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水彩画と俳句の世界

自然を愛し、感性を大切にして「水彩画と俳句の世界」を楽しんでいます。

九月の詩(風薫る)

2025年09月02日 10時36分39秒 | 夏の俳句

            坊山の山荘 6号水彩

リラ冷えや自治会の役もう廻り  惟之

朝食に初穫れ苺ひとつ添え

信楽の大狸なり更衣

初夏や大聖堂に白けむり

母と娘の晴の連弾風薫る

   誌上句会 兼題「老鶯」

特選

老鶯や比良林間の闇を抜け  惟之

老鶯の声盛んなり閻魔堂  幹雄

山門を抜け老鶯の声聞こゆ  博女

老鶯や巻き積み上げて備前焼  紀久子

秀逸

老鶯やワンゲル帽の缶バッジ  正道

老鶯の声澄みとほる比叡の里  静風

残鶯や寺の樹木医思案めく  珠子

老鶯を聞きつアルバム繰る一日  康平

老鶯や谷幾つ超え鞍馬寺  秀子

老鶯や丹後海岸七曲り  和花

老鶯の近しや友と黙の歩に  啓子

老鶯の声に始まる一日かな  ふみ女

老鶯や菅公奉る村の杜  華文

落柿舎を訪へば老鶯しきりなり  鈴子

老鶯や読みさしの本テーブルに  歌蓮

入選

晩学を急がす老鶯図書の窓  謙治

老鶯やここより険し柳生道  三枝子

記念樹の育つ里山夏鶯  洋子

老鶯や低き藪より高き声  孝子

夏うぐいす間合巧みに谷へだて  藤子

廃村を守り老鶯泣き止まず  光央

老鶯や牧場朝霧脱ぎ切れず  稔

老鶯やひすがら谷を違えずに  畔

老鶯や熊野詣の道すがら  靖子

老鶯や風をはらんで山響く  悦子

老鶯をしみじみ聴くや離れにて  敏子

老鶯の連呼に答ふすべも無し  秀穂

老鶯や声をかぎりに過疎の村  利里子

老鶯や数寄屋作りの食事処  美代子

産土を夏うぐいすの恣  泰山

老鶯に招かれめぐる蘆花旧家  洋子

丘登り来て老鶯の影いずこ  信義 

雨の日も老鶯峪に木霊して  まこと

   やまびこ(七月号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句

若鮎の堰越す命かがやけり  靖子

改札に笑顔を見つけ春の風  啓子

この春はあなたのいきたかつた春  灯花

生きている事のうれしき桜かな  梅子

馬の子の生れ敷藁厚く労りぬ  三枝子

曲水や夢の跡詠むはせを句碑  仙命

子の息に吹き足す母や紙風船  まこと

たらの芽の摘むたび山の近くなる  博光

こんにちは道に整列つくしんぼ  古奈

春の日や抱つこ紐より四股跳ねる  幸子

二群れはひとつと成りぬ鳥曇   惟之

花の下三合飲めば唄の出る  捨弘

風神も雷神もゐて春一番  ひさ女

仏間より香りほのかに桜餅  ひさ女 

   俳誌嵯峨野 九月号(通巻第650号)より

 

 

 

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12月の詩(人馬一体)

2024年11月30日 12時33分28秒 | 夏の俳句

           思い出の果物 6号水彩

     人馬一体

取りを行く大船鉾や大拍手  惟之

仏蘭西に嫁ぎし子とや日焼の子

火の玉を見たと真夏の夜の妻

夏空へ人馬一体パリ五輪

父母の飯盛山や星流る

    誌上句会 兼題「秋高し」

特選

俳諧を一途に生きて秋高し  三枝子

不機嫌と無口は別と秋高し  康平

秋高し会ひたき人は遠くにて  静風

秋高しバスの車窓に清滝村  東音

秀逸

天高し子らの歓声なほ高し  洋子

せともの市皿底碗底秋高し  幹雄

群青の水平線や秋高し  藤子

たをやかな志功の天女秋高し  利里子

草原に牛千頭や秋高し  泰山

秋高し旅姿なる俳聖殿  敏子

汚れなき帆の走り出し秋高し  みどり

秋高し京の大寺の義生句碑  秀輔

入選

予後試歩のゴールは十歩秋高し  謙治

山寺にはずむ足音秋高し  博女 

秋高し夢多く持て若くあれ  まこと

秋高し渓流竿のしなりかな  光央

秋高し次の百年甲子園  惟之

秋高し出来栄えのよき墨流し  珠子

銀色に光るビル群秋高し  ふみ女

秋高し刈り終へし人田を後に  稔

秋高し届かぬ夢がおもしろし  悦子

退院の家路うれしや秋高し  祐枝女 

クレーン機秋高支配する如く  啓子

秋高し元海兵の食ぶるカレー  秀子

稜線に並ぶ風車や秋高し  靖子

秋高し鳥城の鴟尾金色に  紀久子

秋高し猫の食欲戻りけり  美代子

秋高し山の子の声透きとほり  翠

空港の百の国旗や秋高し  洋子

秋高し自在に駆くる岬馬  和夫

釣船の小さき歓声秋高し  博光

空高し異国語交わす足場かな  文夫

翔平の走打記録秋高し  歌蓮

秋高し男二人の上高地  仙命(選者)

    やまびこ(十月号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句

古書店の灯しは低し梅雨に入る  勝彦

病むことも生きる道草朝の虹  康平

長病みの妻への団扇の風薫る  克彦

補聴器に朝の囀捕らへ蹴り  千恵子

妻をまだ仏と呼べず梅雨深し  爽見

咽るほど薔薇を咲かせて平和都市  京子

夏の月ペンで書き足す生命線  利里子

お先にとペンを離るる天道虫  小鈴

子の声も田畑も減りぬ麦の秋  文香

茄子漬も箪笥の傷も生家かな  博光 

   俳誌嵯峨野 十二号(通巻第641号)より

 

 

 

 

 

 

 

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11月の詩(切子)

2024年10月29日 13時21分27秒 | 夏の俳句

    中津川温泉 ふるさと牧場 6号水彩

     切子

7月や新紙幣とのご対面  惟之

万緑や比良の麓をゆく列車

半世紀ぶりの再会里祭り

七夕の短冊吊るし退院す

倒壊の能登を練りゆく切子かな

    誌上句会 兼題「法師蝉」

特選

蘆花旧居くぬぎ楢槻法師蝉  珠子

ひとり居のコーヒータイム法師蝉  靖子

法師蝉託す者なき父祖の墓  利里子

庭椅子の母の定位置法師蝉  博光

秀逸

佳句欲しや佳句が欲しやと法師蝉  三枝子

補聴器をかけ聞きなほす法師蝉  博女

菩提樹の大樹揺るがす法師蝉  和夫

人間は戦争ばかり法師蝉  ふみ女

変わりなくひと日の暮れて法師蝉  翠

蒜山の三座明るし法師蝉  紀久子

法師蝉旅の無口の邪魔をする  悦子

入選

腹ペコの子ら帰るころ法師蝉  洋子

しがみつく幹へ合唱法師蝉  謙治

声限りかぎりある世をつくつくし  康平

山門へ長き石灯つくつくし  まこと

泣き止めば人も年寄るつくつくし  幹雄

法師蝉記憶の底のオノマトべ  光央

大原女むかふ都や法師蝉  惟之

オリンピック応援の如法師蝉  敏子

法師蝉今日の出来事しやべくりて  秀子

逢へぬ句友の選評読みてつくつくし  秀輔

推敲の明暗なほも法師蝉  藤子

産土は今も変はらじ法師蝉  泰山

移りゆく季節を告ぐる法師蝉  静風

カレーの香流るる路地の法師蝉  文夫

法師蝉悟りにも似て乾ぶもの  稔

戸袋は一夜の宿か法師蝉  洋子

法師蝉小枝潜りてまろび落つ  みどり

法師蝉加はりてより夕急かす  美代子

風の湧く奥州道や法師蝉  東音

つくつくし信玄旗を伝ふ寺  啓子

追悼の正午泣き止む法師蝉  歌蓮

手水舎の水の清しや法師蝉  鈴子

大寺の大樹の葉陰法師蝉  信義

海望彦根の城や法師蝉  三郎

法師蝉を友とし歩む山の径  孝子

薄れゆく吾の昭和や法師蝉  選者

   やまびこ(九月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

泉湧く空の青さを押し上げて  東音

老鶯や知足庵てふ我が栖  和子

長生きは三文の得初鰹  隆を

ポケットに何時かの一句衣替  布美子

五月来ぬ時の止まりしままの町  苺

麦の秋雨あとの風こがねいろ  きぬ

今や威を備へきたりし屑金魚  爽風

ふるさとへ近づく電車桐の花  爽風

万緑やひとつのことを為し遂げて  梅子

母の日や家族に貰ふ合格点  久子

雨の中鷺草の今飛び立たたむ  みどり

一行も書けぬ日のあり椎の花  憲勝

筆談と手話の茶房や麗らけし  惟之

母の日や竹物差しに遺る艶  俊江

姉妹らし朝顔市の帰りらし  雄彦

  俳誌嵯峨野 十一月号(通巻第640号)より  

 

 

 

 

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10月の詩(風薫る)

2024年10月04日 16時29分48秒 | 夏の俳句

           保津川桟橋(亀岡)8号水彩 

   風薫る

俳人の墨画展なり風薫る  惟之

葉桜の下で腕立て息弾む

牡丹散る小袖小路に立ち入れず

蛍飛ぶ誓子の句碑や摂津峡

叡王戦破れ失冠五月闇

    誌上句会 兼題「西日」

特選

船の淦捨てて船屋も西日中  三枝子

絵ガラスのイエスを射抜く西日かな  光央

犬行に西日の斜光厨窓  稔

自転車通学の背や大西日  泰山

秀逸

靴脱いで足元さます大西日  博女

鍵っ子を母に返して大西日  康平

西日照り虚空に美しき津軽富士  藤子

湾染めて沈む西日に合唱す  靖子

西日濃し今は使わぬ納屋梯子  優江

西日さす部屋にサティのジムノペチィ  ふみ女

湯の宿へ西日を連れてバスの旅  洋子

入選

軽トラの祖父母見送る西日かな  謙治

対岸の人影燃ゆる大西日  洋子

できるだけ逃れて並ぶ大西日  悦子

西日から逃げ出し下宿三畳間  まこと

名店の列はとかざる大西日  球子

西日落ちさてこれからの畑仕事  秀子

打出しの櫓の太鼓大西日   幹雄

微笑みの摩崖仏なり大西日  惟之

岸壁を離るるフエリー大西日  利里子

大西日額かざして医院まで  祐枝女

壊すビル建てるビルありて高西日  征子

西日さし片カーテンや一輪車  敏子

目つむれば西日まなうら紅に焼く  秀輔

大西日豆手ぬぐいを干す出窓  啓子

西日さす音なく染まる法の庭  静風

少年の立ち漕ぐ背や西日濃し  翠

一筋の雲を茜に西日かな  紀久子

天守閣泰然自若大西日  鈴子

電車中眠りを覚ます西日かな  和夫

サイレンの西日の窓に読む季寄せ  文夫

湖割って一直線の大西日  三郎

こだはりのコーヒー豆や大西日  歌連 

地下道の出口を塞ぐ西日かな  博光

西日中出漁船の競ひけり  東音

カーテン越しに踊る光の西日部屋  倫子

まだ続く一本道の西日かな  美代子

    やまびこ(八月号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句

花冷えや児へ補聴器あたためて  博女

いつまでも若い気でゐるチュウリップ  梅子

電線に楽譜めきたるつばくらめ  治子

さくらさくらいつもの橋を渡りけり  勝彦

卒寿なる未踏の世界桜東風  爽見

病むことを知らぬ金魚が餌ねだる  海男

春寒や我を励ます我とゐて  隆を

水駅の跡や桜のカフェテラス 清次

花吹雪あなたを止めるすべもなく  布美子

波が組み流れがほどく花筏  紀久子

口ぐせは今が幸せ朝桜  悦子

降り足りて仄くれなゐの春夕焼  恵子

    俳誌嵯峨野 十月号(通巻639号)より

 

 

 

      

 

 

 

 

 

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九月号の詩(マーガレット)

2024年08月30日 17時46分54秒 | 夏の俳句

            卓上の朝 8号 水彩

   マーガレット

耳飾りしてゐる小犬夏はじめ  惟之

大輪の薔薇の数数遠汽笛

筆談と手話の茶房や麗らけし

絹莢を今朝も摘みゐて五つ六つ

マーガレット子の手作りの花器に活け

   誌上句会 兼題「植田」

特選

歌垣の山を田毎に植田かな  珠子

山間のしづもる植田八ヶ岳映す  翠

電線のすずめ映りし植田かな  敏子

山合の植田に月の渡りゆく  利里子

秀作

決意さへ映す千枚能登植田  謙治

植田中盗人歩きの鷺一羽  廣平

ふみゆけば生家にとどく植田道  博女

変はりゆくふる里淋みし植田かな  静風

手庇に植田の機嫌観てをりぬ  洋子

町中に貸農園の植田かな  鈴子

忘れじの駅や姥捨植田道  啓子

各停に植田広がる太宰の地  東音

入選

田を植ゑて水の匂の濃くなりぬ  三枝子

吹く風の田植労ふ色のあり  まこと

早苗田の轍に足を取られけり  光央

テニスボール浮かび氏ままの植田かな  幹男

比良見上げ子ら賑やかに植田かな  惟之

水車より落ちる水音植田まで  みどり

背の山うつし植田や風そよぐ  祐枝女

棚田はや植田となりて山の影  靖子

植田かな条の狭間に雲を置く  稔

水ありて水から映す植田かな  征子

親も来て過疎の植田の草を抜く  泰山

百人の手による植田漫然と  洋子

青青と学習田の植田かな  秀輔

水満ちる植田の上に星満ちる  文夫

俯瞰してモザイクごとき植田かな  藤子

貸し田園個性の光る植田かな  倫子

踏切の警報音や大植田  紀久子

さざ波の立ちて夜明けの植田かな  ふみ女

連峰の影の眩しき植田かな  信義

遠目にも風景全て植田かな  悦子

逆しまに山の溶け込む植田かな  美代子

近江富士へ続く平野や植田風  三郎

手庇の中を植田の並びをる  博光

ふるさとへ車窓植田水あかり  和夫

三十年過ぎて嫁の座植田風  歌蓮 

園児らの手になる植田みづみづし  選者

   やまびこ(七月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

白椿息吐くやうに落にけり  勝彦

何するも母の笑顔や梅香る  鈴子

車椅子の姉にかざして春日傘  優子

じゃんけんに負けてふらここ押してをり  きぬ

桜鯛皿はみ出して誕生日  鈴枝

反抗期鰊の骨をとってをり  勝彦

こだはりも生きる力や梅白し  梅子

月おぼろ古刹の奥の能舞台  仙命

春風を句帳に挟む散歩道  胡蝶

菜の花の丘駆け抜けて妻逝けり  捨弘

耕して無心の時を得てゐたり  秀輔

春愁や亀一匹の甲羅干し  つとむ

たぽたぽと春潮寄せる浜離宮  道子

   俳誌嵯峨野 九月号(通巻638号)より

 

 

 

 


 

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十二月の詩(夕焼)

2023年11月29日 14時03分32秒 | 夏の俳句

                                  楽聖 水彩 6F

      夕 焼

夕焼へ尻取りをして母子ゆく  惟之

炎帝や地球沸騰はじまりぬ

繙けば吉祥天や秋涼し

核なき世果たせ果たせとつくつくし

半世紀ぶりの再会星祭

   誌上句会 兼題「彼岸花」

特選

彼岸花ほそぼそ記す農日記  みどり

彼岸花心つもりを子に話す  珠子

今日少し夫に会ひたや彼岸花  京子

彼岸花父母耕しの畦の道  東音

師の句碑に師の師の句碑に彼岸花  清治

子や孫と登る棚田や彼岸花  博光

彼岸花咲いて寂しさ増す野道  桂子

彼岸花かたまり咲くも淋しかり  靜風

五重の塔真向かひにあり彼岸花  紀久子

秩父路の同行二人彼岸花  翠

庭隅にすつと一本彼岸花  鈴子

祖も親も一つ屋に居て彼岸花  泰山

僧房の道は坂道彼岸花  文夫

永らへて今年も出会ふ彼岸花  靖子

檀家寺の入口に生ふ彼岸花  つとむ

曼殊沙華夫と歩調を合わせけり  安恵

彼岸花百年の恋焼き尽くし  治子

沿線の先の先まで彼岸花  光央

燃えて火の色褪せ空し彼岸花  三枝子

手を繋ぐ姉妹の下校彼岸花  知恵子

入選

古民家の裏庭白き曼殊沙華  洋子

句碑面磨かれ映る彼岸花  啓子

曼殊沙華咲くやお春の古刹訪ふ  藤子

畦沿ひの赤き炎や曼殊沙華  まこと

彼岸花開花待たれる昨日今日  祐枝女

河川敷一面占める彼岸花  信義

幼き日彼岸花避けて遠回り  敏子

陽を受けてティアラの如し曼殊沙華  秀輔

赤よりも白が目をひく彼岸花  美代子

彼岸花魔性の赤を愛しめる  廣平

彼岸花田圃アートの片隅に  洋子

彼岸花けふはあがらむ石仏  謙治

ふるさとをわすれぬ畦の彼岸花  秀子

赤赤と畑の守護神曼殊沙華  惟之

八十年在所の寺に彼岸花  稔

泣かないでと言ひつつ飾る彼岸花  博女

   やまびこ(十月号の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

月下美人月の色してひらきゐる  きぬ

あるがまま生きるは難し濃あぢさゐ  梅子

俎板の音にも夏の来てをりぬ  千代

羽虫すら潰せぬ指よ沖縄忌  佳代

ががんぼや系図に探す我が名前  勝彦

打水の呼ぶ水の風風の神  爽見

薫風を待たせて潜る躙り口  方城

水郷は雨こそよけれ濃紫陽花  みどり

句に学ぶ余生でありぬ蝸牛  みどり

六月の富士海の上雲の中  清次

水無月の有りと老舗や梅雨晴間  啓子

草を取る庭に奥行もどりけり  翠

山里の暮色のけぶる合歓の花  朋子

それぞれに生きて集ひし盆踊  たまき

   俳誌嵯峨野 十二月号(通巻第629号)より 

 

 

 

 

  

 

 

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十一月の詩(千光寺)

2023年10月31日 16時35分41秒 | 夏の俳句

    湖北の百合園 三浦武弘

      千光寺

小倉山みどりに映へて川の音  惟之

葉隠や戸無瀬の滝のほそぼそと

緑蔭や大悲閣道ひと疎ら

保津川の緑蔭上る渡し舟

万緑へ鐘の一打や千光寺

  誌上句会 兼題「星月夜」

特選

アンデスに国境は無し星月夜  光央

信号の無き湯の街や星月夜  惟之

アイガーの北壁くらし星月夜  つとむ

ベドウィンの野営のテント星月夜  清次

無言館鉄扉の重し星月夜  泰山

星月夜自墳の水の音清し  安恵

秀作

星月夜午前二時なる屋根の上  治子

星月夜こころやさしくなりにけり  東音

バレエ教室の十周年や星月夜  加代子

テント場のリュックに座り星月夜  知恵子

老いと言ふ静けさにゐる星月夜  靜風

星月夜ジャズ流れ来る港町  鈴子

星月夜万葉仮名の母の文  翠

待つ人の下駄の音来る星月夜  珠子

蒙古船群がる沖や星月夜  まこと

山小屋に被さってくる星月夜  美代子

手を引かれ逃げる路地裏星月夜  富治

平和なる世なればこその星月夜  靖子

叡山の行者の道や星月夜  敏子

振り仰ぐふるさとの山星月夜  洋子

未だ少しこの世に未練星月夜  廣平

雨あとの山の端まで星月夜  三枝子

沖合の潮目定かや星月夜  藤子

雨戸繰る暫しを亡夫と星月夜  洋子

山小屋を出て一歩より星月夜  博光

入選

星月夜ドビッシイーのこぼれ落つ  ふみ女

両に寝て真夜のしづけさ星月夜  啓子

人影の明るき小路星月夜  信儀

星月夜夢の中でも逢えるかも  みどり

異郷とて母の呼ぶ声星月夜  謙治

表まで送られ仰ぐ星月夜  祐枝女

逝き人の笑顔の写真星月夜  博女

星月夜山に抱かれる盆地かな  文夫

賓客の無き月見楼星月夜  秀輔

親と子の星座探しや星月夜  秀子

小渕沢のペンション二階星月夜  歌蓮

星月夜はらからは南の前線に  三郎

島影の遠近見えて星月夜  紀久子

   やまびこ(九月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

日を水のごとくに湛え柿若葉  爽見

捨てきれぬものに埋もれて更衣  三枝子

百姓のまねして余生茄子を植う  秀子

米粒が星になる朝花南天  美和

まだ人手借りずに過ごし梅雨に入る  海男

万緑や長命といふ贈り物  梅子

母と子の母校は同じ桐の花  近子

源流に滴りといふ力かな  篤子

大声で泣く児の眩し子どもの日  桂子

宵宮や亡き妹とすれつがふ  雄彦

母の日や静かに崩すオムライス  幹男

   俳誌嵯峨野 十一月号(通巻628号)より

 

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10月の詩(大津絵)

2023年09月30日 13時46分02秒 | 夏の俳句

           滋賀県立図書館 F6 水彩

      大津絵

 流鏑馬や近江神宮風走る  惟之

 初夏や夕陽の落つる厳島

 初夏や出町ふたばに列なして

 川の辺にパン屋オープン沙羅の花

 大津絵の鬼も傘持つ梅雨入かな

     誌上句会 兼題「土用干」

 特選

 土用干床の茶掛けに一礼す  安恵

 思い出の楽譜あれこれ虫払  靖子

 風入る被爆者名簿土用干  藤子

 師の本の赤丸あまたお風入れ  珠子

 戦災を免れし軸土用干  つとむ

 風入れの父の句集の匂ひかな  文夫

 秀作

 土用干の天井絵へと風流る  秀輔

 土用干ザックと並ぶ旅鞄  洋子  

 その中に小さき礼服土用干  美代子

 手際よき祖母の姿よ土用干  鈴子

 青春の匂ひただよふ曝書かな  敏子

 黒靴を黒きスーツを土用干  清次

 川風を入れ菩提寺の土用干  東音

 土用干喜怒の渦巻く文の束  謙治

 若き日の大河小説土用干  信義

 ふとよぎる母の匂ひや土用干  みどり

 風入れのインクの染みる背広かな  京子

 入選

 三尺の物差し動員土用干  啓子

 失恋の手紙しみじみ土用干  泰山

 畳紙に父の筆あと土用干  靜風

 土用干これは大事な父の本  賀代

 風入れは慣れと父は手伝ひに  稔

 姉の写真若きままなり土用干  紀久子 

 虫干や我が青春の黄ばむまま  まこと

 我が心虫干しせんと胸ひらく  惟之

 亡き父の褪せし書き込み土用干  秀子

 まだ籠る我が心身の土用干  翠

 土用干威儀を正して茶を喫す  三枝子

 土用干母の形見のっ古下着  博女

 部屋渡る風のうれしき土用干  洋子

 土用干短き児の世広げをり  廣平

  やまびこ(八月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

 春風もまぜて畑のにぎり飯  喜美恵

 亀鳴くや親より永く生きてをり  紀久子

 山笑ふ野仏の手に五円玉  京子

 哲学の道はこべらの安らけし  優江

 亡き妻の香のふとよぎる暮春かな  爽見

 山山にものの芽盛り国動く  方城

 笑むやうに目鼻いれたし春の月  良精

 朝市の竹の子縄にくくられて  節子

 洗われて海の疵もつ桜貝  まこと

 桜しべ降るや千回目の素振り  文香

 水底の村の歴史を知る桜  彩子

   俳誌嵯峨野 十月号(通巻第637号)より  

 

 

 

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十一月の詩(万福寺)

2022年10月31日 15時27分53秒 | 夏の俳句

                   秋の訪れ 50号 三浦武弘(大津市)

      万福寺

 林間に四葩波打つ三室戸寺  惟之

 本堂へ鐘を打たばや時鳥

 梅雨晴れて一駅歩き万福寺

 大寺の門を叩かば隠元忌

 涼しさの廊下に下がる魚版かな

    誌上句会 兼題「渡り鳥」

 特選

 次つぎと湖北の山を渡り鳥  惟之

 宇和海のだるま夕日や鳥渡る  京子

 糸底を切りて一息渡り鳥  秀穂

 旋回し列を正して渡り鳥  三枝子

 この星に国境はなし渡り鳥  三郎

秀作

 あの山を越えれば湖よ渡り鳥  紀久子

 比良比叡越えて降りくる渡り鳥  博女

 この湖の水の匂よ渡り鳥  治子

 渡り鳥仰げば遠く海の音  美智子

 鳥渡る茜空なる日本海  和男

 斑鳩の三塔昏れて鳥渡る  洋子

 日章旗揚ぐる都庁鳥渡る  珠子

 鳴き声の一塊となる渡り鳥  博光

 県境の八ケ岳大橋や鳥渡る  翆

 リーダーの一声高き渡り鳥  詔義

 鳥渡る皆の信じるその道を  秀子

 海峡はこころして飛べ渡り鳥  まこと

 船旅を友とデッキに渡り鳥  文夫

 行く雲に道をゆずられ渡り鳥  篤子

 風に告ぐこの小川よと渡り鳥  篤子

 庭に来し紋をつけたる渡り鳥  胡蝶

 藍深むうぶすなの空鳥渡る  洋子

 長旅を休めるお濠渡り鳥  捨弘

 農終へ仰ぐ西方鳥渡る  泰山

 天空の城址よぎる渡り鳥  藤子

    やまびこ(九月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

 捩花を咲かせて婆の反抗期  三枝子

 風薫る心の通ふ人のゐて  和子

 夏の雲摩文仁の丘の鉄の雨  ともはる

 道おしへゆっくり来いよとふり返る  きぬ

 ありし日の妻の気配を白団扇  爽見

 薫風や男手前の足袋袴  洋子

 師と子らの鼓のひびく宵若葉  洋子

 山びこの声やはらかき若葉山  久子

 まだ奥に人住む気配山つつじ  隆を

 切り株の千年の黙鳥雲に  篤子

 米一合八十八夜の水で研ぐ  篤子

 どう食ぶる土筆三本子の土産  方城

 菖蒲湯の菖蒲の長さもてあまし  鈴子

 つれだちて越前平野麦の秋  悦子

 山に来て山の声聞く暮春かな  京子

 麦秋や日輪赤く沈みゆく  朋子

 家出でもしさうな妻のサングラス  泰山

 荒川の河童へそ出せ子供の日  博光

     俳誌嵯峨野 十一月号(通巻第616号)より

     

 

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10月の詩(頬の花)

2022年10月01日 18時17分18秒 | 夏の俳句

           懐かしい林檎 6F 水彩

     朴の花

通学の子らの見上げる朴の花  惟之

やはらかに両耳撫づる青田風

鎮魂の知床岬朴散華

曾良の墓詠ひし友よ沙羅の花

ゆっくりとお前も生きろ大蚯蚓

    誌上句会 兼題「爽やか」

特選

爽やかや風尖りゆく石切り場  洋子

爽やかに父とハミング赤とんぼ  治子

爽涼や天使の眠る乳母車  珠子

病癒ゆる人見送りぬ爽やかに  博女

爽やかや琵琶湖に浮かぶヨットの帆  靜風

秀作

爽やかや湖へ裾曳く近江富士  三枝子

爽やかに富士垣間見る小海線  啓子

爽やかなしぶきに黙す摩崖仏  みどり

山腹に一湖の澄みて爽やかに  紀久子

爽涼の風と走るや若き車夫  文夫

爽やかに挨拶散歩の顔なじみ  洋子

爽やかや藍染浴衣発表会  招義

爽やかや屋根から屋根へ大鉄塔  三郎

産土を風爽やかに吹く日かな  泰山

爽やかや海を遠見の牧に立ち  稔

伎芸天へ一礼深く爽やかに  洋子

爽やかに十国見ゆと言ふ峠  和男

爽やかや信州山清路の旅  秀輔

さやけしや今朝の目覚めの気持ち良き  祐枝女

爽やかや風吹き抜ける武家屋敷  敏子

整列の球児の涙爽やかに  まこと

爽やかやリズム刻んで山の雨  翆

風の吹く朝の牧場や爽やかに  美智子

爽やかや読経流るる九品仏  万智子

爽やかやお守り光るランドセル  博之

入選

せせらぎのひびき爽やか峡の谷  靖子

シュワ―シュワ―と炭酸水の爽気かな  恵子

爽涼や蘆を濡らして渚駆け  蒔子

爽やかや逆転満塁ホームラン  捨弘

爽やかや湖畔のテラス彩深め  克彦

土器を未来へ投げる爽やかさ  胡蝶

学僧の礼深深と爽やかに  廣平

爽やかにクラリネットのブラスかな  惟之

爽やかや嵯峨野を過る川の風  信義

爽やかやラのハミングの歌ひ出し  歌蓮

爽やかな目覚めの断捨離今日こそは  陽子

登校の朝の挨拶爽やかに  美代子

選者

平泉文化の里や爽やかに  東音

   やまびこ(八月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

藤房や風のもつれを風のとく  きぬ

ゆく雲に一句のそだつ暮春かな  きぬ

余命など人ごととして青菜飯  爽見

野仏の石にかへるやすみれ草  そよ女

逃げ水を追ってハーレーダビットソン  胡蝶

この家のものにござると軒燕  節

葉桜や戦火かなしきくにのあり  東音

春雨にゆるにきつたる水面かな  爽見

鳥帰る見知らぬ空へ身を任せ  道子

振り向けば今日が暮れゆく山桜  千代

空き家にも残りし屋号燕来る  節子

絵画展余韻の胸へ花吹雪  美枝

副作用と治療の狭間春帽子  紫陽

春北風や青き地球に戦下の火  咲久子

野に山に光撒きゆく若葉風  つとむ

   俳誌嵯峨野 十月号(通巻615号)より

  

 

 

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