訂正:「月」もPG12指定でした。m(__)m何を見てR15だと勘違いしたのだろうか…?
残虐描写は圧倒的に「福田村〜」の方がエグいのに。
えっ?自慰?シーンでR指定受けてるっていうん?
オイオイオイオイ、
生々しい殺害シーンより、たった数秒の性描写の方が子供たちに悪影響を与えるって言うのか?
私に言わせれば、たとえアニメであっても残虐描写が多い「鬼滅の刃」の方がR指定もんだよ!
判断基準おかしくないか???
ということで、タイトルの「月」。りえちゃんが主演。テーマは長澤まさみさんと松山ケンイチ君主演の「ロストケア」と同じ障害者大量殺人。ちなみに「ロストケア」は高齢者の大量殺人で、原作は事件より前に刊行されているが。
そして、監督が太賀君主演の「生きちゃった」の石井裕也監督。
これは、もう観ないわけにはいかんだろ!ということで観てきました。
ぶっちゃけ書いて申し訳ないですが、最初に書いたように「福田村事件」と比較してしまった。
「福田村〜」は、単館系であっても連日超満員。同じ社会性があり、現実に起きた大事件でもあり、社会的にも大問題になった題材を取り上げている「月」だって超満員になってもおかしくないくらい普遍的なテーマ、人間の尊厳を描かれているのに、上映館数が少なすぎじゃないかい?
これまたぶっちゃけ書きます。
「福田村事件」ほど衝撃はなかった。「ロストケア」ほど感情移入することもなかった。「怪物」みたいに、すぐにもう一回観たいとも思わなかった。
でも、数年後にもう一回観たい作品。
なぜなら、自分の価値観を確かめたいから。
「ロストケア」みたいに、私自身を投影させるくらい感動することはなかったけど、海外で評価して欲しいくらい、メッセージ性に普遍性がある。
誰もが直視しないといけない人間の尊厳と命の尊厳。
私には子供がいないが、もし子供がいてその子が、
「どうして人を殺したらいけないの?」
と聞いてきたら、なんて答えますか?
ゴキブリや蚊やハエは平気で殺すのに、人間を殺してはいけないのはなぜ?
と聞かれたらなんて答えますか?
人間は、牛や豚や鶏、魚…を殺して食べてるのに、どうして人間を殺してはいけないの?
「日本国憲法で基本的人権によって守られているからだよ」
と子供に言って納得すると思う?理解してくれると思う?
久能整くんに言わせれば、人を殺してはいけない法律はない。ただ、人を殺したら刑法で罰せられる。
だが、正義の名の下で戦争で人を殺しても罰せられない。
むしろ、それってどういうこと?ってなるよね?
これは、生きる理由は何?という問いとは全然違うんだよ。
人間は動物と違って知能があるから殺したら駄目なんだよ、と言って子供が納得しますか?
それなら、かつて世界中で大問題になり、ドキュメンタリー映画の題材になった日本のイルカ漁と同じだよね?
当時は、クジラ漁よりめちゃくちゃ批判されたやん?
知能があるから殺したら駄目なら、知能がない人間、映画で言うところの、心がない人間なら殺してもいいの?ってことになるよね?
もうこれは、答えが見つからない永遠のイタチごっこ。
要は、子供にどうやって命の尊厳を納得できるように説明できるか?ってことですよ。
人間の尊厳、命の尊厳は、自分自分の深層心理をめちゃくちゃ問われる大事な大事なテーマ。
誰もがじっくり考えないといけない大事なテーマ。
答えが見つからなくても、学校で、生徒同士で、家庭内でもじっくり話し合わないといけない大事なテーマなんだよ。どんな授業よりも大事なテーマなんだよ。
事件が起こったあとじゃ遅すぎるんだよ。
ミスチルの♪Hero♪の歌詞にあるように、映像の世界でも当たり前のように、現実の社会でも、ましては戦争でも当たり前のように大多数の人間が殺されていく。
ぶっちゃけね、私も10代の頃は、親父に「さっさと死ね!」と何度も何度も言ってたよ。嫌いな人間、イジメてくる奴らも、さっさと死ね!と願ってたよ。少なくとも、私自身がさっさと死にたかったかよ。この理不尽さが永遠に続くんだったら死んだ方がマシだった。
両親の前で手首を切ろうとした時があって、オカンが真剣に止めにきた時に、嘘でも自殺はやめようと思った。親の反応を試そうと思ったのは事実だけど、誰も止めに来なかったら、間違いなく切ってた。ま、親父は止めようとはしなかったけどね。それが更に親父に対する恨みを募らせることになったけどね。死ぬ気もないのに真似ごとするな!って言われてるみたいだったから。
そこからは、オカンが亡くなるまでは本当に親父とは疎遠だった。入院したときも一度も見舞いに行かなかったし。
まさか、オカンが先に亡くなって、自分が親父の面倒をみるなんて全く思ってもなかったし、身体が弱く認知症が進んできた親父を家でみることが出来なかったから、なんども病院を転院した。やっと長期で療養出来る病院に転院出来たときは本当にホッとした。
だから、私も介護拒否というネグレクト虐待をしているのとなんら変わらないし。自分でも最低な人間だと自覚してる。
もし、親父が病院で虐待されていても文句を言う資格はないと思っていた。
有り難いことに、どの病院でもよくしてもらったので感謝しかない。
入院する前は、お酒を飲むと豹変して暴力を振るう親父だったのに、認知症がすすむにつれて可愛らしい無邪気な男の子みたいになっていたことが本当にビックリした。建前かもしれないけど看護師さん達の人気者だった。私自身、不思議なことに、育てたこともない自分の子供と関わっている感覚だった。
そんな中、一回だけ親父と一緒に死のうと思ったことがあった。生活が苦しくなるくらい困窮した時があって、兄貴に迷惑をかけられないから親父と一緒に車のまま川に飛び込もうかと脳裏をよぎったことがあった。
ちょうど後部座席で親父がヨーグルトを無邪気に美味しそうに頬張っている姿を見た時に、初めて育ての親の気持ちが分かった、気がした。この親父をちゃんと守らないと!と。
不思議なことに、悪いことは続かなかった。もちろん、良いことも続かないが…。死なずに済んだ。
若い頃は、さっさと死んでくれ!と願い出たくらい、親父に対して恨みまくっていたのに、親父を生かそうとしている自分の変化に自分自身が一番驚いた。
親父が亡くなるまでの約3年間は本当に学びと感謝しかなかった。
親父の存在を許すことが出来てからは、人生がめちゃくちゃ生きやすくなった。
それまでは、いっぱいいっぱい嘘をついてきた人生だったから。世の中をナメて生きていたから、人間関係もいっぱいトラブルを起こしてきた。もちろん親父だけでなく兄貴とも仲が悪かったし。他人様なんてなおさら。
親父から生きることの意味をたくさん教わった。認知症じゃなかったらたくさん聞きたいことがあったのに…。
そこからの本題。
なぜ人を殺したらいけないのか?
今の私が言えることは、自然死だったら心からご冥福を祈ることができるが、殺されたら、たとえ自死であっても、誰か必ず心に深い傷を負う人物が現れるから殺してはいけない、と。
無念とは一生付き合っていかないといけない苦しみ。愛情が深ければ深いほど、傷も同じくらい深く切り刻まれてしまう。悲しみだけじゃなく怒りも。残された人間も報われないんだよ。
その人たちの傷をどうやって治すの?必ずしも時間が経てば解決する問題ではない。心の闇は、ふとしたきっかけで蘇ってくる。
謝って済む問題じゃない。お金で解決する問題でもない。セラピーを受けたら治る問題でもない。
その残された人たちから、亡くなった人の命だけでなく、一緒に育んでいく未来の時間と喜びの時間を奪ったんだよ。命と時間は失ったら二度と戻ってこないんだよ。
生きていても未来は暗い?
と思ってるのはあなただけ。どうして未来は暗いと決めつける?未来のことは誰も分からない。自分の価値観と他人の価値観は同じじゃないんだよ。
って言うかもね。
この作品には、奪われた時間だけでなく、映画は2時間で終わりだけどこれから育んでいくであろう未来時間も見える内容だったので、
R15の縛りは不必要だと思う。直接的グロいシーンは一切ない。石井監督の優しさしかない見えてこない。
そうそう、石井監督の、尾野真千子さん主演の「茜色に焼かれる」を配信で観たが、やはり私が女優でも惚れてまう監督の優しさを感じた。ダークな内容かと思いきや、結構ほのぼのシーンも多く良い作品だった。
昔の映画は、たとえ映像の世界といえども、子役に対しても虐待ととれるシーンがたくさんあった。今ならコンプライアンスで訴えられるシーンが多々あった。例:「鬼畜」
それに比べたら、俳優の演技の素晴らしさしか伝わってこない見せ方になってる。
物語の背景や内容がR指定だと思わない。R指定をもらうくらい俳優陣の演技がリアルだった証拠だと思ってる。
むしろ、この作品を観て命について語り合うべきだと思う。自分自身についてもっともっと内観すべきだと思う。自分の中にいる醜い悪魔の存在に気づくべきだと思う。
りえちゃん、ホンマええ仕事選んだ!石井監督もよくぞりえちゃんをキャスティングした!私なら女優賞あげたい!文句なく素晴らしかった!
オダジョーさんがめちゃくちゃ癒やされる。「湯を沸かすほどの熱い愛」のリベンジのような、りえちゃんとの夫婦役がめちゃくちゃ和ませる。ふと「血と骨」のチンピラ役がフラッシュバックされたけど、全然癒やされる役だった。
テーブルで向き合って、小さなこと(決して小さなことではないが)を喜びあえる2人のシーンが最高に良かった!
りえちゃんもオダジョーさんも過去1の最高の表情だった。
磯村勇斗君もホンマ天才!完全なるサイコパスではなく、環境によって崩壊された人格を丁寧に演じていて、人間の本当の怖さは、外見ではなく内面にあることを伝える説得力がありました。
二階堂ふみちゃんも、ちょうど予告で「翔んで埼玉」が流れたあとだったから、育ちはお嬢さま風だけど内面の脆さをふみちゃんも丁寧に演じていて素晴らしかった。
個人的には、板谷由夏さんが出られていて、たまたま今期のドラマ「ブラック・ファミリア」を観ていたのでめちゃくちゃ嬉しかった。ブラックシリーズ第三弾、3話以降も楽しみ!
それから、高畑淳子さん。チョイ役だけど大事な存在。
未来のことは誰もわからない。生まれてくる子供が健常者か障害者かも分からない。
私に言わせれば、健常者だって障害者だよ。性格が悪い人間、心が汚い人間は、心の障害者だと思うよ。
皆、皆、某の障害者なんだから、お互い労り合わないとね。戦争してる場合じゃないよ。
向き合わないといけない現実。目をそらしたくなる現実。苦しい時は、逃げることも大事。でも、現実と向き合うことも大事。というか、いつか必ず向き合わないといけない日がくる。
喜びも悲しみも分かち合える相手がいるだけで十分幸せだと思うんだよ。
りえちゃんとオダジョーさん演じる夫婦は理想の夫婦像だと思う。
人生、山あり谷あり。困難も1人じゃ難しくて乗り越えられなくても、2人なら出来ることもある。
できれば、世界の賞レースで女優賞、男優賞を獲って欲しい。もちろん作品賞も監督賞も脚色賞も!