金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

プロポーズ小作戦55

2009-04-28 21:46:05 | コードギアス
プロポーズ小作戦55

星刻が自分からちょっかいを出しながら、スザクを放置したのはスザクが思ったような理由ではなかった。ごく単純な問題。血が高揚する感覚と同時に胃が痛んだためだ。
スザクは誤解したが、ラクシャータは3時間も星刻に説教していたわけではない。
防音装置を作動させた後は、神虎の操縦補助プログラムの修正にかかる。これは今テスト機体生産中の白虎に使われる。補助プログラムが完成すれば、バイクに乗れるレベルの兵士でナイトメアが動かせる。エリートのものだったナイトメアの世界に革命を起こすだろう。そのためにはプログラムの原型である星刻の細密なデータが必要だ。
ラクシャータはゼロ革命の直後から気が付いていた。星刻の身体に残るレーザーメスの痕跡。そして、肝臓系の数値をはじめ、全身に現れた変化。
(移植を受けている)

星刻本人が移植を認識していないようなので、ラクシャータは口を閉ざした。
神虎の整備のたびに星刻を綿密に調べたが、今のところ拒絶反応は無い。
星刻は天涯孤独な身である。他人からの移植だとすれば奇跡的な適合率である。
誰がドナーだったのか?それについてラクシャータには仮定説がある。公開することはできない説であるが。

今回の調整でラクシャータは星刻に告げた。消化器官が萎縮し始めていると。
「今は慢性胃炎だけで大きな問題はないんだから、まともな食事を食べるんだね」
「のどが痛むので」
星刻の歯切れは悪い。
歯医者を嫌がる子供みたいだねぇとラクシャータは見る。
「のどの傷は完全に治っている。多少血管と気道が細くなっているけど」問題がおきるほどではないとラクシャータははっきり告げる。
星刻もわかっている。今感じている痛みは、結局精神的なものだと。生きているという事に精神が付いていかない。だから体の一部に苦痛を負担させる。
今の所、精神安定剤と鎮痛剤のあわせ技で痛みをコントロールできている。

「とにかくこれ以上成分栄養剤に頼っていたら萎縮した内臓が腐敗しかねないからね」。多少の誇張をくわえてラクシャータはきつく言う。
参考までに成分栄養剤は経腸栄養剤の1種で、窒素源が合成アミノ酸のみから組成されたものである。
人工的に製造され、すべての成分が明らかになっている。糖質はデキストリンとして配合されているため消化が不要である。

星刻の額に皺が寄る。仕方ないと本人もわかっている。ただ、怖いのだ。もう数年も普通の食事をほとんど摂っていない。


プロポーズ小作戦54 2020年7月20日太陽風の日

2009-04-28 14:47:17 | コードギアス
プロポーズ小作戦54

2020年7月。この年はひどく暑くて、脱水症の死者が万人単位で出た。公式数値は確認されていないがもともと大陸性気候の中華の被害は膨大だったはずだ。



その暑い夏のさなかの2020年7月20日。大学2年のリヴァルは21歳になった。
『暑い』
口を開けばまずそれが出てくる。
何が理由かはわからないが、大学全体が停電し、冷房も情報システムもダウンした。《後にわかることだが、被害は大学だけではなく、世界規模であった。原因は太陽風とされている》
玉のようにを通り越して滝のように落ちる汗。こういうときアッシュフォードは箱庭として造られたために自家発電があった。だが、ゼロ革命以降の突貫工事で造られた大学にはそういう設備は無い。

とんでもない誕生日だな。
思い出すのは数年前。憧れのミレイが会長だった頃。
当時、アッシュフォードの生徒会には7月生まれが多かった。
シャーリー 7月8日。
スザク 7月10日。
リヴァル 7月20日。
ミレイ 7月24日。
数日置きにホールケーキを食べるイベントは勘弁してくれという、胃弱な副会長の意見で誕生パーティはミレイの誕生日の翌日夏休みの始まる25日にまとめて行なわれた。
1メートルもあるケーキにみんなの年のろうそくを全部立てる。
結局胃を壊したルルーシュが翌日蒼い顔で寝込む。それなら食べなきゃいいのにと思うのだが、ルルーシュによれば誕生日のケーキは全部食べるのが決まりだという。
(あいつ皇子様のくせに所帯じみてて、ナナちゃんの誕生日にはエプロンドレスまで手作りしてなんだか世話焼きの母親みたいに。)

学友に名を呼ばれてリヴァルの回想は止まる。
寮にカードが届いているという。
メールが当然のこの時代にカードを送ってくるなど珍しい。
寮に着いてみると、ミレイ、ニーナ、カレン、ジノ、アーニャからのバースディカードである。
会長は以前より美人になった。ニーナは心境の変化か、めがねをやめた。カレンは医大生をしながらアルバイトでナイトメアの講師を務めている。ジノのカードは開くと誕生日の曲が延々50曲も流れた。しかも全てこのカードのためのオリジナル演奏だ。こういうところが貴族の坊ちゃんが抜けない部分である。アーニャのカードにはオレンジの大箱が付いていた。寮で分けて食べてもらったらあまりのうまさに購入希望が殺到したので、アーニャのブログを教えておいた。
直接会えなくてもこうして祝ってくれる。自分は幸せだとリヴァルは思う。
(スザクからは無いな)
幸せを感じる事ができる、今の優しい時代をつくってくれた嘘つき達からは来ない。