寒さが徐々に平年通りに戻ってきて朝の起床が夏時間から30分ほど遅くなってきたようにおもう。それでもまだまだ真冬ではない。ベッドを出て庭に出る清々しさを…と思ったら今朝は久しぶりに雨。いつものように近所を散歩することは中止。そして杖をついて何かの病気のリハビリをしている人の散歩も中止だろう。午前9時を過ぎて子供達の登校がなくなると決まって我が家の前を杖をつきながら歩く一人の男性のことが急に思い出された。少し気にはなるけれど声をかけたことはない。ゆっくり歩を進めるその人の歩くペースを崩したくないからだ。
以前、別の人なのだが散歩中に声をかけてハッとした経験があった。その老婦人は僕が聞いてもしないのに、一生懸命に杖をつく理由を説明し始めたのだ。脳梗塞を患っただの、家に面倒を見てくれる人がいないだのと、何か弁解しなければならない理由があるかのように話し出したのだ。僕としては「周りに気をつけてくださいね」という気持ちで挨拶をしただけだったのに。
杖と言えば、ほとんど誰でも思いつく諺は「転ばぬ先の杖」ではないだろうか。しくじらないように前もって十分に用意しておくこと、という意味あいの諺だが、考えてみるとその使い方は時と場合によってなんとなく押し付けがましく注意を喚起するような上から目線の雰囲気がある言葉だと感じるようにもなった。経験からの学びとは「転ばないための杖」、その時以来、もう一歩先を考えて杖をつく人への気配りとは「ゆっくり歩くことで他人の迷惑に」などと考えないで自分のペースで歩いてくださいね、という温かい目で追うのが一番良いと思うようになってきた。