なんてお粗末な脚本なんだ!と思って観ていたが、ラスト10分ウルウルしまくってもうた…。
ということで、8月に心斎橋でラース作品を観た時に、ポスターや予告でめちゃくちゃ気になっていたが1週間限定上映ということで結局観ることができず、他の映画館では上映されていなかったため完全に諦め&失念すること約2ヶ月間、たまたま上映検索した時に引っかかり、しかもこれまた1週間限定上映だったのでここぞとばかりに観てきました。はい、1900円払って。
ひき逃げで亡くなったゲイの幽霊くんとノンケ警官くん(異性愛の男性)との冥婚(結婚)という、とんでもシチュエーションに惹かれ、どんなスピ作品なのか!?(←スピ作品と決めつけていた)どんなコメディー作品なのか?(←コメディーだと思い込んでいた)、本国台湾で大ヒットということて期待値があがっていたら、
そしたらとんでも脚本だったので、1900円は高い!と思っていたけど、最終的には悪くはなかった。
ゲイの幽霊くんとノンケ警官くんとの超あり得ない結婚。完全なる異性愛者(同性愛差別主義?者)と同性愛者(現実では見えない幽霊)がどんな恋愛に発展するのかも興味深かったし、
日本作品ではまずあり得ない、同性愛の結婚が普通の社会で、むしろ差別する方が蔑視されている社会で、同性愛差別者のノンケ警官がどんな学びを得るか?も興味深かったし、
そもそも、勝手にコメディー作品だと思っていたから、本国台湾で大ヒットと謳うならどれだけ笑わせてもらえるのか、期待度しかなかった。
結局のところ、B級クライムサスペンス風ヒューマンドラマだった。約130分のうち約120分は、ぶっちゃけツッコミどころ満載のクライム(アクション)サスペンス風な展開だった。
カーチェイスなんて、リアルなのかCGなのか分からないくらいなかなかの見どころではあったが、麻薬売買組織の犯人探しと幽霊くんをひき逃げした犯人探しが同時進行になっていて、実は2つの犯罪には共通の犯人が関わっているという設定であったり、警察の中に犯人に情報を流しているまさに「インファナル・アフェア」的な展開であったり、スパイがまさかの人物で、ドラマでよくある後々になってバックグラウンドが分かる設定であったり、そんなありきたりな設定は全然良しとしても、
幽霊くんがこの2つの犯罪の犯人探しに協力しているにも関わらず、人物に憑依したり、壁を通り抜けたりと、幽霊おなじみの設定があるにもか関わらず、肝心なところで間違えた情報を伝えたり、憑依したら証拠品をすぐに手に入れられるのに時間がかかったり、犯人やスパイもすぐに捕まえられるのに二転三転して、警官くんの足を引っ張る存在でしかなかったのが全くもって理解不能だった。幽霊設定である必要性を全く感じなかった。
幽霊くんがちゃんと自分の役割を果たしていたら2時間が1時間で終わるような展開だったのに、あの手この手と長々と見せて雑な脚本やな!としか思えなかった。
このクライムサスペンスシチュエーションにおいて、幽霊くんと警官くんが恋愛に発展することもないし、かと言って笑えるシーンもなく、本当にとんでもB級設定だった。
台詞や状況によるコメディー作品ではなく、クライムサスペンス設定自体がつまらないコメディーでしかなかった。
なんてたって、たとえ同性であっても冥婚しなかったら災難しか起こらない設定になっているのに、かといって冥婚したら良いことが起こるはずたと思いきや、警官くんにとっては悪いことしか起こらない…。
設定がよく分からん!意図が分からん!
1900円はマジ高い!!
と思って観ていたけども!
親子の確執とか同性愛の偏見も同時進行で見せているので、ラスト10分が完全なるヒューマンドラマになっていて、それまでのサスペンス要素が蛇足でしかなかっただけに、その反動でヒューマンドラマ要素でウルウルしまくってしまった。
親子の確執とは、幽霊くんは亡くなる直前、彼氏と結婚したいことをお父さんに伝えるが、勇気を奮ってお父さんに伝えたにも関わらず、大反対されてめちゃくちゃショックを受けてしまう。彼氏に何度も何度も電話しても繋がらず、メッセージ動画を撮っている時に車に惹かれて亡くなってしまう。
お父さんも、警官くんと同様、同性愛差別主義者なのだ、
と見せかけておいて、実はそうじゃなかった理由がウルウルポイントでした。
警官くんが九死に一生を得て命が助かった時、幽霊くんのお父さんが御見舞に来る。
お父さんは命懸けで轢き逃げ犯を見つけてくれたことを感謝しに来たのだ。
幽霊くんがお父さんに聞きたかったことを警官くんを通じて尋ねるわけだけど、本来なら警官くんに憑依して尋ねることも可能だったのにそれをしなかったこと、
警官くんは、お父さんから、亡くなった息子に対する真実の想いを聞いて幽霊くんの気持ちを慮り、幽霊くんはずっと黙っていたままだったから、幽霊くんがお父さんに伝えたかったであろう想いを伝えるシーンでまたウルウルさせられる。
今までの警官くんは、幽霊くんを轢いた犯人を早く見つけて、さっさと成仏してもらいたくて仕方なかった。ノンケだから、男性との冥婚なんて認めたくなかったし、同性愛に対してずっと偏見があったし、犯人を見つけて手柄を立てることしか考えていない超自己中だった。
そんな中、警官くんは犯人逮捕間近で撃たれて瀕死状態。救急車で運ばれるも交通渋滞でなかなか前に進むことができない。そこで、幽霊くんが渋滞してる車の運転手に憑依して道を開けていく。
幽霊くんのお蔭で九死に一生を得る。
その警官くんが、幽霊くんが自分のために渋滞の車を動かして道を開けてくれたこと、命を助けてくれたことをニュースで知り、人に優しくすることが出来るようになる。
それが、幽霊くんの気持ちを代弁したり、幽霊くんのお父さんに優しい言葉をかけたり、彼は優しさを学ぶ。
お父さんはお父さんで、まさか息子がその日に亡くなるなんて思ってもみなかったから本心(真実)を伝えることができなくてずっとずっと後悔していた。
お父さんはお父さんで轢き逃げ犯を見つけようとしていた。会いたくない人物にも土下座しようとしていた。お父さんなりに息子に許しを請おうとせめて轢き逃げ犯を見つけだそうと奮闘していた。
幽霊くんは、幽霊くんで、本当は好きになってはいけなかった相手と盲目的に結婚したい思いにかられていたことに気付き、お父さんの優しさを知って言葉を失う。
お父さんが警官くんに、「息子は君と結婚したら幸せになれたのに」という一言でまたウルウル。
たった10分の中にもう泣く要素しかなかった。
この10分の中にメッセージが集約されている。
死んでしまったら、伝えたいことも聞きたいことも叶わなくなる。
特に人間関係で悩んでいる人は、親子関係とか兄弟関係って一番重要だと私は思ってる。親子関係に溝があってその埋め方が分からないのに、他人との溝が上手く埋められるとは私は思わない。
自分を愛せないのに、どうして他人を愛する術が分かるの?愛される人間になれるの?自分のことも分かってないのに。
それって正直、その人個人だけに問題があるとは思わない。私は、人間が最も強い絆で結ばれていなければならないのは他人ではなくて親子関係だと思ってる。
子供が最初に目の当たりにする社会って家庭環境だから。学校や幼稚園じゃない。
人間は、生まれ持って完璧な存在じゃないから、家族や第三者、学業、失敗経験などから学習し成長できる生物のはず。
死んでしまったら何も学べなくなってしまう。
知りたかったこと、伝えたかったこと、なにもかも出来ないままになってしまう。
だから1日1日は貴重で、一分一秒も貴重。
生きてさえいれば、いくらでもやり直せるのが人生。
ちゃんと成仏できる人生を歩むことが、人間として生まれたお役目だと思う。
というメッセージがラスト10分から伝わってきた。もちろん、脚本家や監督の意図と異なっている可能性はあるけどね。
1900円は高いと思ってしまったが、
今日観た映画館が初めて来た塚口サンサン劇場で、うん十年前に、阪急塚口駅近辺には毎週通ってたくらい馴染みの場所だった。塚口駅は友人と泣きながら喧嘩した思い出の場所。だが、塚口サンサン劇場は一度も行ったことがなかった。古き昭和の映画館で怪しい雰囲気があったから。
だから今も、昭和の映画館のままなんだろうな〜と思ったら、
いやいやいやいや、劇場は最新技術搭載されただったことに驚いた。
外観は昭和の香りしかないのに!
なかなか気にいった。しかも塚口駅近辺は、安い食事処がまだまだ健在だったのが嬉しかった。
塚口からJR立花駅まで約1時間歩いたら、駅前の商店街がめちゃくちゃよい雰囲気だった。
商店街って、おばちゃんやお年寄りが通う場所だと思っていたら、通勤帰りの若いサラリーマンや学生が買い物している風景を見てそこの商店街の雰囲気の良さが伝わってきた。
しかも、おじいちゃんが店主の豆腐屋さんがあって、背中が曲がっても尚頑張っている姿に感動して、ついつい豆腐を3丁も買ってしまった。
昔神戸で一人暮らししていた時、近くに同じように商店街があって、店主のおばあちゃんが作っている豆腐をよく買いに行ってたことを思い出して胸熱になってしまった。
1900円の映画代よりもっと大切なものを頂戴した感覚だった。
令和の時代になっても守らないといけない景色があることを教えられた。