下鴨神社(京都市左京区下鴨)
稲たわわ
帰京する子に手渡しぬ賀茂なすび 惟之
山並へ子らとスキップ稲たわわ
兄いもと笛吹き合ひて秋の宵
雨上がり子らと摘みゐる秋の花
車椅子テニスに見入る夜半の秋
誌上句会 兼題「小春」
特選
達磨さん転んだが好き小春の日 廣平
母の紅さして幼の小春かな 文夫
多摩穏やか富士穏やかに小春風 清次
夫の忌の近き窓拭く小春の日 みどり
小春風スキップの子の遠ざかる 洋子
秀作
嬰の瞳の母追ふ縁小春 三枝子
詩集手に日溜りベンチ小春めく 東音
久久の銀ぶら鳩居堂小春 恵子
磯釣りの竿のしなりや小春風 篤子
隣り合ふ畑に小春の立話 和男
縁越えて仏に頒つ小春の日 啓子
小春日の近江富士なり湖ひかる 惟之
同齢の医師の励まし小春の日 秀輔
散髪へと急がす妻ゐる小春かな 稔
新築の小槌の響く小春かな 鈴子
大富士や銀河の海の小春風 信儀
やまびこ(十一月号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句
花茣蓙の花を枕にひと寝入り 布美子
どこまでも自転車でゆく夏休み 智子
猛暑日や駄句の自選に悩みをり 靖子
滴りを抱きし岩に神おはす きぬ
新茶淹れかへて一茶話など 爽見
星今宵少年からの句の届き 洋子
老鶯の声しづけさを深めけり 久子
誰よりも汗光らせて子の帰る 久子
ほとばしる昭和の香り夏蜜柑 方城
朝涼やよべの秀作舌頭に 通幸
白シャツの眩しき少年夏燕 節子
草刈りの音より強し草いきれ 慶子
朝凪の風のささやきひとり占め 京子
万緑の中から列車保津の渓 胡蝶
軒先が呼吸するかに夏燕 まこと
手の皺は人の年齢晩夏光 和男
五十年変わらぬ手順梅を干す せつ
俳誌嵯峨野 一月号(通巻606号)より