竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

朝ドラ「ゲゲゲの女房」も取りつかれた「ひだる神」

2010年05月17日 | 日記
前回はNHK朝ドラにも登場する「小判は木の葉」の話:
「狐にだまされた魚屋さん」の話を語ったが、
今回は同じく「ゲゲゲの女房」にも登場する「ひだる神」に
ついて語ろう。

まず、上の写真を見て下さい。
これは「メンパ」といって曲げ物の弁当箱で、山仕事に行くとき、
携行されたものである。一般には木地のままのものが多いが、
漆塗りのものもある。

吉野の山村では、メンパに弁当を詰めて、山仕事に出る。
山仕事はけっこう重労働なので、弁当を食べて仕事をしてて、
急に空腹に襲われる時がある。
そんな時、「ひだる神」に襲われるというそうだ。
そのための対策として、昼ごはんの弁当は
ひと口だけご飯を残しておくという。

それでは 「ひだる神」の話をひとつ、語ろう。


メンパって言うのを、山へ弁当ね、入れて行きますのや。
ほして、昼飯を食べますでしょ。
ほいたら、メンパの底にひと口くらいのご飯を残して帰りますねん。
それはなぜかと言うたらね、ひだるいってことありますでしょ。
ここらはね、おなかすいたことを「ひだるい」といいますね。
山仕事をしていた人がね、夕方にひだる神が憑きましてね。

ほいてね、そねしとったら、ひだる神て狼みたいなものですねと。
それを、石に蹴つまづいて、こけたりするとね、ひだる神に噛みつかれますねて。
だから、ひだるい思いせんように、残ったひと口のご飯を、
「ひだる神が憑いたな」と思ったら食べますのや。

語り手:桶谷静江
原典:竹原威滋・丸山顕徳編『東吉野の民話』