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水彩画と俳句の世界

自然を愛し、感性を大切にして「水彩画と俳句の世界」を楽しんでいます。

花林檎(八月の詩)

2025年07月30日 15時45分49秒 | 春の俳句

                          比良望む白砂青松(雄松崎)F8

     花林檎

穏やかな二人の余生桜餅  惟之

子規の句碑と出会ふ石部や梅の花

竜の舞ふ花の夜景や二条城

高瀬川に散りて咲きゐる花筏

母の背の疎開の記憶花林檎

  誌上句会 兼題「新茶」

特選

足るを知ることの幸せ新茶汲む  三枝子

絣着てもてなす新茶清水港  珠子

新茶古茶味の分からぬ術後かな  泰山

新茶の香缶に小さく知覧の名  一耕

生かされて喉越し香る新茶かな  三郎

秀逸

定年で知るやゆるりと新茶の香  謙治

走り茶や朝一番の仏間の香  光央

指先に濃き灰汁染めて新茶摘む  秀子

鉄瓶の湯音しやんしやん新茶汲む  敏子

久闊の友より新茶届きけり  信義

一人居の少しくぬるき新茶汲む  鈴子

茶農家の友のうんちく新茶の香  利里子

染抜きの新茶の法被行き交へり  美代子

入選

新茶摘む一芯二葉のやはらかさ  正道

大原の名刹に寄り新茶買ふ  博女

古茶新茶汲み話題はいつも妣のこと  洋子

一滴を大切にして新茶汲む  静風

注ぎ分くる新茶の香り部屋に満つ  まこと

新茶汲み地酒提げゐて宇治漫歩  惟之

山寺のいらか眩しや新茶の香  幹雄

ペットボトルのラベルは新茶会議中  和花

時満ちて家族総出の新茶摘み  藤子

新茶汲む出石の白の宝瓶に  畔

鮮やかに籠いつぱいの新茶摘む  ふみ女

新茶汲む胡瓜あえにもなる茶殻  秀輔

新茶の香俳人でありし父の部屋  稔

想い出の南部鉄瓶新茶汲む  靖子

こつそりと和菓子と新茶愉しかり  悦子

風炉点前茶碗にゆらぐ新茶の香  紀久子

一煎の甘さふくよか新茶かな  洋子

走り茶や亡き友の娘と親しめる  啓子

新茶汲む常に変わらぬ話して  博光

    やまびこ(六月号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句

三陸の一両電車春の海  三治

ゆるやかに喪心をほぐす木の芽雨  鈴枝

成人の日の稜線のさやかなる  紫魚

涅槃西風心の隅の灯を点し  爽見

小雪舞ふ午後の窓辺のミルクティー  久子

手の内を皆見せあへり大焚火  布美子

この思ひ誰にも伝へん春の月  爽恵

吾の余生充電中と日向ぼこ  泰山

春めくや引く型紙に座る猫  光江

また一つ齢重ねて雛の日  靖子

   俳誌嵯峨野 八月号(通巻649号)より

 

 

 

 

     

 

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七月の詩(蛍烏賊)

2025年07月01日 08時45分59秒 | 春の俳句

           風薫る豊後富士  F8 水彩

     蛍烏賊

二群れはひとつと成りぬ鳥曇  惟之

春一番腕立て伏せを二度三度

天神に賑はふ野点梅ふふむ

助六の凧たかだかと里の川

蛍烏賊問屋ととやで酌みながら

    誌上句会 兼題「春惜しむ」

特選

春惜しむ壺の底糸くくり切る  三枝子

しりとりの後部座席や春惜しむ  光央

丁寧にたたむ便箋春惜しむ  柴山ふみ女

春惜しむ茶葉ゆつくりと開きけり  康平

秀逸

惜春や波打ち際に貝の殻  洋子

春惜しむ空の碧さの日日に濃く  和花

窓いつぱい開け放たりて春惜しむ  秀子

異動てふ別れを重ね春惜しむ  稔

なかくらに日を重ね春惜しみけり  悦子

惜春や脊山の上の雲二つ  信義

道化師のパントマイムや春惜しむ  一耕

寺の鐘殷殷となり春惜しむ  紀久子

草橇を子らと競ひて春惜しむ  歌蓮

哲学の道に佇み春惜しむ  美代子

入選

碁仇に手薬煉引いて春惜しむ  正道

春と友惜しむ喪葉書老いの夜  謙治

降りやまぬ雨の朝や春惜しむ  謙治

台詞無き壬生狂言や春惜しむ  惟之

ままならぬ整理整頓春惜しむ  珠子

春惜しむ波のひとつが還らざり  畔

陽を浴びて歩く喜び春惜しむ  幹雄

寄する波返す波音春惜しむ  利里子

志賀の路自然豊かや春惜しむ  静風

白雲の大志いづこぞ春惜しむ  泰山

人気無き渚の調べ春惜しむ  靖子

廃坑の島と向き合い春惜しむ  藤子

ひすいかずら一花ぽとりと春惜しむ  秀輔

春惜しむ拾ふ多羅葉深大寺  洋子

春惜しむ雨は小言のやふに降る  征子

又一輪又又落つや春惜しむ  敏子

鎮もれる古刹の庭や春惜しむ  鈴子

小刻みに揺れるせせらぎ春惜しむ  三郎

着物着るただそれだけの春惜しむ  啓子

惜春や薄暮の庭の中にゐて  博光

春惜しむ庭の花鉢置き換へて  安恵

惜春や来年約す友二人  孝子

  やまびこ(五月号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句

駆大根豊かに日日を瘦せゆける  爽風

小晦日余生を削りゆく秒針  爽風  

妻の絵の傾き直す四温かな  富治

ご破算の効かぬ人生年の暮  邦弘

この先もこの顔でゆく初鏡  佳代

つつましく生きて年酒に頬染めて  勝彦

雪はらふ舞子の赤き蛇の目傘  勢津子

羽を閉じ祈る姿や冬の蝶  隆を

手に受くる命の温み寒卵  京子

眠る山こころに返すこだまあり  苳生

今日だけは天動説を初日の出  康平

夜の雪ないしよ話のやうに降る  康平

日捲りを一枚めくり春を待つ  朱美

やうやくに選の名乗りや初句会  文夫

日脚伸ぶ月に一度の診察日  灯花

   俳誌嵯峨野 七月号(通巻第648号)より

 

 

 

 

 

 

 

 

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六月の詩(竹生島)

2025年05月31日 13時01分54秒 | 春の俳句

         ふるさと牧場(岐阜県・中津川) F6 水彩

     竹生島

山裾に香る蝋梅鳶の笛  惟之

イチローの殿堂入りや冬うらら

寒明けやドクターイエロー引退す

冴返る夜世の明け初むる竹生島

比良からの風に生まるる花菜かな

  誌上句会 兼題「木の芽」

特選

瀬田川に芽吹く柳や櫂しぶき  洋子

講堂に新米教師木の芽晴  利里子

木の芽晴学窓よりの吹奏楽  靖子

牛の仔を繋ぐ立木の芽吹きをり  泰山

禅寺の朱の碗ずらり木の芽和  美代子

秀逸

牛若の苦難の跡やこ木の芽雨  正道

歩を合はす杖つく友孤木の芽道  静風

川魚の香りは母の木の芽添へ  秀子

木の芽風やうやく慣れしセルフレジ  秀輔

紫陽花の芽立ち気丈や葉の姿  啓子

やはらかに包む日差しや木の芽吹く  信義

多摩御陵へ参道覆ふ欅の芽  三郎

待たるるは木の芽緑に香る頃  孝子

入選

木の芽とも競ふ退院予後の試歩  謙治

ふるさとの父母に木の芽を分かちをり  博女

木の芽吹く人に個性のあるごとく  三枝子

枝先に秘めごとのごと欅の芽  まこと

芽吹き初む丘に見下ろす新造船  藤子

高高と紅き木の芽や大欅  惟之

籠り居の励ましかとも木の芽吹く  珠子

五十年経にし団地の木の芽かな  稔

木の芽立ち引越ししたよ子のメール  稔

やうやうの光陰七年木の芽張る  畔

生活が少し愉しや木の芽伸ぶ  悦子

自然生え大きくなりて木の芽吹く  敏子

木の芽風吹く大陸の舞踏団  光央

形よき器に盛るや木の実和  鈴子

ひと雨に大樹の木の芽目覚めけり  洋子

いつせいに歌いだすごと木の芽吹く  ふみ女

棟上げの菓子拾ふ子や木の芽晴  紀久子

街灯の灯りて雨の木の芽かな  博光

昨夜の雨木の芽のちから誘い出す  安恵

凱旋の大リーガーや木の芽晴  歌蓮

    やまびこ(四月号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句

老いを知り老いを忘れて冬紅葉  爽見

畔を行く瞽女のしんがり雪女  勝彦

冬薔薇火よりも赤きしづくため  きぬ

時計台すずろに遠く水の秋  紫魚

隙間風座敷わらしの遊びたり  久子

久久に岡山弁聞く冬温し  万智子

クロワッサン似合ふ茅ヶ崎小春凪  京子

降る雪や木曽路の宿の深眠り  克彦

病友を残し退院年の暮  謙治

ゆず湯の香残る手ぬぐい干す夜明け  光央

   俳誌嵯峨野 六月号(通巻第647号)より

 

 

 

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八月の詩(花見どき)

2024年07月31日 14時57分30秒 | 春の俳句

          赤いドック(姫路市家島)50号 水彩

   やどかり

春場所の記録記録や尊富士  惟之

やどかりや子の掌に貌を出す

高瀬川の一之船入桜咲く

焼跡の輪島に咲きぬヒヤシンス

花見どきお召列車の菊御紋

   誌上句会 兼題「初夏」

特選

初夏の辻馬車に揺れ豊後富士  惟之

初夏のひかりを廻す風車かな  利里子

二〇度は丁度頃合ひ老ひの初夏  秀子

初夏や逗子の沖行く帆掛け船  克彦

秀逸

初夏の芝に稚児の転がされ  洋子 

初夏や天地返しに味噌の玉  三枝子

初夏の風の吹き交ふ古戦場  幹男

四阿を筒抜け風夏はじめ  珠子

初夏や流るる雲も大川も  東音

初夏の朝出かける誘ひ待つてをり  万智子

入選

リハビリへ窓辺のエール初夏の風  謙治

山寺の足もと軽し初夏の声  博女

指しやぶる赤子に初夏の風やさし  廣平

アレクサにまずは挨拶初夏の旅  光央

苗を待つ田水を揺らす初夏の風  まこと

暮れなづむ首夏の棚田の水鏡  藤子

苗物に落ちつかぬ空夏始め  稔

初夏の川の飛び石きらめけり  敏子

初夏や光る君らと再会す  秀穂

初夏や公園ピアノ軽やかに  靖子

初夏の浜を踏む音水の音  靜風

首夏の風津軽の海をを越えて  泰山

しまなみの白き大橋初夏の潮  翠

初夏や埋め立て済みし田の広し  紀久子

雀どち枝から枝へ初夏に入る  祐枝女

初夏といふ明るき響き一歩前  悦子

坂登る子等の銀輪夏はじめ  洋子

キッチンカー並ぶ初夏多摩河原  啓子

初夏やたてがみ揺るる都井岬  郁夫

蔵町の疎水の光夏はじめ  信義

初夏の光の中の大瓦  文夫

駅員と交わす挨拶夏はじめ  博光

初夏や継ぐ子の鍬に名をきざむ  みどり

水晶の耳輪に替える夏初め  美代子

早朝の木木のさ揺れや夏初め  鈴子

二両目の立ち位置に慣れ夏はじめ  歌蓮

初夏の昼餉は庭と妻の決め  選者

   やまびこ(六月号の作品から)感銘・共鳴ー私の好きね一句

菜の花やここで生まれた風を聴く  晶子

薄紙を解けば雛の笑みこぼる  朋子

その中に男が一人針供養  勝彦

飛石や寒さが足にまとひつく  胡蝶

種子といふ命のかたち春を待つ  泰山

百年後我が子無き世鳥雲に  海男

逆立てておくマヨネーズ鳥雲に  布美子

祝米寿一人暮らしの桃の花  捨弘

この道は選んだ道よ冬すみれ  爽恵

爪立てて画鋲引き抜く多喜二の忌  裕美

    俳誌嵯峨野 八月号(通巻637号)より

 

 

 

 

 

 

 

 

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七月の詩(幻の城)

2024年06月30日 14時44分25秒 | 春の俳句

                 赤い屋根の劇場(宝塚市)8号水彩  

               幻の城

二月や輪島の駒の棋王戦  惟之

船の出ぬ輪島の海女や春遠し

朧夜や烏帽子の出づる屋敷墓

肺活量使い果たして春歌ふ

幻の城の遺構や春の泥

    誌上句会 兼題「若緑」

特選

風あれば風を諾ふ若緑  三枝子

沖を行く白き客船若緑  洋子

慟哭も呑んでフクシマ若緑  謙治

若緑に対ひて色をととのふる  稔

若緑くずれ砦の石の寂  廣平

方丈の留守を預る若緑  幹男

松の芯一尺伸びて雨上がる  惟之

何となく庭師喜ぶ若緑  悦子

格子戸の連なる町や若緑  由紀子

入選

若緑芝生に足裏つつかれて  万智子

蒼天へ飛び立つさまに松の芯  まこと

緑立つ国境沿いの検問所  光央

少年の挫折乗り越え若緑  つとむ

自分史に重き色なり若緑  征子

平凡のかくも長寿や若緑  珠子

参道の長き並木や若緑  祐枝女

産土は今も変わらじ若緑  泰山

老松に並び立つなり若緑  秀子

若緑日ごとに変わる児のしぐさ  靖子

浜風に吹かれ通しの若緑  靜風

開け放つ本陣跡や松の芯  藤子

少年の口元硬し若緑  洋子

いささかの曖昧も無き若緑  秀輔

山門の良き枝ぶりの若緑  三郎

声明の流る古刹若緑  鈴子

少年の口の尖りや若緑  文夫

やはらかき日に膨らみて若緑  信義

若緑明日へ繋がる今日があり  ふみ女

ストックを両手に山へ若緑  歌蓮

それなりに盆栽の若緑  美代子

大波のくづれ磯馴れの若緑  東音

窓を開け目薬をさし若緑  みどり

緑立つ備前鳥城の壁の黒  選者

    やまびこ(五月号作品から)感銘・照明 私の好きな一句

冬萌の里に瀬音の遠くより  東音

みな老いを楽しんでゐる賀状かな  勝彦

竜の玉まだ捨てきれぬ志  勝彦

余生とは言はず言さす雑煮の座  爽見

卒寿てふ花道もあり屠蘇祝ふ  爽見

出直しの覚悟にも似て枯木立  珠子

にこにこと耳うちする子お年玉  利里子

地震ありて一気に乱すお正月  廣平

満天の星きしきしと底冷えす  廣平

新しい自分に出合ふ初日記  ひさ女

北に行き北しか知らぬ雪はねぬ  泰山

   俳誌嵯峨野 七月号(通巻第636号)より

 

 

 

 

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六月の詩(糺すの森)

2024年05月28日 10時06分03秒 | 春の俳句

               赤い四阿のある森(栗東市安養寺)F8 

      糺すの森

霜焼けて幼に還る八十路かな  惟之

積雪の庭へ迷はず飛び込む子

三井寺の円空仏や春立てり

合格の笑顔のライン届きけり

春浅き糺すの森を妻とゆく

     誌上句会 兼題「鳥帰る」

特選

翳となり光となりて鳥帰る  三枝子

鳥帰る備前の山の皆まろし  紀久子

偕老の鍬振る上を鳥帰る  泰山

鳥帰る沖に巨船の居座りて  靖子

鳥帰るどこから見ても古墳山  憲勝

秀逸

残されし二羽は番か鳥帰る  洋子

鳥帰る切なきまでに首伸ばし  廣平

天心に声くぐもりて鳥帰る  藤子

鳥引くや運河に光溢るる日  幹男

病院の池に餌台鳥帰る  翠

転校の最後の授業鳥帰る  倫子

鳥帰る亀に別れを告げもして  つとむ

入選

静寂にはおのが呼気のみ鳥帰る  謙治

見上げれば比叡を越えて鳥帰る  博女

災害の街を残して鳥帰る  光央

鳥帰る田舎訛りの懐かしく  まこと

比良山に見えつ隠れつ鳥帰る  惟之

鳥帰る雲に入りゆく比叡山  靜風

鳥帰る列にはぐれし鳥一羽  万智子

鳥帰る今日から空を広くして  ふみ女

夢に見る生家懐かし鳥帰る  敏子

鳥帰る行くあても無き鳥も又  稔

カリヨンの遠音はるかに鳥帰る  祐枝女

鳥帰る絆深めて父祖の地へ  秀子

捨て難き縁深めて歳還る  悦子

安曇野の空四五羽づつ鳥帰る  秀輔

風かよふ多摩の河原や鳥帰る  洋子

鳥帰る飛行機雲をすぢかいに  文夫

東海の朝の光や鳥帰る  克彦

停戦の願いとどけよ鳥帰る  信義

防空監視哨跡や鳥帰る  三郎

鳥帰る入日の雲の流れをり  博光

引鳥や日に三本のバス無人  啓子

引鴨の入日横切る日本海  和夫

また来ると惜しみ旋回鳥帰る  歌蓮

鳥帰るたれかどこかで待つやふに  珠子

鳥帰る近江の湖のさざなみに  鈴子

小紋のごと行儀藪に鳥帰る  美代子

    やまびこ(四月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

一人居の灯してよりの寒さかな  勝彦

地に返る軽さとなりて落葉降る  紀久子

無人駅一人の下車の咳ひとつ  爽見

数へ日の一日は母に逢ひにゆく  優江

自動ドア出て寒風平手打ち  研二

枕元母の愛せし寒椿  裕世

数え日を数へて何もせずにゐる  優江

みかん剥く孫七人の真ん中へ  優江 

大晦日心に響く第九かな  和子

ひたすらに散る山茶花を見てひとり  鈴枝

幾年を巡りて今日の落葉踏む  勝彦

風音も味の一つとおでん鍋  爽見

顔見世やまねき見上げてより入る  洋子

       俳誌嵯峨野 六月号(通巻第635号)より 

 

 

  

 

 

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八月の詩(豆の花)

2023年07月30日 16時23分56秒 | 春の俳句

  

           エルムの森(北海道大学)六号水彩

      豆の花

乗り過ごしべそをかく子や豆の花  惟之

多羅葉に一文字書けば胡蝶くる

花びらの流るる疏水船溜り

乗船の客の声ゆく花の下

里山の遺跡を囲む花菜かな

    誌上句会 兼題「風薫る」

特選

北国のエルムの森や風薫る  惟之

幼子のよちよち歩き風薫る  まこと

少年の清し一礼顔薫る  廣平

生き延びてまだ風薫る土手にあり  つとむ

母と来し摂津の湯宿風薫る  鈴子

風薫る島へ渡船のいろは丸  京子

秀作

入魂の地鎮の御鍬風薫る  三枝子

風薫る若き家族のユータウン  秀子

薫風や牧場の馬の息かかる  みどり

風薫る北の大地の樺並木  泰山

薫風やマスクはづして存分に  靖子

山並を田の面にうつし風薫る  祐枝女

検査結果よしと言われて風かおる  万智子

風薫る瀬戸の島島遠近に  紀久子

生徒らの手話の賑はし風薫る  珠子

まほろばの奈良の水田や風薫る  治子

薫風に光たちゆく水面かな  東音

薫風や茶筅供養の焔立つ  安恵

風薫るベッドメイクをねんごろに  詔義

通園のラッピングバス風薫る  清次

薫る風開いてもみる日本書記  稔

茶室まで続く飛石風薫る  篤子

風薫る亡夫の旅せし日の遠し  靜風

薫風や石切りさんの大鳥居  知恵子

渾身の祈りは平和風薫る  翠

千体地蔵撫でて降りきし風薫る  博女

入選

風薫る昇仙峡のトテ馬車へ  秀輔

ありがたう下車のひと声風薫る  謙治

父と子の散歩の話風薫る  加代子

風薫る旧街道の酒まんぢゅう  藤子

疏水路に賑わふ鳥語風薫る  洋子

五重の塔上り開扉風薫る  啓子

ヘルメットよりの黒髪風薫る  美代子

風薫る幼今日からトーシューズ  信義

風薫る市電の走る海の街  文夫

風薫る小江戸巡りのレトロバス  和男

風薫る水場のコイン光らせて  洋子

しとやかな巫女の仕草や風薫る  敏子

風薫る雄三通りのカフェテラス  京子

薫風の中の寺町一人旅  博光

風薫る日日好日でありにけり  美智子

風薫る北山杉の参道に  三郎

    やまびこ(六月号の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

早春の日差しをすくふオールかな  勝彦

菜の花に巨船ゅったり浮き沈み  京子

うちの子になる運命の子猫かな  布美子

薄氷や朝日をのせて岸離れ  東音

光曳く鳥や二月の多摩川原  東音

水取を愛し逝きたる夫弘斎  和子

頑健な奴から逝きぬ梅真白  爽見

年波は通奏低音春を待つ  圧知

物差しでいのち計れず寒明ける  近子

待春の空蹴り上げて逆上がり  篤子

一握りに春光はしる小鮒釣り  みどり

玄関に友のステッキ春を待つ  悦子

節分や隣家も鬼のきてるらし  秀子

夫掻いたあとを少しの雪箒  恒子

    俳誌嵯峨野 八月号(通巻第625号)より

 

 

  

 

 

 

 

 

 

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七月の詩(春一番)

2023年06月30日 13時49分26秒 | 春の俳句

        猿飛佐助のふる里 三雲城址 八畳岩(甲賀市三雲)

         (落ちそうで落ちない受験生のホットスポット)

      春一番

春一番続日本紀の読めぬ文字  惟之

手の平に独楽を廻して梅まつり

子が呉れし御守り札やつくづくし

卒園を祝ふ花束赤白黄

桜咲く疏水に母子地蔵かな

     誌上句会 兼題「シャボン玉」

特選  

人生は短し長しシャボン玉  信義

転校地の小さき庭やシャボン玉  知恵子

シャボン玉とどけ空までも  珠子

犬が逝き猫また逝きてシャボン玉  苗子

子の丈に屈みて吹けるしゃぼん玉  三枝子

大空へ声もはじけてシャボン玉  靖子

秀作

ふはふはと濁世に吹けるシャボン玉  鈴子

シャボン玉幼きままの友思ふ  靜風

清水の舞台で飛ばすシャボン玉  惟之

シャボン玉紅を包みてとばしけり  京子

憂きとばそシャボン玉とばそ空までも  みどり

日を弾き風にはじかるシャボン玉  和男

海の色空の色へとシャボン玉  稔

妹は六歳違ひやシャボン玉  安恵

跳ねる子に歌ふ子泣く子シャボン玉  東音

庭先に猫も加はりシャボン玉  洋子

シャボン玉色極まつて弾けけり  まこと

その中に映る子弾けシャボン玉  洋子

シャボン玉吹いて笑ふ子二歳の子  加代子

しゃぼん玉風に吹く子と駆け出す子  清次

シャボン玉同士がふれて消えにけり  美代子

シャンボン玉小さな願空に向け  美智子

入選

過ぎし日の浮かぶ煌めきシャボン玉  謙治

幼子の顔ふくらんでシャボン玉  文夫

ふつくらと未来託す子シャボン玉  啓子

シャボン玉遠き日のこと父母の顔  肇

シャボン玉飛べ飛べ遠くドローンまで  智代

無患子の水溶液のシャボン玉  秀輔

遠き日や液手つくりのシャボン玉  敏子

大中小どの子も笑顔シャボン玉  秀子

兄ちゃんの吹くシャボン玉追ひかけて  泰山

日盛りのストロー苦しむシャボン玉  博光

一つだけ高くあがつたシャボン玉  佑枝女

しゃぼん玉天に昇りて手を振りぬ  博女

シャボン玉追い駆ける子を母追ひて  紀久子

流れつつ色を変えけりシャボン玉  篤子

いつの日かこの夢宇宙シャボン玉  廣平

道化師の空掬ふ大シャボン玉  三郎

亡き人を偲びひと吹きシャボン玉  恵子

選者

残したるしやぼん玉吹く夕べかな  優江

     やまびこ(五月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

みちのくに不老不死の湯雁供養  怜

一病と和して戦ひ去年今年  爽見

蒼天へ透く蝋梅の香りけり  咲久子

霜柱踏むや地球の窪む音  征子

天井も床も明るき初仕事  優江

恵方へと一歩踏み出す母の杖  鈴枝

参道のこの真つ直ぐな寒さかな  勝彦

初旅の車窓に富士のはみ出しぬ  勢津子

七草や妻の真白き割烹着  怜

実朝の札は取りたき歌歌留多  仙命

獅子舞の口にやさしき目が覗く  清次

冬菊や美しきまま母逝きぬ  鈴子

一病を持ちて息災去年今年  ゆふし

多忙なる日ぞ懐かしき去年今年  秀子

痩せてなお心和ます雪だるま  睦美

くわりんとうみたいな字やね悴むて  節

ゆでたまごつるんと剥けて寒明ける  喜美江

雨音を集むる八つ手春兆す  征子

歌かるた子の指先に魔物ゐて  幸子

    俳誌嵯峨野 七月号(通巻第624号)より

   

 

  

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六月の詩(春の雪)

2023年05月31日 13時02分42秒 | 春の俳句

           大津港のタグボート 40号 水彩 

       春の雪

赤き面かぶり追儺の下校の子  惟之

山寺へ続く丁石寒明くる

湖のぞむ二の丸跡や風光る

シャンシャンを見送る人や春の雪

表紙絵の赤きベンガラ春日陰

    誌上句会 兼題「桃の花」

特選

夕飯は夫の手料理桃の花  安恵

桃の花復興の地に根を張りぬ  泰山

句碑一基野辺に立ちたり桃の花  みどり

人生は七十からや桃の花  捨弘

屋敷神まつりし生家桃開く  藤子

癒ゆる友囲んで桃の花畑  東音

秀作

通院も一日の旅や桃の花  翠

桃の花バレーを習ふ兄妹  惟之

里染むる十万本の桃の花  靖子

桃の花桶に束ねて売られをり  三枝子

招かれて桃の節句の十畳間  珠子

ありし日の友の笑顔や桃の花  博女

ふるさとはあの道この道桃の花  洋子

愛らしき赤子の指や桃の花  鈴子

子が選ぶ田舎暮らしや桃の花  京子

始めての制服写真桃の花  清次

入選

桃祭りひそと聞こえし郷なまり  謙治

一輪に人佇ませ桃の花  篤子

トンネルの長さと歩み桃の花  啓子

笛吹の全山染める桃の花  秀子

青空の甲斐路に続く桃の花  三郎

一本や狭庭しめたる桃の花  初枝

公園の夜のブランコ桃の花  博光

お澄ましの童と活ける桃の花  洋子

不動堂へバイパス往くに桃の花  稔

幼子の手折てかざす桃の花  敏子

訪ひくれし久に逢ふ友桃の花  靜風

甲府盆地眼下一面桃の花  加代子

山間の茅葺屋根や桃の花  信義

桃の花あしらひごと葉の少し  美代子

桃の花咲きて彩る狭庭かな  祐枝女

甲斐路きて桃源郷や桃の花  秀輔

水音の近づく桃の花の里  美智子

   やまびこ(四月号から)感銘・共鳴)私の好きな一句)

米寿越す我に夢あり日記買ふ  千恵子

ままごとのかかあ天下や木の実飯  方城

玄関の大きなこけし雪の宿  そよ女

恵弘尼の太き筆跡山眠る  洋子

病みて沁む恩や感謝や冬ぬくし  勢津子

独り居の灯を煌煌と毛糸あむ  三枝子

風を呼ぶ力残して枯尾花  篤子

LPのかすかなノイズ霧の夜  憲勝

焼藷を割って正論言わずおく  憲勝

のびる波たたむ波あり島小春  布美子

撫で肩をまたすべり落つショールかな  布美子

捨てきれぬアルバム繰りて小春の日  万智子

眠らざるもの懐に山眠る  幸江

叱る人いま誰も居ず冬銀河  富治

表札のそのまま空き家石蕗咲きぬ  節子

樅の木にも台詞のありて聖夜劇  雄彦

捨てるには惜しき端切れよ一葉忌  郁子

日溜りの母ちやん床屋年の暮  博光

    俳誌嵯峨野 六月号(通巻623号)より

 

 

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九月の詩(宿木)

2022年08月30日 13時11分18秒 | 春の俳句

                          ふれあい牧場(岐阜県中津川)6F 水彩 

         宿木

春風や鳶と鴉の空中戦  惟之

貴船路の桜蕊ふる峠かな

ウクライナ語の四月開講人気呼ぶ

鳥の巣のごとき宿木夏はじめ

賑わひの田植体験子ら列

   誌上句会 兼題「滝」

特選

氷河より流れ来る滝殩殩と 胡蝶

雲の峰国を境のナイアガラ  知恵子

夫婦滝落ちてひとつの水となる  篤子

争いの地球の涙滝ごうごうと  翠

滝落ちて阿蘇外輪はけふも雨  文夫

秀作

滝音を頼りに沢を登りけり  洋子

船に見る晒一条那智の滝  珠子

アフターヌーンティ滝の風くるテラス席  恵子

糸滝の一糸の乱れなく落つる  三枝子

歩荷行く木道迫る滝の音  洋子

木木の間を流る滝や最上川  靜風

滝飛沫かかる巌の明王像  啓子

渓流にそそぐ小滝の清かなり  美代子

身びるひの観滝台や四度の滝  陽子

山割つ龍神のの滝しぶきけり  信義

大滝や檜林にこだまして  由紀子

鎮もれる菩提の滝の仏旗かな  惟之

和紙の白残し水墨滝しぶき  稔

滝しぶき浴び轟音のナイアガラ  咲久子

瀧見茶屋あまたの客の旅話  みどり

真つ白に滝をまとうて滝躍る  まこと

鎮めんと一条光る神の滝  藤子

横風にしぶき騒立つ女滝かな  秀輔

音変へて河津七つの滝落ちる  和男

入選

尼ひとり打たるる滝や手を合はす  秀子

身のけがれ流す大滝風呼んで  博女

音高く黒部の滝の玉すだれ  ともはる

滝に来て見えざる力貰ひたる  廣平

滝の音間遠に聞いてゆく山路  靖子

飛沫より生まれし虹消ゆ滝の風  美智子

池落つる小さき滝の清きかな  敏子

湧き水の集まり滝の生まれけり  万智子

轟音の流れは速し滝壺に  祐枝女

滝の水落ちて流れのゆるやかに  和子

大岩に砕ける滝やしぶきあげ  加代子

天上より一条真理の滝の音  洋子

夜半の雨滝太らせて落にけり  泰山

七色の滝のしぶきや諸手あげ  須美子

人の去る石走る滝森の黙  治子

選者

林道に風湧き滝の匂ひかな  東音

    やまびこ(七月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

水紋は風のあしあと春の池  布美子

タクシーの隠れて休む花の昼  仙命

大樹の枝雲もろともに剪定す  珠子

悟りには遠きわが身や春愁  杏花

残雪の比良を仰ぎて旅をはる  優江

もの思ふまじと畑打つ日もあらむ  勝彦

影が来て指来て土筆摘まれけり  勝彦

桜餅買ふ亡き妻の誕生日  爽見

春光の泣く子笑ふ子ひと包み  爽見

春雨やおどけて手術前の夫  洋子

あれほどが煮ればこれだけふきのたう  隆を

甲斐の峯一糸乱れぬ帰雁かな  怜

一対といふぬくもりに雛の間  篤子

一すじの道を岬へ黄水仙  祐枝女

肩叩き上手になつて卒園す  恵子

三月の光ゆたかに真砂女句碑  和男

親戚の子のごとく来て蕪  智子

目覚めよと春田を進む耕運機  桂子

雛あられ旅行かばんにそつと詰め  敬子

人生に句読点あり雪柳  晶子

   俳誌嵯峨野 九月号通巻第614号)より

  

 

 

 

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