坊山の山荘 6号水彩
リラ冷えや自治会の役もう廻り 惟之
朝食に初穫れ苺ひとつ添え
信楽の大狸なり更衣
初夏や大聖堂に白けむり
母と娘の晴の連弾風薫る
誌上句会 兼題「老鶯」
特選
老鶯や比良林間の闇を抜け 惟之
老鶯の声盛んなり閻魔堂 幹雄
山門を抜け老鶯の声聞こゆ 博女
老鶯や巻き積み上げて備前焼 紀久子
秀逸
老鶯やワンゲル帽の缶バッジ 正道
老鶯の声澄みとほる比叡の里 静風
残鶯や寺の樹木医思案めく 珠子
老鶯を聞きつアルバム繰る一日 康平
老鶯や谷幾つ超え鞍馬寺 秀子
老鶯や丹後海岸七曲り 和花
老鶯の近しや友と黙の歩に 啓子
老鶯の声に始まる一日かな ふみ女
老鶯や菅公奉る村の杜 華文
落柿舎を訪へば老鶯しきりなり 鈴子
老鶯や読みさしの本テーブルに 歌蓮
入選
晩学を急がす老鶯図書の窓 謙治
老鶯やここより険し柳生道 三枝子
記念樹の育つ里山夏鶯 洋子
老鶯や低き藪より高き声 孝子
夏うぐいす間合巧みに谷へだて 藤子
廃村を守り老鶯泣き止まず 光央
老鶯や牧場朝霧脱ぎ切れず 稔
老鶯やひすがら谷を違えずに 畔
老鶯や熊野詣の道すがら 靖子
老鶯や風をはらんで山響く 悦子
老鶯をしみじみ聴くや離れにて 敏子
老鶯の連呼に答ふすべも無し 秀穂
老鶯や声をかぎりに過疎の村 利里子
老鶯や数寄屋作りの食事処 美代子
産土を夏うぐいすの恣 泰山
老鶯に招かれめぐる蘆花旧家 洋子
丘登り来て老鶯の影いずこ 信義
雨の日も老鶯峪に木霊して まこと
やまびこ(七月号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句
若鮎の堰越す命かがやけり 靖子
改札に笑顔を見つけ春の風 啓子
この春はあなたのいきたかつた春 灯花
生きている事のうれしき桜かな 梅子
馬の子の生れ敷藁厚く労りぬ 三枝子
曲水や夢の跡詠むはせを句碑 仙命
子の息に吹き足す母や紙風船 まこと
たらの芽の摘むたび山の近くなる 博光
こんにちは道に整列つくしんぼ 古奈
春の日や抱つこ紐より四股跳ねる 幸子
二群れはひとつと成りぬ鳥曇 惟之
花の下三合飲めば唄の出る 捨弘
風神も雷神もゐて春一番 ひさ女
仏間より香りほのかに桜餅 ひさ女
俳誌嵯峨野 九月号(通巻第650号)より