愛にイナズマ

2023-10-27 21:36:57 | 映画
あれっ?コレ、ケラさんとコラボしてました?

って言いたくなるくらい、主人公が置かれている状況や社会が「眠くなっちゃった」と同じでビックリした。

それから、まさかの北村有起哉さんが登場した時には、昨日の今日だけに

これって、いつもの…、

お導きやん!?

と思ってしまった。

(笑)

いやー、

めちゃくちゃ泣けた!めちゃくちゃ良かった!

私、石井監督の脚本好き!←なんの告白や!

(笑)

「月」と同じ脚本監督作と同じとは思えないくらい、どちらかというと「茜色に焼かれる」に近いテイストはあったが、それでも、コミックテイストが強い可笑しみとストレートなメッセージ性に完全ノックアウトされてしまった。

「月」のパンフレットを読んだ時に、ドストエフスキーという単語が出てきたていたので、石井監督もドストエフスキーが好きなのかな?と思っていましたが、

本作を観終えたあと、これは、間違いなく石井監督のカラマーゾフの兄弟だと思った。もちろん、状況設定もカラマーゾフの悲劇性とは異なるが、三人兄妹と父親との関係性や、母親がいない設定、兄弟の中に聖職者がいる、三人兄弟と父親の関係性に他人?部外者?関係者?が強く関わっている様は、カラマーゾフの兄弟と同じだと思った。たまたまだとは思うが、石井監督の無意識下にはカラマーゾフの兄弟が影響されていたことは間違いないと思った。

いや、とてもたまたまだとは思えないな、聖職者がいたからな…。

社会の綺麗事、上司の理不尽な命令に逆らえない状況、他者を相容れない人間性、本音が言えない社会、嘘で固められた社会、反社…に対する果たし状ともとれる内容だったし、何より愛に溢れた作品であったこと、

本作は、個人だけでなく家族愛にスポットを当てた脚本にもなっていて、泣ける要素しかない。

一見相容れない父親と兄と妹間の関係性の中に、なんだかんだ言って親子なんだよな〜的なエピソードが盛り込まれていて上手い見せ方だった。

前半で、主人公があれほど助監督から理由がないことを責められまくり、そりゃ世の中には理由がない出来事があったりするよ!と訴えているのかと思いきや、後半では、逆に理由を責める立場になっていて、どっちが本心なんだ?と思わせておいて、

言葉ではなく映像で理由を表現している様に、石井監督のこだわりを感じた。

なんで、花子は赤色が好きなのか?池松君演じるお兄ちゃんは青い車に乗っているのか?など観客に疑問符を投げかけておいて、あとで理由を回収する様とか、

物事にはちゃんと理由はあるんだよ!言葉で表現すると陳腐になるんだよ!お前らに一言一句納得させる言葉なんてないんだよ!空気読めよ!って言ってるオメェらだってちゃんと空気を読んでくれよ!

っていうメッセージがビンビン伝わってくるようだった。

泣ける要素だけでなく、可笑しみのある要素もいっぱい散りばめられていて、改めて石井監督の優しさや愛しか伝わってこない作品でした。


ということで、「月」に関係なく、松岡茉優ちゃんと窪田正孝君のやり取りが魅力的だった予告を見た時から絶対観る!と決めていたので、早速初日に観てきました。

前半の、茉優ちゃんと窪田君の、理不尽な社会に押し潰されていく様や閉塞感が、ある出来事を機に爆発し、本音で生きる人生を選択する様にめちゃくちゃ泣けた。

茉優ちゃん演じる花子の閉塞感からの開放ぶりはお見事でした。自分の家族の前では変貌すり様など、茉優ちゃんの表現力にめちゃくちゃカタルシスを味わった。

窪田君演じる正夫の始終変わらないオットリ感。花子に出会いイナズマが落ちる様。まるで花子の守護天使のように佇んでいる様。政府支給マスクをつけている様だとか、めちゃくちゃ癒やされる存在だった。

花子と正男の似た者同士なのかそうじゃないのか分からないやり取りや間を含め、キャラ設定がめちゃくちゃ良い。

後半の花子の家族ターンになってからは、佐藤浩市さん演じるお父さん、池松壮亮君と若葉竜也君演じる花の兄たちが、めちゃくちゃ良い味を出していて、ラストに向けて涙エピソードが倍増する。

佐藤浩市さんが、当たり前っちゃ当たり前なんだけど、お父様にそっくり過ぎて、三國連太郎さんを見てるかのようだった。

社会悪の象徴的な役を、MEGUMIさんと三浦貴大君が演じていて、めちゃくちゃリアルだった。

まさかの実の親子共演の中野英雄さんと太賀君には驚いた!中野パパはまるで息子愛を代弁するかのような台詞を貰っていて、さぞかし中野パパは大喜びだったことでしょう。ま、残念なことに、2人の絡みはなかったけどね。

太賀君の役は、出番は少ないが、花子と正夫に大きなうねりをもたらす重要な人物で、社会の犠牲者の代表的存在を真面目に演じていた。

趣里ちゃんや高良健吾君のチョイ役での登場で良い味を出してた。

出演者が豪華で最後まで見飽きることなく観させてもらいました。

本当にめちゃくちゃ良かった!

まじオススメします!

ケムリ研究室「眠くなっちゃった」

2023-10-27 17:06:27 | 舞台
いやいやいやいや、

ラスト、めちゃくちゃ余韻棚引くゥ〜

最初のほうでタイトル回収されていたから完全に油断してたわ!

いやいやいやいやいやいやいやいや、

ケラさん、どないしたんですか!?と聞きたくなるくらい。

めちゃくちゃ良かった!!

ワタクシ、ケラ作品を全て観劇したわけではないので偉そうには書けないのですが、それでも偉そうに書きますが、

ケラ作品の特徴として女性同士の友情であったり、姉妹愛がテーマの作品が多いと思うんよね。

今回は、マジでラブストーリーだったので、ラストシーンが、思い返すと胸を締め付けられるような余韻にずっと引きずられてしまう。

まるで、松尾スズキさん脚本演出の大人計画の舞台「ゴーゴーボーイズ、ゴーゴーヘブン」を観終えた時と同じ切なさがあり、

ちゃんとは見たことないフランス映画「天井棧敷の人々」や、これはちゃんと見たフェリーニの「道」やタルコフスキー作品のような白黒映画時代独特のノスタルジックな雰囲気もあり、あ、白塗り表現は、寺山修司さんの劇団天井棧敷の雰囲気もあり、

ケラさん、

めちゃくちゃええやんかいさー!!!

確かに、前回の「砂の女」も一種のラブストーリーではあったけど、

今回マジ、近未来設定の演出で脚本に関して油断してました…、

本当にピュアなラブストーリーでした。

ぶっちゃけ、設定やストーリー展開が良く分かってなかったんよね。

顔が白塗りで、たまきさんや水野美紀姐さん、音尾琢真さん、野間口徹さんや篠井英介さん、そして犬山イヌコさんは声や容姿が特徴的なのですぐ見分けがつくけど、それ以外の方が、めちゃくちゃ上手いねんけど誰が演じているのか分からず、誰?誰?状態で観ていたので、

ストーリーがややこしくて頭が追い付いていかなかった分、役者の演技やプロジェクトマッピングの演出に気が取られてしまってた。

1幕目から置いてけぼり感はあったが、2幕目も想像しえない展開とワケワカメ状態でもうっすら見えてくる、たまきさん演じるノーラと北村有起哉さん演じるリュリュの関係性が、まさかのラストで心臓に矢を射ぬかれた感覚に陥りました。


ラストまで観ないと分からないケラさんの脚本演出の良さ。今作は、それくらいめちゃくちゃ手の込んだ脚本と演出プランだったと思いました。

ケラ作品って、いつもラストが予測できないんよね。ハッピーエンディングなのかパッドエンディングなのか、どっちとも言えないニュートラルエンディング?アンビバレントエンディングなのか…。

ウディ・アレンみたいにトンデモエンディングだったりすることもあるからね。

今作は、完全にアンビバレントエンディングでした。最近、アンビバレントという単語を知ったんだけどね。藁

切なさと喜びが背中合わせでせめぎ合ってる感覚。あ、アンビバレントとは切なさと喜びの意味ではないです。ま、皆さんの方がご存知だとは重いますが…。

この作品に関しては、ケラさんが、松尾スズキさん同様こんなピュアで切ないラブストーリーを書いてくれたことが一番の感動。

ケラ版「ロミオとジュリエット」「ウエスト・サイド・ストーリー」と言っても過言じゃないね。

観るまでは、タイトルが「眠くなっちゃった」だったから「はい、どうぞご自由におやすみ下さい!」と言いたくなるようなコメディー作品かと思っていたのに、まさかの内容や展開、タイトル回収の仕方がマジ秀逸でした。

近未来設定だけども、決して2023年視点の近未来ではなく、それこそ、キューブリックの「2001年宇宙の旅」が公開された年、1960年代や1970年、はたまた、それよりもずっとずっと前の、それこそフェリーニが活躍していた時代の人たちが思い描くような近未来設定に感じました。ノスタルジックな郷愁を感じる近未来。銀河鉄道999の雰囲気もあったな。


今ならAIが人間を支配する未来を想像しえるけど、うん十年前ならロボットだもんね。

かといって、郷愁しかない近未来ではなく、今現在を揶揄するような、見えない誰かに社会が牛耳られている今の世の中であったり、貧富の差などの格差社会や差別社会であったり、高齢者や若年者の認知症症状である、記憶の欠如やコミュニケーションがスムーズに図れない関係性であったり、コロナ禍によって当たり前のことが当たり前でなくなった日常をも描いていたように感じました。

そんな不条理な世の中でも、もっとも大切なものをメッセージとして描いていたと思います。

本当に良かったです!


ということで、ケラさんとたまきさんご夫婦のユニット「ケムリ研究室」第三弾作品を兵芸(私は芸文とは書きませんので悪しからず)初日に観てきました。

ナイロン100℃作品自体御無沙汰だったので、ケムリ研究室作品というより、まるでナイロン100℃作品を観ているような豪華なキャスティングでした。

作品の内容自体がケラさんらしからぬテーマというか、初めて感じたことだらけだったので、

プロジェクトマッピングを使った演出は他の作品でも効果的に使用されていますが、

たまきさんが主演の異色ラブストーリーであることがこの「ケムリ研究室」のコンセプトかな?と思いました。ま、第一弾作品「ベイジルタウンの女神」は未見なので断言はできませんが…。

訂正:そういえば、「グッド・バイ」も異色ラブストーリーだったの忘れてました!m(__)m

それにしても、ケラさんもたまきさんも攻めてくるね!

「砂の女」もかなり攻めていたけど、たまきさんの表現力がまさに、今の私が演じたい役はこれだ!を思う存分演じられていて、今回もたまきさんの覚悟を感じました。本当に素晴らしかったです!

あ、今更ですが、読売演劇大賞おめでとうございます!素晴らしいスピーチでした!

罪深い過去を背負い、夢を見ることが怖くて眠られない娼婦の主人公ノーラ。壊れかけているロボットの夫とのささやかな戯れに幸せを感じて生きていたのに、差別社会の渦に飲まれて餌食になっていく。北村有起哉さん演じるリュリュとの出会いによってささやかな夢を抱くが…。

もう、切なすぎる!でも素晴らしかった!

やはり、同じケラ作品でも主演と端役では演じ方が明らかに異なってくるし、そもそも自分たちのユニットの作品だから、誰にも束縛されない自由さがあるね。

今回、たまきさんの相手役が北村有起哉さんが務められていて、見た目をいじられていましたが、今まで私が見た有起哉さんの演技の中でもっとも地味でもっともピュアな役でした。キャラが濃い役のイメージが強かったから、今回の役は予想を裏切る良い役でしたね。

今作は、主役2人を除いてほとんどの演者さんが何役もされていて、演じ分けがお見事でした。完全なるキャラ変の方がおられたり、声のトーンは変わらず衣装でキャラ変されたり、役者さんの表現力に釘付けでした。

一番心を奪われたのは、自殺願望の女性役の松永玲子さんとその相手役の山内圭哉さん。最初誰が演じているのかわからなかったし、誰が演じているのか知りたかったので、休憩時間にパンフレット買ってしまいました。独特のダーク感が堪らない!

特に山内圭哉さんは更に何役も演じられていて、完全にキャラ変していたのでめちゃくちゃ良かった!それに間が良いので、何度も笑わせてもらいました。

この作品、ダークファンタジーもので、重い表現だけだと観ていて苦しくなってくる。山内さんの間は一種の清涼剤的に和みを与えてくれるので、集中して観続けることができた。

水野美紀姐さんの、ドラマほど狂気さはないが、それなりに狂気さがある役だった。サーカスの団長役も兼ねた音尾琢真さん山西惇さんにしか見えなかった。

いまではすっかりドラマには欠かせない存在の野間口徹さん、女役も演じられた篠井英介さん、ドラマでも大活躍の奈緒さん、各々に見せ場がありケラさんの愛を感じる役柄でもありましたね。

サーカスの道化師役のマイムの方々も本領発揮で、サーカスというより、見世物小屋風の雰囲気がり、後半の毒毒しさを際立てる存在でもありましたね。

他のキャストさんも本当に素晴らしかったです。

今回のケラさんのマッピングは更に凝った演出になっていて、さぞかしオペレーターの方々や大道具の方々は大変だったことでしょう。お蔭で全く見飽きることがなかった。

「祈りと怪物」のギッチョダも聞けて、個人的には大満足な作品でした。


休憩入れなくても3時間超えの大作ではありますが、演者さんもスタッフさんもお身体に気を付けて大千秋楽まで頑張って下さい!