水彩画と俳句の世界

自然を愛し、感性を大切にして「水彩画と俳句の世界」を楽しんでいます。

三月の詩(水打つ蜻蛉)

2024年02月29日 17時22分41秒 | 秋の俳句

       開設110年の東京駅 8号水彩

     水打つ蜻蛉

次次に水打つ蜻蛉山の池  惟之

津田梅子を印刷中や秋の暮

菰巻いていろは松なり彦根城

結ひ上げて七五三なり椿山荘

木之本の地蔵菩薩や初時雨

    誌上句会 兼題「初時雨」

特選

感染症ひとけたへりし初時雨  博女

イマジンの聞こゆ公園初時雨  光央

仮縫ひの針の軋みや初時雨  三枝子

初時雨こんにゃく色の武相荘  秀輔

秀作

発つ子等の尾灯潤ます初時雨  稔

初しぐれ漆の椀の出汁の味  文夫

竹林の中の明るさ初すぐれ  博光

これよりは西国街道初時雨  鈴子

風の音舟軋む音初しぐれ  みどり

初時雨昭和の路地をぬらしけり  信義

初時雨俳句の道の果てもなし  珠子

入選

窓叩く小さき手のひら初しぐれ  廣平

初時雨背に気配の夜坐かな  謙治

待つ人の遅れ気になる初しぐれ  洋子

初時雨無断で借りる寺の門  まこと

大比叡のケーブル待や初時雨  知恵子

軒先に犬は遠見の初時雨  幹男

朝市に出会ひの村や初時雨  藤子

初時雨ちょつと寄道したやうに  ふみ女

初時雨比叡の道を修行僧  靜風

山里の茅葺屋根に初時雨  裕枝女

初時雨いろ増す京の四方の山  秀子

故郷は無人駅なり初時雨  紀久子

晩鐘のしづかな里や初時雨  靖子

嵯峨野路の童地蔵や初時雨  惟之

寺前の片手拝みや初時雨  富治

芭蕉像の菅笠ぬらす初時雨  敏子

感情をぽつりとこぼす初時雨  悦子

はじめてのペットを迎え初時雨  倫子

孫作るカレーの味し初時雨  翠

マンホールの蓋に市の花初時雨  美代子

庭しかフエードアウトの初しぐれ  啓子  

異国語の飛び交ふ渋谷初時雨  洋子

明け方の土の湿りや初時雨  つとむ

    やまびこ(一月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句)

たんたんと流る暮らし走馬灯  久子

花芒さみしき時は野を歩け  みどり

肩車の小さき手の捥ぐ林檎かな  咲久子

コスモスの乱れに山の動きけり  東音

鰯引く水平線を曳くごとく  勝彦

稲の花憲法九条ありてこそ  爽見

赤とんぼ小首かしげて止まりけり  悦子

老いて尚飽きぬこの里合歓の花  和江

寝入る児の薄き爪切る夏の夜  久代

オラショ聴く島の教会秋日和  藤子

秋夕焼乳房ひきずり牛帰る  泰山

   俳誌嵯峨野 三月号(通巻第632号)より

 

 

  

 

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二月の詩(こぼれ萩)

2024年02月01日 10時58分14秒 | 秋の俳句

                                             懐かしい林檎たち 6号 水彩

      こぼれ萩

穏やかに上る八十路やこぼれ萩  惟之

秋天へ祈る平和や慈母観音

秋寒や一億円の束重し

秋の宵ラクビ―を見てバレー見て

十歳の孫が三人秋うらら

      誌上句会 兼題「浮寝鳥」

特選

クレーン車伸びゆく中洲浮寝鳥  洋子

浮寝鳥はやくも一陣来て睦む  靖子

長旅を終へて浮寝の鳥の群れ  安惠

心置きなく浮寝鳥数へをり  東音

さざ波の揺れにまかせて浮寝鳥  三枝子

秀作

山迫る余呉の湖浮寝鳥  清次

小魚を追ひし辺りや浮寝鳥  治子

ただ一羽湖岸離るる浮寝鳥  翠

浮寝鳥それぞれそっぽむいてをり  文夫

群れゐても一羽一羽の浮寝鳥  廣平

子守唄漏るる病窓浮寝鳥  謙治

浮寝鳥淵に夕闇迫りけり  洋子

浮寝鳥寄り来てやすむ浮寝鳥  博女

湖の波に抱かれ浮寝鳥  鈴子

ありなしの風にも揺れて浮寝鳥  賀代

大池の一隅占めて浮寝鳥  佑枝女

晩節の吾に等しき浮寝鳥  珠子

暮れなずむ堰に群れゐる浮寝鳥  惟之

陣形を変へ浮寝鳥風任せ  まこと

神の池はなれて四五羽浮寝鳥  紀久子

内堀の夕日ゆるるや浮寝鳥  敏子

入選

櫓の揺れに合わせ舟漕ぐ浮寝鳥  光夫

漂いて夢の最中浮寝鳥  泰山

目つむりて遠き過去追ふ浮寝鳥  みどり

薄日さす都会の川の浮寝鳥  幹男

浮寝鳥静謐の世を願ふかに  秀輔

星こぼる湖のしじまや浮寝鳥  秀子

余生にも波風ありて浮寝鳥  靜風

浮寝鳥久美浜湾てふ里の浦  稔

身軽さを羨ましとも浮寝鳥  美代子

夕光に向きさだまらぬ浮寝鳥  藤子

母恋し夕日の湖の浮寝鳥  三郎

浮寝鳥写生の我もまどろみぬ  啓子

浮寝鳥の影やまたたく夕の星  信義

東雲や尾羽振りをる浮寝鳥  博光

    やまびこ(十二月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句から

武蔵野にふくらむ入日橋涼み  東音

走馬灯みんな回ってみんな影  利里子

さらさらと風の文字生む稲田かな  廣平

昼寝覚水のやうなる夢のあと  梅子

蚊帳に入る作法うるさき母なりき  方城

初秋の波に漂うごと二度寝  洋子

西瓜切る十の瞳にみつめられ  そよ女

まつさらの風と山会ひぬ今朝の秋  耕

原爆忌心ひとつの一分間  小鈴

    俳誌嵯峨野 二月号(通巻631号)より    

 

 

 

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令和六年一月の詩(明智越)

2023年12月29日 15時43分01秒 | 秋の俳句

              湖北秋暁 F30号(水彩)

 新年あけましておめでとうございます。60歳半ばで始めたブログ「水彩画と俳句の世界」は、とても良い仲間と結社に恵まれ、これまで無事に続けることができました。今年もどうぞよろしくご愛顧を賜りたくお願い申し上げます。

     明智越

秋麗やりすの横切る明智越  惟之

山並へ子らと駆けつこ稲穂波

橡の実をラインで見せて名を問う子

劇団の初舞台なり孫の秋

峠より京一望や花すすき

    誌上句会 兼題「枯木立」

特選

枯立木下を玉川上水路  清次

里山に住み枯木立枯木立  三枝子

眠らない都会の灯り枯木立  東音

枯木立いつも誰かが蘆花の墓  珠子

法灯を守りて比叡の枯木立  靜風

秀句

公園の遊具はきりん枯木立  安恵

現世やわが身と似たり枯木立  泰山

山荘や星を宿せる枯木立  翠

夕映えのl落暉を背に枯木立  鈴子

枯木立ペダルのギアを上げにけり  光央

枯木立吊るす屋台のお品書き  知恵子

となり家の土蔵をしのぐ枯木立  みどり

妖精のオブジェが招く枯木立  洋子

蒜山は遠くに見えて枯木立  由紀子

一羽づつ烏のとまる枯木立  洋子

彼木立見え隠れして黄泉の国  治子

てっぺんに鴉の巣あり枯木立  惟之

寒太郎ひゅうひゅう抜ける枯木立  賀代

我に似し野に一本の枯木立  つとむ

独り言聞ひてゐそう枯木立  敏子

    やまびこ(十一月号の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

紫蘇もんで生命線の染まりけり  千代

鎖場の鎖のみ込む夏の霧  勝彦

大西日背負いておりる琵琶湖岸  博女

明日といふあてにならぬ日トマト捥ぐ  隆を

八の字にくぐる八十路の茅の輪かな  怜

バス停に手書きのダイヤ夏祭  そよ女

億年を思えば一時蝉も吾も  豊子

大き影ゆらし黒揚羽の無音  史子

よく笑ふ子を真ん中にソーダ水  美幸

故郷へ道ひと筋や青田風  敏子

幸せは自分で見つけ日照草  清子

炎昼や貼りつく家の影  信儀

母からの浴衣今年も袖通す  裕世

   俳誌嵯峨野 一月号(通巻第630号)より

  

 

    

 

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三月号の詩(衣被)

2023年02月26日 16時13分56秒 | 秋の俳句

             湖北秋暁 30号水彩

      衣被(きぬかつぎ)

 無患子の降る川の辺に夕陽落つ  惟之

 親芋を提げて重たき日暮れかな

 衣被剥きて八十路の朝かな

 銀杏散る瀬田の唐橋比良比叡

 ぴかぴかに薬缶を磨き冬に入る

      誌上句会 兼題「冬霧」

 特選

 開かれし仏のまなこ冬の霧  博女

  仏像に目を入れると魂が通う。冬霧に仏の眼差しが暖かい。

 護摩僧の数珠八方や冬の霧  三枝子

  冬霧の中真言を唱え仏の加護を願う。数珠八方が巧み。

 一命を奪ひ冬霧黙しけり  治子

  「冬黙し」が悲しみ募らせる。胸を打つ巧みな表現。

 ムーミンの出さうな木立冬の霧  洋子

  ムーミンは暗いとこがろが好き。霧の中なら覗いている。

 北天の冬霧の中牛を飼ふ  泰山

  北国の冬霧の中、牛への愛情が伝わる。

 冬霧やまたひとり友ゐなくなる  東音

  人生の寂しさを冬霧が包む。

 冬霧に更なる霧の生まれけり  美智子

  平明な表現で霧の動きを捉えている。

 秀作

 錫杖の音冬霧の中を行く  廣平

  遠ざかる錫杖の音を冬霧が包む。僧の読経もかすかに。

 冬霧や風に押されれて波止場まで  智代

  風に押されたのは霧それとも作者なのか。

 冬霧のはれて車窓に近江富士  洋子

  三上山は近江富士と呼ばれる。冬霧が晴れ歓声が聞こえる。

 この奥に女人堂跡冬の霧  藤子

  女人禁制が解かれるまで女人堂。今は霧が立ち込めるばかり。

 冬霧や奥吉備の軒皆低し  みどり

  石州瓦と弁柄格子の吹屋あたり冬霧に包まれた軒が懐かしい。

 熊野路の山の幾重や冬の霧  靖子

  神々が住む熊野。山の幾重が冬霧の深さを思わせる。

 冬霧の向かう奥多摩青白く  啓子

  奥多摩の神秘がうかがえる一瞬の情景。

 対岸ににじむ灯や冬の霧  鈴子

  ほほのかな灯りに安堵感が感じとれる。

 冬霧の晴れ通学のフェリーかな  知恵子

  離島の学校であろうか、霧が晴れると青い海。

 わたくしの深き吐息か冬の霧  博光

  吐息と冬霧がわたくしと通い合う。

 冬の霧やがて朝日の登りくる  紀久子

  朝日と共に希望も現れる。

 水の神祀る貯水池  三郎

  水の神は女性神と思われる。冬霧と水の神が響き合う。

 冬霧の中を落ち合う大河かな  清次

  落ち合うのは本流と支流。

 冬霧に灯りまたたく千光寺  京子

  魔除けの祈願が心に灯りをともす。

     やまびこ(一月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

  人愛しひとに愛され秋深む  道子

  くつきりと雲寄せ付けず今日の月  治子

  玉入れの玉は赤白天高し  優子

  句を学ぶ一人ひとりの良夜かな  爽風

  猫の目と出あふ抜け道星月夜  布美子

  同年の患者親しき秋の窓  浅子

  名月を追い駆けて行く列車かな  敬子

  秋思ふと来し方長く短くで  杏子

  あるがまま向き合う余生草の花  靖子

  身に入むや父の残せる農日記  鈴枝

  伍長の碑蝉が一匹泣いてゐる  怜

  縄文の土偶の踊る星月夜  憲勝

  ルビーの歯見せて石榴の高笑ひ  廣平

  秋風に松を残して庭師去ぬ  倫子 

    俳誌嵯峨野 三月号(通巻620号)より  

 

 

 

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二月号の詩(雁渡る)

2023年01月28日 16時34分17秒 | 秋の俳句

                        

                    牧場の春(中津川市・ふれあい牧場)

    雁渡る

 瀬田川の空次つぎと雁渡る  惟之

 暁の湖北の目覚め稲の秋

 本陣の大きな竈秋深む

 小菊咲く大石内蔵助墓前

 萩刈つて少し身の辺の整理かな

     誌上句会 兼題「冬の虹」

 特選

 余生なほファンタジックな冬の虹  藤子

 名曲のロシアをしのぶ冬の虹  博女

 まつすぐな田みち泥みち冬の虹  博光

 冬の虹自ずと第九口ずさむ  歌蓮

 コロナ禍にやさしい嘘や冬の虹  秀輔

 秀句

 吉報を帯にはさむや冬の虹  三枝子

 夕暮れの過疎の里山冬の虹  祐枝女

 人類の行方は如何冬の虹  つとむ

 七曲り右に左に冬の虹  洋子

 大山を覆いて冬の虹二重  紀久子

 雲までは届かず消ふる冬の虹  文夫

 七色にひとつ小さき冬の虹  美代子

 冬の虹振り向けばもう消えさうな  泰山

 アンケート広つぱ用途冬の虹  啓子

 父母眠る山に架かるや冬の虹  篤子

 遥かなる秩父連山冬の虹  翠

 どんな世でも明日への希望冬の虹  三郎

 北山に夕暮れ冬の虹淡し  秀子

 冬の虹かかる琵琶湖や浮御堂  静子

 湖跨ぎ比良にかかりし冬の虹  惟之

 冬の虹琵琶湖とあの世つなぎをり  胡蝶

 荒海の遠くを跨ぐ冬の虹  信義

 幼子に合わせる歩幅冬の虹  陽子

 髪を染め老いを受け入る冬の虹  治子

 この里が終の住処や冬の虹  敏子

     やまびこ(十二月号の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

 砂浜の砂を均して秋の風  秀子

 夢あらば老いのも青春今日の月  廣平

 これよりはゆつたり生きむ秋桜  杏花

 朝顔に晩年の日日愛ほしむ  東音

 雨やんで案山子の顔を拭く農婦  きぬ

 米を研ぐ音軽やかに厄日過ぐ  鈴枝

 風鈴に誘はれ路地に迷ひ入る  勝彦

 山巓の灼くる鎖を握りしめ  勝彦

 しみじみとひとりになりし魂迎  爽見

 核のなき平和を祈るや終戦日  三枝子

 草枕秋の七草諳んずる  怜

 揚花火終はり独りと気付きけり  千代

 立秋や期限切れたるパスポート  そよ女

 いづれかの手で秋つかむ千手仏  幸江

 沈黙はひとつの返事白芙蓉  小鈴

 耳すます無限鯨にも終戦日  京子

 空蝉や我に生き抜く刀欲し  里子

 青田波千の棚田を駆け登る  咲久子

 青葉して千古を今に古墳群  和男

 山風に遅れて揺るる秋簾  多喜子

 朝凪の大河こぎゆく小舟かな  道子

     俳誌 嵯峨野(二月号(通巻619号)より

 

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令和5年1月号の詩(山羊の声)

2023年01月02日 18時18分30秒 | 秋の俳句

  

               下鴨神社 8F 水彩 

     山羊の声

 遠山やひまわり畑に山羊の声  惟之

 ずぶ濡れで駆け回る子ら散水車

 八ヶ岳生もろこしの甘さかな

 風そよぐ朝の公園つくつくし

 虫の音を聞きつつ妻と夜の散歩

    誌上句会 兼題「着ぶくれ」

 特選

 皇后の列車に旗を着ぶくれて  知恵子

 我が終始知っている杖着ぶくれて  みどり

 語り合う宇宙のロマン着ぶくれて  洋子

 語り部の胸のブローチ着ぶくれて  珠子

 着ぶくれて宇宙も少し膨らみぬ  秀穂

 秀作

 ぎこちなき民謡稽古着ぶくれて  加代子

 論語読む声明朗と着ぶくれて  博光

 八十路なほな学ぶことあり着ぶくれて  翠

 着ぶくれに着ぶくれの押す駅ホーム  啓子

 着ぶくれて立ち往生の寺詣  胡蝶

 カルnうチャーへ来る顔なじみ着ぶくれて  稔

 着ぶくれて許す心の芽生えけり  文夫

 着ぶくれて窓辺に夜空確かめぬ  博女

 何となく両の手遠く着ぶくれて  廣平

 恋の過去深く問はれて着ぶくれて  三枝子

 着ぶくれて幸せですと老ひ二人  捨弘

 ペンギンと向き合うてをり着ぶくれて  京子

 ダイアモンド富士見に行かん着ぶくれて  三郎

 愛着の服この年も着ぶくれて  万智子

 着ぶくれてカムフラージュのクラス会  歌連

 大縄を持つ子回す子着ぶくれて  賀代

 着ぶくれて着ぶくれて席譲ずらるる  篤子

 夜更けまで懐古談義や着ぶくれて  靖子

 ふっくらと吉祥天女着ぶくれて  惟之

 入選

 着ぶくれのマドリョーシシカの羈束かな  治子

 着ぶくれてバス待つ列の長き黙  信義

 壮健と言わるる晩年着ぶくれて  まこと

 着ぶくれて振り向くほどの変はりかな  陽子

 着ぶくれてバス停までの急ぐ道  紀久子

 着ぶくれて日向の道をひとり行く  祐枝女

 着ぶくれて世事疎くなり鄙暮らし  泰山

 着ぶくれて街にウインドウショッピング  秀子

 着ぶくれて時計回りの散歩かな  美智子

 着ぶくれて映画の恋に涙せり  和男

 着ぶくれの晩年の父まなうらに  藤子

 亡き母の着物姿や着ぶくれて  敏子

 着ぶくれれの妣の顔して吾なりし  征子

 着ぶくれて旅の追憶男鹿岬  靜風

     やまびこ(十一月号の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

 炎天や影は歩幅をはみ出さず  清次

 茄子漬の紫紺に染まる小さき幸  杏花

 千体の仏の中にゐて涼し  近子

 アリスまだ戻れぬ真明易し  布美子

 朝まだき山は濡れをりほととぎす  研二

 墓洗ふ寺解散を詫びながら  涼子

 対岸の雨筋白し半夏生  勝彦

 偕老のはるかな日日や夕端居  勝彦

 七曜の過ぎる早さや日日草  久子

 緑陰に牛の姿で石眠る  隆を

 藍染めののれんの匂ひ夏つばめ  布美子

 図書館の卓に置きある夏帽子  山女魚

 寝入る子の髪にプールのにほひかな  由美

     俳誌 嵯峨野 一月号(通巻618号)より

 

 

 

 

 

 

 

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三月の詩(無患子)

2022年03月01日 13時25分04秒 | 秋の俳句

 

            雛人形の五人囃子の鼓と小太鼓 

                 無患子

初生りの小さき檸檬香を放つ  惟之

無患子の降る川の辺を子等とゆく

献立にシェフの朱印や秋夕焼

山道を埋め尽くして朴落葉

大銀杏光を放ち散り急ぐ

    誌上句会 兼題「去年今年」

特選

一編の詩が拠り所去年今年  捨弘

星星の海へ消えゆく去年今年  富治

棟梁の遺訓継ぐ子や去年今年  三枝子

学ぶ仲間学べるなかま去年今年  珠子

戦なき平和寿ぎ去年今年  紀久子

秀作

井戸水を汲んで目出度き去年今年  まこと  

山一つ越えて健やか去年今年  佳子

去年今年眉目の語る納め句座  泰山

去年今年楽しく生きて今仕上げ  胡蝶

ポケットに残る一円去年今年  篤子

去年今年年男の座譲りたり  文夫

シルバーの務めを杖に去年今年  稔

世の闇を祓ひてゆくや去年今年  博女

去年今年佳き事さがし指を折る  万智子

浄暗の篝火明かし去年今年  恵子

長らへて申し分なき去年今年  みどり

去年今年俳句ノートの一冊目  治子

読み返す寂聴源氏去年今年  知恵子

朝な夕な歳時記を繰り去年今年  咲久子

何気なき日日大切に去年今年  洋子

入選

八十路への扉を敲く去年今年  惟之

叡山の法灯不滅去年今年  ともはる

篝火の火の粉零るる去年今年  信義

去年今年変わらぬ友の心かな  静風

こだはらぬこそ自由なり去年今年  鈴子

寂聴尼の説法聞こゆ去年今年  秀輔

余生なほ幸せ思ふ去年今年  テル

祠あらば手合わす習ひ去年今年  翠

去年今年雑務に追はれ余生なほ  祐枝女

読みさしへ挟む栞や去年今年  洋子

縁ありて集ふ仲間や去年今年  三郎

平凡な暮らし楽しむ去年今年  克彦

人生は片道切符去年今年  廣平

何事も時が解決去年今年  敏子

解決の糸口見えぬ去年今年  美代子

    やまびこ(一月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

四五軒の里を彼方に蕎麦の花  治子

露けしやとにもかくにも米寿越え  爽見

ひぐらしや若狭へ続く十八里  そよ女

友の訃や思い出畳む秋扇  千恵子

大壺に挿して風湧く花芒  和子

山宿の名月掬ふ露天風呂  三枝子

清貧は父の生きざま星流る  怜

秋澄むや使ふことなき旅鞄  近子

蜻蛉追ふ子らに大きな空のあり  近子

行く雲の果ては海あり稲を刈る  みどり

月の舟別れも告げず漕ぎゆきぬ  洋子

灯火親しむ古書に残れる蔵書印  利里子

八月は追憶の月重き月  邦弘

老ひとまた違ふ淋しさ秋夕焼  静風

コスモスの色を揺らして風の手話  廣平

朝顔や錆びたポンプの残る町  彩子

  俳誌嵯峨野 三月号(通巻第608号)より

 

 

   

 

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二月の詩(光悦寺)

2022年01月29日 13時33分58秒 | 秋の俳句

                                   パンと赤いネクタリン F8 水彩        

     光悦寺

鷹峯三山空へ秋晴るる  惟之

椿の実三つ四つ光る光悦寺

光悦の墓前に立てば秋の風

黙浴の露天の静寂月明り

父と子の語る立湯や零れ萩

    誌上句会 兼題「冬木立」

特選

裏山の口開いてをり冬木立  清次

青空の余白を広げ冬木立  篤子

胸襟を開き切つたる冬木立  廣平

梢越し海の真青や冬木立  三枝子

寒林と競うマンション多摩の空  洋子

秀作

枝先に星鏤めて冬木立  洋子

根元まで日の暖かし冬木立  まこと

乾きたる風が過ぎゆく冬木立  みどり

山の端の夕日透かして冬木立  東音

熊除けの鈴鳴るしじま冬木立  恵子

石を割る発破の音や冬木立  紀久子

うとうとと日のぬくもりの冬木立  鈴子

要らぬものすべて捨てきり冬木立  文夫

無骨なる生きざま晒す冬木立  泰山

黒黒と鷺の空き巣や冬木立  秀輔

   やまびこ(一二月号作品から)感銘・共鳴)ーー私の好きな一句

老いるとは知恵を積むこと竹の春  杏花

立秋やどこへも行かぬ紅をさす  優子

かなかなの息ととのへる間合かな  勝彦

終戦日空の青さをくちぐちに  憲勝

初めての句会へ秋の橋渡る  けいこ

窓といふ窓の緑や夏館  洋子

牧牛の賢者の目して炎天下  圧知

胡瓜一本買ふに目利きの所作をして  隆を

トルソーが廊下の端に広島忌  怜

鰡飛ぶや夕陽の沈む日本海  ともはる

秋蝉の声透きとほる夕並木  洋子

朝顔のバックネットを越ゆる意気  山女魚

三線と波音だけの星月夜  そよ女

桐一葉逝く時はゆく命かな  富治

夕焼やひと日一度師を思ひ  朱實

身に入むやリモートで会ふ母の顔  隆子

割りばしのいびつに割るる暑さかな  美代子

   俳誌嵯峨野 二月号(通巻第607号)より

 

  

 

 

 

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一月の詩(稲たわわ)

2021年12月31日 15時33分05秒 | 秋の俳句

            下鴨神社(京都市左京区下鴨)

    稲たわわ

帰京する子に手渡しぬ賀茂なすび  惟之

山並へ子らとスキップ稲たわわ

兄いもと笛吹き合ひて秋の宵

雨上がり子らと摘みゐる秋の花

車椅子テニスに見入る夜半の秋

   誌上句会 兼題「小春」

特選

達磨さん転んだが好き小春の日  廣平

母の紅さして幼の小春かな  文夫

多摩穏やか富士穏やかに小春風  清次

夫の忌の近き窓拭く小春の日  みどり

小春風スキップの子の遠ざかる  洋子

秀作

嬰の瞳の母追ふ縁小春  三枝子

詩集手に日溜りベンチ小春めく  東音

久久の銀ぶら鳩居堂小春  恵子

磯釣りの竿のしなりや小春風  篤子

隣り合ふ畑に小春の立話  和男

縁越えて仏に頒つ小春の日  啓子

小春日の近江富士なり湖ひかる  惟之

同齢の医師の励まし小春の日  秀輔

散髪へと急がす妻ゐる小春かな  稔

新築の小槌の響く小春かな  鈴子

大富士や銀河の海の小春風  信儀

  やまびこ(十一月号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句

花茣蓙の花を枕にひと寝入り  布美子

どこまでも自転車でゆく夏休み  智子

猛暑日や駄句の自選に悩みをり  靖子

滴りを抱きし岩に神おはす  きぬ

新茶淹れかへて一茶話など  爽見

星今宵少年からの句の届き  洋子

老鶯の声しづけさを深めけり  久子

誰よりも汗光らせて子の帰る  久子

ほとばしる昭和の香り夏蜜柑  方城

朝涼やよべの秀作舌頭に  通幸

白シャツの眩しき少年夏燕  節子

草刈りの音より強し草いきれ  慶子

朝凪の風のささやきひとり占め  京子

万緑の中から列車保津の渓  胡蝶

軒先が呼吸するかに夏燕  まこと

手の皺は人の年齢晩夏光  和男

五十年変わらぬ手順梅を干す  せつ

  俳誌嵯峨野 一月号(通巻606号)より

 

 

 

 

 

 

   

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十二月の詩(東京五輪)

2021年11月30日 15時45分29秒 | 秋の俳句

 

          田村神社の紅葉(甲賀市土山町北土山)

  東京五輪

銅メダル賭けて七人蝉時雨  惟之

激闘の東京五輪夏終はる

かなかなのやめば夜明けの雨上がる

川風や時に途切れて虫の声

朝顔や五輪の記事の捨てがたし

  誌上句会 兼題「木の実」

特選

瓦焼く窯の火鳴りや木の実落つ  三枝子

校庭に下校のチャイム木の実降る  よう子

自転車のかごに木の実と文庫本  洋子

湖へ向く十二神将木の実ふる  惟之

読書てふ刻のありけり木の実ふる  みどり

秀作

幼より貰ひし木の実箱に鳴る  洋子

抽斗の小箱にめんこ木の実独楽  清次

掌を零るる木の実夫の笣       恵子

父母の墓抱きし大樹木の実降る  篤子

薬研坂青い車に木の実降る  鈴子

木の実落つ音眠らせて水面かな  廣平

木の実ふる日暮れははやし志賀の道  静風

講堂の裏は草むら木の実落つ  祐枝女

裾山をくるむる夕日木の実降る  東音

園丁の鋏に機嫌木の実降る  泰山

  やまびこ(十月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句

桜桃忌いつものやうに雨となり  勝彦

人は皆違っていいの額の花  久子

霊山の裾野の里や青田波  東音

鈴の音の風の拝殿緑さす  東音

父の日と自ら言ひてそれっきり  洋子

紺作務衣繕ひ重ね氷室守  勢津子

吾が影を微塵にとばす芝刈機  布美子

田植すみ田圃一気に若返る  真生子

青葉光頬に指あて半夏生  邦弘

田を掻いて水面の空を裏返す  研二

蛍火や聞くを味方に継ぐ生命  佳子

ゆづり合ふあづまやの席風光る  陽子

夏鏡をんなの嘘をかくしけり  征子

白靴が並んで恋の話など  せつ

父の日に期待しずぎる妻の顔  栄子

  俳誌嵯峨野 十二月号(通巻第605号)より  

  

 

 

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