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プロポーズ小作戦44 政策変更

2009-04-20 19:16:14 | コードギアス
プロポーズ小作戦44

「キルギスを経済特区モデル地区にだと。あんな何も無い土地をか」
洪古の声には怒りがある。怒りはキルギスを特区に指定する事ではなく、星刻自身に向いていた。

2ヶ月ほど前、星刻は会議の後倒れた。貧血という事だが本当の理由はむしろストレスだ。
もう一年以上星刻はまともな食事を摂っていない。正確に言うと天子の政略結婚の数ヶ月前当たりからだ。星刻は生まれつき消化器官が、一般人よりほんの少しずれていた。その影響はじわじわ、そして急激に出た。
最初は動物性食品が食べられなくなり、やがて固形物がのどを通らなくなる。その頃の星刻はあきらめていた。生きている間に天子様のために世界を整えるだけだと決めていた。ところがあの悪逆皇帝が何を思ってか、星刻の命を助けた。
だが、すでにあちこち痛んでいた身体が元に戻る事は無い。また、移植された内臓は一卵性の双子ででもない限り、拒絶反応が付き物だ。
いきなり変わった自分の体。異常なほど落ちた抵抗力。空白の記憶。
国を背負う事の意味。
何かするたびに亡き尊父様の薫陶云々を言われる。
そういったもろもろが星刻を苛んだ。彼はまだ23歳の若造にすぎなかった。

星刻が倒れたとき洪古は洛陽にいなかった。ひそかに報告されて慌てて極秘回線で通信を送ると、星刻は倒れた事など無かった事のように執務にいそしんでいる。
だが、さすがに顔色の悪さはごまかせない。そのとき洪古は星刻に無理やり約束させた。「いいか、俺が帰るまで軍務は出るな。なんとか引き伸ばせ」
洪古はもう星刻を戦場に出す気は無かった。自分や蒼天講のメンバーがいる。星刻一人が無理をすることは無い。できれば神虎からも降ろしたかったが、それは不可能だ。ならば星刻には神虎ともども守護神になっていてもらおう。そうすれば軽々しく動けまい。

ところがようやく北の元大宦官派閥を倒して洛陽に戻って見れば、星刻は《ひといくさ》終えていた。
さらに、『しばらく地方の政策は急には変えないで置こう。それなりの人材が育つまで強力な中央集権体制で行く』。そう決めた原則をあっさり覆すかのように、キルギスを独断で特区に指定した。
かくして、洪古の冒頭の一声と成る。