比良望む白砂青松(雄松崎)F8
花林檎
穏やかな二人の余生桜餅 惟之
子規の句碑と出会ふ石部や梅の花
竜の舞ふ花の夜景や二条城
高瀬川に散りて咲きゐる花筏
母の背の疎開の記憶花林檎
誌上句会 兼題「新茶」
特選
足るを知ることの幸せ新茶汲む 三枝子
絣着てもてなす新茶清水港 珠子
新茶古茶味の分からぬ術後かな 泰山
新茶の香缶に小さく知覧の名 一耕
生かされて喉越し香る新茶かな 三郎
秀逸
定年で知るやゆるりと新茶の香 謙治
走り茶や朝一番の仏間の香 光央
指先に濃き灰汁染めて新茶摘む 秀子
鉄瓶の湯音しやんしやん新茶汲む 敏子
久闊の友より新茶届きけり 信義
一人居の少しくぬるき新茶汲む 鈴子
茶農家の友のうんちく新茶の香 利里子
染抜きの新茶の法被行き交へり 美代子
入選
新茶摘む一芯二葉のやはらかさ 正道
大原の名刹に寄り新茶買ふ 博女
古茶新茶汲み話題はいつも妣のこと 洋子
一滴を大切にして新茶汲む 静風
注ぎ分くる新茶の香り部屋に満つ まこと
新茶汲み地酒提げゐて宇治漫歩 惟之
山寺のいらか眩しや新茶の香 幹雄
ペットボトルのラベルは新茶会議中 和花
時満ちて家族総出の新茶摘み 藤子
新茶汲む出石の白の宝瓶に 畔
鮮やかに籠いつぱいの新茶摘む ふみ女
新茶汲む胡瓜あえにもなる茶殻 秀輔
新茶の香俳人でありし父の部屋 稔
想い出の南部鉄瓶新茶汲む 靖子
こつそりと和菓子と新茶愉しかり 悦子
風炉点前茶碗にゆらぐ新茶の香 紀久子
一煎の甘さふくよか新茶かな 洋子
走り茶や亡き友の娘と親しめる 啓子
新茶汲む常に変わらぬ話して 博光
やまびこ(六月号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句
三陸の一両電車春の海 三治
ゆるやかに喪心をほぐす木の芽雨 鈴枝
成人の日の稜線のさやかなる 紫魚
涅槃西風心の隅の灯を点し 爽見
小雪舞ふ午後の窓辺のミルクティー 久子
手の内を皆見せあへり大焚火 布美子
この思ひ誰にも伝へん春の月 爽恵
吾の余生充電中と日向ぼこ 泰山
春めくや引く型紙に座る猫 光江
また一つ齢重ねて雛の日 靖子
俳誌嵯峨野 八月号(通巻649号)より