水彩画と俳句の世界

自然を愛し、感性を大切にして「水彩画と俳句の世界」を楽しんでいます。

志賀の大仏

2022年03月31日 19時35分12秒 | 冬の俳句

                                              蹴上の桜(京都) 六号 水彩 

 志賀の大仏

湖へ向く北向き地蔵冬日差す  惟之

冬晴や京への山路道祖神

微笑の志賀の大仏冬ぬくし

山中の崇福寺跡紅葉散る

大空へ杵たかだかと餅を搗く

  誌上句会 兼題「寒卵」

特選

寒卵茹でて庭師の一服へ  洋子

父帰還は祖父の祈りや寒卵  三郎

いつしかに向き合ふ予後や寒卵  藤子

癒ゆる人の粥に添ふ色寒卵  博女

母の荷のお米に埋もれ寒卵  知恵子

秀作

湯治場の笊に五六個寒卵  文夫

恢復へと真心からの寒卵  陽子

寒卵の黄身に命の張りの濃し  三枝子

退院の母の白粥寒卵  咲久子

つひの間に八十路も遠く寒卵  佳子

幸せのオムレツ青き寒卵  恵子

弟妹の揃って割りぬ寒卵  紀久子

足湯することも日課や寒卵  靖子

誕生日にと割れず着く寒卵  啓子

寒卵いとしと思ふこはれるな  万智子

親に子につつがなき日を寒卵  美智子

奇想など得むと夜に割る寒卵  秀穂

寒卵思案に借りる老いの知恵  珠子

もう八十だ八十や寒卵  篤子

コツと割り今日の始まる寒卵  洋子

輪島箸にとろろ混ぜゆく寒卵  加代子

鳥小屋へこはごはそっと寒卵  久代

戦時下の母の割りたる寒卵  秀子

前掛けに被ふ見舞ひの寒卵  まこと

思ひ切り投げてみたきや寒卵  廣平

入選

寒卵トンガに火山噴火の日  稔

高高と明けの鶏鳴寒卵  惟之

あけぼぼの明りに透かし寒卵  翠

塗椀にとろり透けゆく寒卵  洋子

寒卵ぽろりと放し飼ふ畑に  みどり

きのうけふ僧侶のすする寒卵  克彦

籾殻に迷つて選ぶ寒卵  鈴子

皿に盛る下宿の朝の寒卵  富治

卓上をころがる音や寒卵  信儀

籠りたる親の情愛寒卵  捨弘

寒卵割りたる妻や子と吾に  和男

寒卵昼餉に一つおとなりへ  祐枝女

中流の生活ありがた寒卵  美代子

なつかしや母の情けの寒卵  静風

滋養てふ言葉懐かし寒卵  治子

体重の減りゆく我や寒卵  敏子

  やまびこ(二月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

十三夜日本一の妻は亡く  爽見

コスモスの風や畝傍へ香久山へ  洋子

煙なき暮らしに慣れてさんま焼く  アイ子

小鳥来て賑やかになる一軒家  和子

話また昭和へもどる温め酒  鈴枝

妻のこゑまたきこえくる夜長かな  爽見

野路菊や道なつかしく母の里  洋子

茶の花や卒寿を越えて見ゆるもと  梅子

後継ぎのなき田や終の落し水  勢津子

穭田の轍にひかるよべの雨  通幸

繰り返すピアノの曲や萩の雨  みどり

ただいまと呟き秋を灯しけり  布美子

まあええかそれも我なり烏瓜  小鈴

さび鮎や峡にせり出す発電所  明子

いつしかに支え合ふ身やとろろ汁  和男

セーターの一目一目は母の息  悦正

  俳誌嵯峨野 四月号(通巻第609号)より

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三月の詩(無患子)

2022年03月01日 13時25分04秒 | 秋の俳句

 

            雛人形の五人囃子の鼓と小太鼓 

                 無患子

初生りの小さき檸檬香を放つ  惟之

無患子の降る川の辺を子等とゆく

献立にシェフの朱印や秋夕焼

山道を埋め尽くして朴落葉

大銀杏光を放ち散り急ぐ

    誌上句会 兼題「去年今年」

特選

一編の詩が拠り所去年今年  捨弘

星星の海へ消えゆく去年今年  富治

棟梁の遺訓継ぐ子や去年今年  三枝子

学ぶ仲間学べるなかま去年今年  珠子

戦なき平和寿ぎ去年今年  紀久子

秀作

井戸水を汲んで目出度き去年今年  まこと  

山一つ越えて健やか去年今年  佳子

去年今年眉目の語る納め句座  泰山

去年今年楽しく生きて今仕上げ  胡蝶

ポケットに残る一円去年今年  篤子

去年今年年男の座譲りたり  文夫

シルバーの務めを杖に去年今年  稔

世の闇を祓ひてゆくや去年今年  博女

去年今年佳き事さがし指を折る  万智子

浄暗の篝火明かし去年今年  恵子

長らへて申し分なき去年今年  みどり

去年今年俳句ノートの一冊目  治子

読み返す寂聴源氏去年今年  知恵子

朝な夕な歳時記を繰り去年今年  咲久子

何気なき日日大切に去年今年  洋子

入選

八十路への扉を敲く去年今年  惟之

叡山の法灯不滅去年今年  ともはる

篝火の火の粉零るる去年今年  信義

去年今年変わらぬ友の心かな  静風

こだはらぬこそ自由なり去年今年  鈴子

寂聴尼の説法聞こゆ去年今年  秀輔

余生なほ幸せ思ふ去年今年  テル

祠あらば手合わす習ひ去年今年  翠

去年今年雑務に追はれ余生なほ  祐枝女

読みさしへ挟む栞や去年今年  洋子

縁ありて集ふ仲間や去年今年  三郎

平凡な暮らし楽しむ去年今年  克彦

人生は片道切符去年今年  廣平

何事も時が解決去年今年  敏子

解決の糸口見えぬ去年今年  美代子

    やまびこ(一月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

四五軒の里を彼方に蕎麦の花  治子

露けしやとにもかくにも米寿越え  爽見

ひぐらしや若狭へ続く十八里  そよ女

友の訃や思い出畳む秋扇  千恵子

大壺に挿して風湧く花芒  和子

山宿の名月掬ふ露天風呂  三枝子

清貧は父の生きざま星流る  怜

秋澄むや使ふことなき旅鞄  近子

蜻蛉追ふ子らに大きな空のあり  近子

行く雲の果ては海あり稲を刈る  みどり

月の舟別れも告げず漕ぎゆきぬ  洋子

灯火親しむ古書に残れる蔵書印  利里子

八月は追憶の月重き月  邦弘

老ひとまた違ふ淋しさ秋夕焼  静風

コスモスの色を揺らして風の手話  廣平

朝顔や錆びたポンプの残る町  彩子

  俳誌嵯峨野 三月号(通巻第608号)より

 

 

   

 

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