金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

プロポーズ小作戦111

2009-10-27 13:06:00 | コードギアス
プロポーズ小作戦111

ともかくも女官長は星刻を返した。公館の主を朱禁城にいつまでも留めていては中華の政治も軍治も滞ってしまう。
部下の女官兵達には固く口止めしたが、たぶん今夜中にこのことは知れ渡るだろう。
『先天性ロリコンの大司馬が、天子にスケベ心を起こした揚句振られた』
そんな声がネットに飛び回るだろう。
あの男の危険さを感知しなかった自分に対する無力感で女官長はすっかり落ち込んでいた。

女官長は時間が経つごとにだんだん腹が立ってきた。その怒りの方向は親族の周香凛に向いていた。香凛は士官学校を出てからずっとあのロリコンに付いていた。
離れたのは今回が初めて、ヨーロッパ系の外交官の元締めとして周香凛が赴任するため。
それと同時に自分は女官長に指名された。
親族といっても常日頃仲良くしているわけではない。それでも赴任前日に香凛は女官長を訪ねた。
『くれぐれも星刻様を見ていてほしい。国の改革の為なら、無理をする傾向があるから』
わざわざそれを言いに来たのだ。
確かにあの男は優秀だし、政治的な決断力もある。あの男なしでは改革は、100年は遅れるだろう。しかし、女官長が言いたいことはそういうことではない。香凛は一番大事なことを言わなかった。あの男が全力で天子に惚れてるということを。今夜のことは女官長である自分の失敗ということになる。


さて女官長の前では平然として見せた星刻だが、自分の公館に戻り地下5階に降りると、ここは星刻だけしか入れない、全身を打ち砕かれたかのような落ち込みを見せた。
「天子様を」
天子様を傷つけてしまった。

星刻が執務室に戻るまで3時間が必要だった。

プロポーズ小作戦110

2009-10-20 14:36:22 | コードギアス
プロポーズ小作戦110
ここで少し過去に戻ろう。プロポーズ小作戦の星刻は失策ばかりのようだが、他のところでは勝利を続けている。さもなくば一度は完全に秩序を失った中華をバックに世界の3分の2を支配するなどできるはずはない。
ゼロ・レクイエムが終わったあの日から、拷問の為落ち切った体を鞭打つように星刻は動いた。病状が安定するまで動かすのは危険という医師団の判断で、エリア11時代の中華領事館に本陣を置く。転んでもただでは起きないを実践した星刻は黒の騎士団の情報部門を直接の配下に取り込んでいた。ディートハルトの指揮下にあった情報部門は騎士団の中で浮いた存在だった。彼らとようやく連絡のついた蒼天講の生き残りを指揮し、10日後には洛陽を中心とした地域を安定させ天子を帰国させた。
星刻自身も7日後帰国。その折にはラクシャータを始めとするナイトメア技術者を伴った。この時点ですでに白虎部隊の計画はあった。
さらに蓬莱島に寄り、工学やライフライン関連の技師をごっそり洛陽に連れ帰った。技師たちは中華の名誉国民権を与えられ、本国日本でも望めないほど優遇された。
ラクシャータはともかく、蓬莱島の日本人についてはさすがの扇も一応苦情を申し出た。対して星刻は「彼らは望んで中華に来ている」とあっさり突っぱねた。
国力の差というものがある。ましてこのときの扇は一個人であった.技師達が望んで中華に渡ったと言われればそれ以上反論できない。結局彼らが望めばいつでも帰国させるという星刻の言葉を受けるしかない。
実際盆や正月には技師達は帰国し、中華での優遇ぶりを吹聴した。結果、ようやく軌道に乗り始めた復興に欠かせない技師がさらに中華に渡ることとなった。
後から見ればこれが政治家としての扇のデビューになった。
というのもこの時点で日本の政治家には星刻やシュナイゼル、EUやアラブの長達と対等に渡り合える人物はいなかった。また、そういう存在達とパイプを持った者もいなかった。
こう書くと日本の政治家は無能ばかりかと思われるだろうが、また実際にそうだったかもしれないが・・・、原因はフレイアである。まともな人材はほとんど消滅していた。

いきなり総理指名を受けた扇は最初かたくなに断った。
自分は小人で、罪人だ。
さらにブリタニア人の元軍人を妻にしている。
総理などという座には就きたくないし、就けない。
そんな扇を説得し、指名に応じさせたのは星刻だった。
「ゼロの意思を知らぬ者が彼の残したものを守ろうとすると思うか」と問うたのだ。
これは公式の記者会見の終わりに、付け加える形で発言された。
ゼロの真実を知らない者達が聞けば、第2次東京決戦で戦死した2代目ゼロの意思を継げとの発言である。扇は2代目ゼロの最も近しい同士であったから、しごく当然の言葉である。しかしゼロの真実を知る者が聞けば、「お前の罪を少しでも償え。彼の残した世界を守れ」。そう聞こえる。
扇が正式な選挙が終わるまでの暫定として、総理を受けたのは5日後である。


1000万人殺し。
のちの世にこの言葉で呼ばれる男がいる。
スザクのことではない。
悪逆皇帝のことでもない。
星刻のことである。
1000万という数がピンとこない方も多いだろう。参考までに今の東京の人口が約1200万である。
その程度の数は裏切り騎士も悪逆皇帝も殺しているだろうと思う方も多いだろう。ただし、それは戦場でのことで、星刻のこれは死刑のことである。
本国に戻ってから、星刻は死刑命令を大量に発行した。
それは仕方のない事だった。あまりにも巨大な中華を統一し続けるために、どの時代の為政者もやったことだった。星刻もやりたくてやったわけではない。
もし、死刑命令を出さなければどうなったか。中華全土から反乱の火の手が上がり、ようやく国としても体面を保っている中華はたちまち混乱期に戻るだろう。
そんなことになっては天子様が。

そんな星刻に気持も知らず、知らないのは当然なのだが、星刻が隠し通しているのだから、天子は問う。
どうしてなのと

プロポーズ小作戦109

2009-10-08 00:34:29 | コードギアス
プロポーズ小作戦109
星刻はマリアンヌと玄武が中華にいるときに産まれた子供。
マリアンヌはギアスの実験に自分が産み捨てた子供も使うつもりだったらしく、捜索したという記録が残っている。見つけられなかったのは子供が別人の戸籍で生きていて、年が違っていたため。
(運のいい男)
シュナイゼルは星刻をそう評価している。
天子に救われたいきさつといい、養父に救われたことといい星刻には強運がついている。
これは星刻の実力を軽んじているわけではない。
むしろ星の巡りすら動かす星刻のチカラを認めているのだ。
「では、君のチカラがゼロの頭脳役としてふさわしい事を証明してもらおう」

シュナイゼルは薄く笑い、星刻に関する情報を裏ルートから流させた。世界中が彼の産まれを知ることになる。

プロポーズ小作戦108

2009-10-08 00:09:47 | コードギアス
プロポーズ小作戦108
南国特有の植物の匂いを含んだ湿った空気、その空気をシュナイゼルは知っている。
あのときはカンボジアで、・・・。
そこでシュナイゼルの思考は止まった。
ゼロ・ルルーシュのかけたギアスはシュナイゼルの中で、思考の一定の方向と歯止めという形で存在している。
『ゼロに仕えよ』
シュナイゼルの思考がある枠を超えようとすると、声が聞こえる。
『ゼロに仕えよ』

ただしこの命令は細かい事には規定が無い。
仕えるというイメージはシュナイゼルに任されている。

シュナイゼルは大国の宰相として、またゼロの参報として有益な存在であり続けるため、常に情報を集めている。その情報もそんな情報群のひとつであった。
世界の3割を実質的に支配している黎星刻、彼が悪逆皇帝並びに裏切り騎士の同士であったというのだ。事実を知るシュナイゼルにとってはばかばかしいとしか思えぬ話だが、証拠としてあげられた理由には大いに注目した。
黎星刻はあの悪魔どもの兄であり、弟達を使って世界を支配しようとしていた。

プロポーズ小作戦107

2009-10-05 01:13:31 | コードギアス
プロポーズ小作戦107
中華一優秀な男の鉄壁の理性も、このところの不調で幾分落ちていたのか。あるいは(もうすぐ天子様の側にいられなくなる)、その思いがタガを外してしまったのか。


慌てふためく兵から報告を聞いた女官長は、こんな厄介な事態を押しつけた男を即銃殺したくなった。

単純に考えれば銃殺が妥当。しかし、・・・考えるのもばかばかしいがこれは痴話げんかのようなもの。そもそも中華国内でこそ問題視される主従の恋愛だが、国際的にはかわいい天子の恋心の行方を温かく見守る風潮が強い。ことにブリタニアの皇族達は強力な応援団になっていて、もし天子をむりやり他の誰かと結婚でもさせたら中華は国際的に孤立しかねない。

「えーいもう」
握りしめた拳が力一杯机をたたく。
繊細な透かし彫りで飾られた机はその身に耐えない暴力にあっさりひび割れた。
それがますます女官長をいら立たせる。
よく言われるし、自分でも自覚している。
自分は軍人として、戦場を駆けている方が似合う。
自分のどこを見て、あの星刻は女官長などに任じたのか。
「不機嫌だな」
不機嫌の原因たる面倒事を起こしてくれた男は常と変らぬ涼やかな声で言う。

プロポーズ小作戦106

2009-10-02 16:51:05 | コードギアス
プロポーズ小作戦106
ある少女が小さい頃から仲良しだった近所のお兄ちゃんを好きになった。大人になって結婚した。結婚式では新朗は「光源氏計画大成功おめでとう!!」とさんざんからかわれた。何事もなくすんなり手に入れた花嫁のようだが、新朗に言わせればそれなりの苦労はあった。
 もし、天子が天子でなくて星刻と出会っていたらこんな感じであっただろう。結婚して子供を得た後では笑い話にしかならない『修学旅行で他の男とツーショットの写真を撮っていた』。もし二人が普通の生まれ育ちであったら今回のトラブルはその程度のエピソードに終わるはずだった。だが、二人がいるのは朱禁城の中核である。
風の音がする。
天子はその音を聞きたくなかった。
だから椅子を立って星刻の側に来た。
一番安心できるはずの場所に。
しかし、数秒後天子の声はある叫びをかたちつくった。
「いや、はなして」

朱禁城の新しい女官長は元軍人で有能である。
常時、天子の身を守るのが彼女の務め。
天子の声は小さかったが、室外の女官兵に聞こえるには充分だった。
部屋に飛び込んだ女官兵達は見た。男が天子様に狼藉を加えようとしている。
男の腕はしっかりと天子を抱きしめていた。
女官兵達は女官長の訓練通りに、男を取り押さえ天子様を確保。
連絡を受けて駆け付けた他の兵とも協力し、男を実弾入りの銃で包囲した。
このときようやく女官兵達は捕らえた相手が大司馬であることに気がついた。