニンフォマニアック」でも春画絵が登場してた。西洋ではどう解釈されているのか興味深いところ。

春画って、江戸時代の、写真がない時代のエロ本としての意味合いが強いのかな?と思ったけど、西洋絵画にも裸体を描写した作品は多いが、目合い描写は見たことないから、そういう意味でも、日本の春画は究極のエロス作品だと思った。

春画作品を見て感じるのは、接続部のディテールがあまにもリアルなのに、男性の局部が異常に大きかったりと、そんな人いるん?と思うくらいデフォルメされている。

映画では女性の爪先のことを言及されていましたが、私は、男女の絡みでお尻の位置や向きがあまにも不自然すぎて、それが身体の曲線美に繋がっていると思った。

浮世絵画の大作も数多くありながら、対照的に存在する春画の数々。浮世絵という遠近法のない平べったい描写で平べったい顔族の男女のくんずほぐれつを生々しく描いている様は、元々日本は、性に対して欧米よりはるかに寛容だったことがわかる。

なのに明治維新後から、男は男らしく、女は女らしくといった多様性の微塵も感じないしきたりを押し付けられて、ホンマ迷惑極まりない。

かといって、性に寛容すぎるのも問題があると思うが…。

ぶっちゃけ書くと、映画にはR指定があるのに、美術作品にはR指定がない矛盾に納得いかないんだけどね。その判断基準が知りたい。

以前はR18だった作品が、今ではR15になっていたり、成人映画と区別すればいいだけのことじゃないの?って思った。っていうか、そもそも成人映画って何?っていう疑問があるが。

映画はAVじゃないなら、芸術作品として解釈すべきだと思う。

女優さんのヌードシーンが多い寺山修司映画作品なんて、意味不明な内容だけどアート作品にしか思えない。

人間は、ルールに縛られると、裏でコソコソルール違反したくなるからある程度は緩和すべきだと思う。

っていうか、性に対して発言することに羞恥心ありすぎ。どうやって子供作るねん!そんなに恥ずかしことか!って言いたくなる。

大人が子供たちに何が芸術で、何が芸術じゃないのかちゃんと教えられるようにならないと、いつまでもたっても性犯罪は減らないよ。って私は思うけどね。

何が芸術で、何が芸術でないかは、やはり作者の意図を聞くべし。

ということで、つまらない作品と書いてしまったら、演者さんの努力が報われないので、頑張って膨らませて書きました。

いつものごとく、理解不能で下手な文章だけど…(汗)

まだまだ「月」の余韻に浸りたいので、文庫本を買ったので読んでいきます。





2023-10-14 00:51:00 | 映画
「福田村事件」がPG12指定で、こっちがR15指定なのか意味が分からん。

訂正:「月」もPG12指定でした。m(__)m何を見てR15だと勘違いしたのだろうか…?

残虐描写は圧倒的に「福田村〜」の方がエグいのに。

えっ?自慰?シーンでR指定受けてるっていうん?

オイオイオイオイ、

生々しい殺害シーンより、たった数秒の性描写の方が子供たちに悪影響を与えるって言うのか?

私に言わせれば、たとえアニメであっても残虐描写が多い「鬼滅の刃」の方がR指定もんだよ!

判断基準おかしくないか???


ということで、タイトルの「月」。りえちゃんが主演。テーマは長澤まさみさんと松山ケンイチ君主演の「ロストケア」と同じ障害者大量殺人。ちなみに「ロストケア」は高齢者の大量殺人で、原作は事件より前に刊行されているが。

そして、監督が太賀君主演の「生きちゃった」の石井裕也監督。

これは、もう観ないわけにはいかんだろ!ということで観てきました。

ぶっちゃけ書いて申し訳ないですが、最初に書いたように「福田村事件」と比較してしまった。

「福田村〜」は、単館系であっても連日超満員。同じ社会性があり、現実に起きた大事件でもあり、社会的にも大問題になった題材を取り上げている「月」だって超満員になってもおかしくないくらい普遍的なテーマ、人間の尊厳を描かれているのに、上映館数が少なすぎじゃないかい?

これまたぶっちゃけ書きます。

「福田村事件」ほど衝撃はなかった。「ロストケア」ほど感情移入することもなかった。「怪物」みたいに、すぐにもう一回観たいとも思わなかった。

でも、数年後にもう一回観たい作品。

なぜなら、自分の価値観を確かめたいから。

「ロストケア」みたいに、私自身を投影させるくらい感動することはなかったけど、海外で評価して欲しいくらい、メッセージ性に普遍性がある。

誰もが直視しないといけない人間の尊厳と命の尊厳。

私には子供がいないが、もし子供がいてその子が、

「どうして人を殺したらいけないの?」

と聞いてきたら、なんて答えますか?

ゴキブリや蚊やハエは平気で殺すのに、人間を殺してはいけないのはなぜ?

と聞かれたらなんて答えますか?

人間は、牛や豚や鶏、魚…を殺して食べてるのに、どうして人間を殺してはいけないの?

「日本国憲法で基本的人権によって守られているからだよ」

と子供に言って納得すると思う?理解してくれると思う?

久能整くんに言わせれば、人を殺してはいけない法律はない。ただ、人を殺したら刑法で罰せられる。

だが、正義の名の下で戦争で人を殺しても罰せられない。

むしろ、それってどういうこと?ってなるよね?

これは、生きる理由は何?という問いとは全然違うんだよ。

人間は動物と違って知能があるから殺したら駄目なんだよ、と言って子供が納得しますか?

それなら、かつて世界中で大問題になり、ドキュメンタリー映画の題材になった日本のイルカ漁と同じだよね?

当時は、クジラ漁よりめちゃくちゃ批判されたやん?

知能があるから殺したら駄目なら、知能がない人間、映画で言うところの、心がない人間なら殺してもいいの?ってことになるよね?

もうこれは、答えが見つからない永遠のイタチごっこ。

要は、子供にどうやって命の尊厳を納得できるように説明できるか?ってことですよ。

人間の尊厳、命の尊厳は、自分自分の深層心理をめちゃくちゃ問われる大事な大事なテーマ。

誰もがじっくり考えないといけない大事なテーマ。

答えが見つからなくても、学校で、生徒同士で、家庭内でもじっくり話し合わないといけない大事なテーマなんだよ。どんな授業よりも大事なテーマなんだよ。

事件が起こったあとじゃ遅すぎるんだよ。

ミスチルの♪Hero♪の歌詞にあるように、映像の世界でも当たり前のように、現実の社会でも、ましては戦争でも当たり前のように大多数の人間が殺されていく。

ぶっちゃけね、私も10代の頃は、親父に「さっさと死ね!」と何度も何度も言ってたよ。嫌いな人間、イジメてくる奴らも、さっさと死ね!と願ってたよ。少なくとも、私自身がさっさと死にたかったかよ。この理不尽さが永遠に続くんだったら死んだ方がマシだった。

両親の前で手首を切ろうとした時があって、オカンが真剣に止めにきた時に、嘘でも自殺はやめようと思った。親の反応を試そうと思ったのは事実だけど、誰も止めに来なかったら、間違いなく切ってた。ま、親父は止めようとはしなかったけどね。それが更に親父に対する恨みを募らせることになったけどね。死ぬ気もないのに真似ごとするな!って言われてるみたいだったから。

そこからは、オカンが亡くなるまでは本当に親父とは疎遠だった。入院したときも一度も見舞いに行かなかったし。

まさか、オカンが先に亡くなって、自分が親父の面倒をみるなんて全く思ってもなかったし、身体が弱く認知症が進んできた親父を家でみることが出来なかったから、なんども病院を転院した。やっと長期で療養出来る病院に転院出来たときは本当にホッとした。

だから、私も介護拒否というネグレクト虐待をしているのとなんら変わらないし。自分でも最低な人間だと自覚してる。

もし、親父が病院で虐待されていても文句を言う資格はないと思っていた。

有り難いことに、どの病院でもよくしてもらったので感謝しかない。

入院する前は、お酒を飲むと豹変して暴力を振るう親父だったのに、認知症がすすむにつれて可愛らしい無邪気な男の子みたいになっていたことが本当にビックリした。建前かもしれないけど看護師さん達の人気者だった。私自身、不思議なことに、育てたこともない自分の子供と関わっている感覚だった。

そんな中、一回だけ親父と一緒に死のうと思ったことがあった。生活が苦しくなるくらい困窮した時があって、兄貴に迷惑をかけられないから親父と一緒に車のまま川に飛び込もうかと脳裏をよぎったことがあった。

ちょうど後部座席で親父がヨーグルトを無邪気に美味しそうに頬張っている姿を見た時に、初めて育ての親の気持ちが分かった、気がした。この親父をちゃんと守らないと!と。

不思議なことに、悪いことは続かなかった。もちろん、良いことも続かないが…。死なずに済んだ。

若い頃は、さっさと死んでくれ!と願い出たくらい、親父に対して恨みまくっていたのに、親父を生かそうとしている自分の変化に自分自身が一番驚いた。

親父が亡くなるまでの約3年間は本当に学びと感謝しかなかった。

親父の存在を許すことが出来てからは、人生がめちゃくちゃ生きやすくなった。

それまでは、いっぱいいっぱい嘘をついてきた人生だったから。世の中をナメて生きていたから、人間関係もいっぱいトラブルを起こしてきた。もちろん親父だけでなく兄貴とも仲が悪かったし。他人様なんてなおさら。

親父から生きることの意味をたくさん教わった。認知症じゃなかったらたくさん聞きたいことがあったのに…。

そこからの本題。

なぜ人を殺したらいけないのか?

今の私が言えることは、自然死だったら心からご冥福を祈ることができるが、殺されたら、たとえ自死であっても、誰か必ず心に深い傷を負う人物が現れるから殺してはいけない、と。

無念とは一生付き合っていかないといけない苦しみ。愛情が深ければ深いほど、傷も同じくらい深く切り刻まれてしまう。悲しみだけじゃなく怒りも。残された人間も報われないんだよ。

その人たちの傷をどうやって治すの?必ずしも時間が経てば解決する問題ではない。心の闇は、ふとしたきっかけで蘇ってくる。

謝って済む問題じゃない。お金で解決する問題でもない。セラピーを受けたら治る問題でもない。

その残された人たちから、亡くなった人の命だけでなく、一緒に育んでいく未来の時間と喜びの時間を奪ったんだよ。命と時間は失ったら二度と戻ってこないんだよ。

生きていても未来は暗い?

と思ってるのはあなただけ。どうして未来は暗いと決めつける?未来のことは誰も分からない。自分の価値観と他人の価値観は同じじゃないんだよ。

って言うかもね。

この作品には、奪われた時間だけでなく、映画は2時間で終わりだけどこれから育んでいくであろう未来時間も見える内容だったので、

R15の縛りは不必要だと思う。直接的グロいシーンは一切ない。石井監督の優しさしかない見えてこない。

そうそう、石井監督の、尾野真千子さん主演の「茜色に焼かれる」を配信で観たが、やはり私が女優でも惚れてまう監督の優しさを感じた。ダークな内容かと思いきや、結構ほのぼのシーンも多く良い作品だった。

昔の映画は、たとえ映像の世界といえども、子役に対しても虐待ととれるシーンがたくさんあった。今ならコンプライアンスで訴えられるシーンが多々あった。例:「鬼畜」

それに比べたら、俳優の演技の素晴らしさしか伝わってこない見せ方になってる。

物語の背景や内容がR指定だと思わない。R指定をもらうくらい俳優陣の演技がリアルだった証拠だと思ってる。

むしろ、この作品を観て命について語り合うべきだと思う。自分自身についてもっともっと内観すべきだと思う。自分の中にいる醜い悪魔の存在に気づくべきだと思う。



りえちゃん、ホンマええ仕事選んだ!石井監督もよくぞりえちゃんをキャスティングした!私なら女優賞あげたい!文句なく素晴らしかった!

オダジョーさんがめちゃくちゃ癒やされる。「湯を沸かすほどの熱い愛」のリベンジのような、りえちゃんとの夫婦役がめちゃくちゃ和ませる。ふと「血と骨」のチンピラ役がフラッシュバックされたけど、全然癒やされる役だった。

テーブルで向き合って、小さなこと(決して小さなことではないが)を喜びあえる2人のシーンが最高に良かった!

りえちゃんもオダジョーさんも過去1の最高の表情だった。

磯村勇斗君もホンマ天才!完全なるサイコパスではなく、環境によって崩壊された人格を丁寧に演じていて、人間の本当の怖さは、外見ではなく内面にあることを伝える説得力がありました。

二階堂ふみちゃんも、ちょうど予告で「翔んで埼玉」が流れたあとだったから、育ちはお嬢さま風だけど内面の脆さをふみちゃんも丁寧に演じていて素晴らしかった。

個人的には、板谷由夏さんが出られていて、たまたま今期のドラマ「ブラック・ファミリア」を観ていたのでめちゃくちゃ嬉しかった。ブラックシリーズ第三弾、3話以降も楽しみ!

それから、高畑淳子さん。チョイ役だけど大事な存在。

未来のことは誰もわからない。生まれてくる子供が健常者か障害者かも分からない。

私に言わせれば、健常者だって障害者だよ。性格が悪い人間、心が汚い人間は、心の障害者だと思うよ。

皆、皆、某の障害者なんだから、お互い労り合わないとね。戦争してる場合じゃないよ。

向き合わないといけない現実。目をそらしたくなる現実。苦しい時は、逃げることも大事。でも、現実と向き合うことも大事。というか、いつか必ず向き合わないといけない日がくる。

喜びも悲しみも分かち合える相手がいるだけで十分幸せだと思うんだよ。

りえちゃんとオダジョーさん演じる夫婦は理想の夫婦像だと思う。

人生、山あり谷あり。困難も1人じゃ難しくて乗り越えられなくても、2人なら出来ることもある。


できれば、世界の賞レースで女優賞、男優賞を獲って欲しい。もちろん作品賞も監督賞も脚色賞も!