保津川下り乗船場 8号 水彩
レガッタ
囀りは杜の奏でるアリアかな 惟之
落日に染まる比叡や麦青む
松の芯一尺伸びて雨上がる
レガッタの声も消えたりみづき咲く
休校の門は開けられ白牡丹
誌上句会 兼題「新樹」
特選
約束は蛤御門新樹光 胡蝶
古墳群装ふ新樹吉備の国 つとむ
新樹陰絵本開けて読み聞かせ 眞喜子
妖精の隠れをりさう新樹光 里子
鎮まりて新樹の風の金色堂 須美子
秀作
渡月橋渡る先へと新樹風 円町
新樹光島へ五分のいろは丸 京子
天守閣望む大路の新樹かな 美樹
路線バス深き新樹の影に待つ 篤子
書に倦みてしばし佇む庭新樹 靖子
芸大の門まで続く新樹かな 美智子
江ノ電のカーブの先も新樹かな 京子
風鐸の音色は風に新樹光 啓子
免許返上帰路は新樹の影踏んで 章代
一湾に浮く猿島の新樹かな 基雲
新樹光三つの御代を越えて来し 静風
信濃路は白樺並ぶ新樹光 ともはる
打ち並ぶ観光バスや新樹光 秀穂
捨てがたき過疎のふる里新樹光 三枝子
新樹光準備整ふ能舞台 富治
故郷へ帰る山路新樹光 紀久子
新樹蔭光差し入るカッパ渕 山女魚
二の丸の空堀跡や新樹蔭 恵子
登校の歌声つづく新樹風 みどり
仰ぎ見る塔も新樹も耀うて 翠
やまびこ(七月号作品から)感銘・感動ーー私の好きな一句
風の声水の声聞く座禅草 素岳
ふるさとへ長き鉄橋雪解川 東音
手のひらに色も軽きや雛あられ 鈴子
おひなさま連れて病室変はりけり 志津
米寿来て菜の花のごと老いにけり 紀久子
干されつつ片目は海を恋ふ蝶 廣平
古里の野山輝く春の夢 志津
繰り返す母の小言のあたたかし 優江
山笑ふ抱く獣をゆり起こし きぬ
土筆摘む地のぬくもりを両膝に 鈴枝
菜を洗ふ指の先より春兆す 梅子
井戸を掘り水路を拓き鳥雲に 怜
春の雨涙の訳は聞かずまま 方城
春の月呼べば答えてくれさうな テル
不器用な人付き合いや麦を踏む 小鈴
笑顔よきバイクの尼僧春疾風 アイ子
電球を睨む目刺や煙り中 文夫
土割つて寸の影おく蕗のたう 素岳
哀しみはルオーのピエロ春灯 怜
マスクしてマスクの人と挨拶す 照子
俳誌 嵯峨野 九月号(通巻第590巻)より