竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

再びベストショット:桜と鹿と浮見堂のシルエット

2010年05月19日 | 日記
5月8日の「ベストショット:桜と鹿のシルエット」が
みなさんに一番多く見ていただいているようなので、
アンコールに応えて
「再びベストショット:桜と鹿と浮見堂のシルエット」を
お届けします。

やはり、夕方の空の光に映えて、鹿がみごとにシルエットで浮かび上がっています。



次に、浮見堂と桜です。これも同じ日の夕方撮ったものです。
ごゆっくり、みてくださいね。


伯母ケ峰の一本足

2010年05月19日 | 日記
今日は吉野に伝わる伝説をひとつ、語りましょう。

吉野では山仕事に出て、
お腹がすくと、「ひだる神」にとり憑かれるといいましたが、

「はてのはつか」(12月20日)に伯母ケ峰の峠を越えると
一本足の鬼に襲われるそうです。

上の写真を見て下さい。
これは伯母ケ峰とそれに連なる大台ケ原の連峰を撮ったものです。
ご覧のようにとても山深くて、日本でもっとも多く雨が降るところです。
伯母ケ峰には大和から熊野に抜ける熊野街道が通っています。
そこにはこんな話が伝えられています。


ある猟師が猟犬をつれて、伯母ケ峰に猟に出かけてんて。
そしたら、大きなケモノを見つけたんで、猟師は、銃でしとめようとしてん。
ところが、逆に、ケモノに襲われそうになったんで、
猟師は、命からがら「南無阿弥陀仏」と書かれた念仏玉を打ち込んで、なんとか助かってんて。

一方、殺されたケモノは亡霊となり、数日後、野武士の姿をして、
和歌山県本宮町にある湯の峰温泉に湯治に行ったそうや。
そして、宿の主人に、
「わたしが風呂に入っている間、ぜったいにのぞいてはいけない。」
と言って、見んように約束させてんて。

ところが、宿の主人は約束を破ってのぞいてしまったので、
亡霊は、宿の主人を殺してしまってん。

それから、その亡霊は一本足の鬼となり、伯母ヶ峰を通る旅人を喰うようになってんと。
そんなわけで熊野街道は、誰も通らなくなってしまってん。

その話を聞いたお坊さんが、地蔵さんを祀って、お経を埋め、
この鬼を封じ込めてしまったということや。
そやけど、お坊さんは「はてのはつか」だけは人を自由に食ってもよいと、
鬼に約束してんて。
そんなわけで、大台ケ原では「12月20日は、伯母ヶ峰をぜったい通ってはいけない」
と言われているねん。

みなさんも「はてのはつか]だけは、熊野街道を通るとき、
伯母ケ峰の一本足に襲われんように気いつけや。


  原典:丸山顕徳編『語りつぐ吉野の民話』金壽堂出版
  再話:竹原威滋

この原典にはほかにも面白い話が載っているので
是非読んでみてください。