友禅菊(左京区久多)太田厚子
祭獅子
かぶと虫雄雌提げて里帰り 惟之
祭獅子に頭を噛まれけり兄妹
遊ぶ児の行くてぴよんぴよん鮴ひかる
ねそべって蚊遣見てゐる露天の湯
初秋に第九に応募胆試し
誌上句会 兼題「萩」または「虫}
切通し抜けるや萩の括られて 三枝子
孫と寝る一夜のゆかたに虫の声 たかすけ
しだれ萩急げる帰路にこぼれたり 誠子
白萩にまぎれし蝶の行方かな 紀久子
八十になんなんとして虫の声 まこと
もう少し歩きたき道虫の声 秀子
萩叢に隠れて古き標石 洋子
遠ざりし人また恋し昼の虫 みどり
わが庭は手入れとどかぬ乱れ萩 祐枝女
虫すだく朝のグランドがらんどう よう子
萩の花心やさしくなりし色 静子
幼子の小声の唄や萩の径 美枝
閉店を余儀なき軒や虫の声 博女
送り出てひ一人に惜しき虫の声 靖子
弧蝶きてやさしくなりし萩の風 真喜子
虫の音やふと気が付けば米寿なり 杏花
虫の音をスマホに学び夕河原 啓子
友の顔ふと浮かび来る虫の声 奏行
香煙のゆらぐでもなし萩日和 珠子
夕さりの風が散り敷く萩の花 惟之
漸くに虫と代わり散歩道 捨弘
アルバムの夫偲べば虫の声 初枝
やまびこ(十月号の作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句 より
誰にでも背負ふ業ありかたつむり 惠弘
日傘にも江戸のしぐさのありにけり 尞見
昼顔に沖の白波まっしぐら 道子
歳月も記憶は消せず沖縄忌 龍策
ゆるやかな紫陽花色の流れかな 志津
物捨てぬ昭和一桁古扇子 杏花
睡蓮やモネの好みし白き椅子 鈴枝
子燕に見とれてゐたり使いの子 爽見
碁敵を褒め殺してメロン食む 素岳
もうゐない母の存在豆御飯 久子
水茎のゆかし卯の花腐し美し 清次
山の端に落つる夕日や田植え果つ 節子
雨上がる山の吊り橋ほととぎす 三郎
失ひしものは数えず走り梅雨 京子
夕立や母にもたれし読書の子 文香
父の日や祖父のあぐらに孫二人 須美子
マネキンもかひなはずして更衣 素岳
パフェ食う匙に西日を掬ひつつ 素岳
青空のどこかに穴のある暑さ 素岳
俳誌 嵯峨野 十二月号(通巻581)