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プロポーズ小作戦127兼天子様のお勉強会その5あるいは自習の時間

2010-07-23 22:41:38 | コードギアス
プロポーズ小作戦127兼天子様のお勉強会その5あるいは自習の時間

『自分で調べてごらんなさい』
歴史教師は天子に宿題を出した。

先生はずるいなぁ。宿題を出すだけで、自分は宿題をしない。
今、学生である人も、昔学生であった人も1回くらいはこんなふうに思った事があるだろう。

天子様の家庭教師は自分にも宿題を出した。その宿題の内容は16歳にもなって、離婚の意味すら知らないとはどういうことか?なぜ知らないのか?自分以外の教師達はどうしてそういうことを教えていないのか。
そもそも普通なら16歳にもなればそういう知識を自然に身につけているはずだ。
天子の場合には育っている環境が特殊だから、普通の子供のように周りのおしゃべりや雑誌、テレビの知識から知る事は出来ないとしても。いや、天子が閉じ込められて何も教えられずに育てられていたのは13歳までで、その後はメディアを見る事も自由に出来るはずだ。現に天子はパソコンを使っている。
ただし、朱禁城のサーバーにはかなり強い禁止項目がある。歴史教師である彼も大学の友人とデータをやり取りするときに、禁止事項に引っかかったらしく何度も送信停止措置を受けた。
あれは歴史の資料でそれほどたいした内容ではなかった。それなのに引っかかったという事は、どうやら離婚とか浮気とかが検閲事項であるらしい。だから天子もそういうことを知らないのだろう。
さて、それでは誰がその検閲を命じたのかである。

「やはり、彼か?」
歴史教師は口の中だけでつぶやく。
彼、黎星刻。
朱禁城の守護者。天子の第1の忠臣。先の革命の首謀者。今の大浄化の指揮官。中華の最高権力者。2代ゼロ唯一の同盟者。3代ゼロの同盟者。世界の3分の1を実質的に支配する男。
そして何より重要な要素は、天子を愛している男。
もっとも、この最後の項目を星刻は決して認めない。どんなインタビューにたいしてでも彼は固い声でこう答える。「私は天子様の臣下にすぎない。」
答える声は静かで淡々としているが、眼光は鋭い。たいていのインタビュアーはその視線に貫かれただけでそれ以上声が出せなくなる。



歴史教師は結構綿密に調べた。

確かに天子は年齢の割に小柄だし精神的にも幼い気がしていたが、離婚という単語すら知らないとはどういうことなのか?
女官達はそういう色ごとめいたおしゃべりをしないのだろうか?そういえば、朱禁城の女官はやけに静かだ。普通なら上官の目が届かないところでは若い女官達は仕事そっちのけでおしゃべりするものだが。

歴史教師は天子の過去を順に調べていった。
ゼロ革命後、天子は朱禁城に帰った。この時星刻は同行していない。彼はエリア11改め日本で入院中であった。
この時天子は自分だけが先に帰国する事にかなり抵抗したらしい。
非公式メディアに天子のこんな言葉が書かれていた。
「こういうときにはこいびとが側にいるのでしょう。わたし星刻の側にいたいの」
本当に天子がそういう言葉を言ったかは不明だが、日本人の目には天子の恋はまるわかりだったらしい。


この時星刻の入院が長引いたのは、悪逆皇帝による拷問の傷もあったがそれ以上に、裏切り騎士との戦闘時に受けた負傷が悪化したためであった。公式記録によると星刻ののどは組織が3割ほどつぶれていた。あの戦場で黒の騎士団の医師は出来るだけの応急処置をしたが、その後続いた激戦の中で悪化したらしい。
花のパレード後に開かれた国際会談、そこで星刻はシュナイゼルを完全に圧した。
その後の世界の方向性を決めたのはこの会談と言われている。その会談で中心になっていた星刻は今の世界の設計者と言ってもいい。だが、会談の後戻ったホテルで星刻は呼吸困難をおこした。幸いホテルに腕のいい医師が泊っていた。医師の診断によると崩れた組織が気管を圧迫していた。治療方法は有るが年単位の時間がかかる。
 星刻にはのんびり治療を受けている暇は無い。そこで、その医師を中心に緊急チームが組まれ狭くなった気道を回復させる手術を行われた。気道を確保する代わりに食道を半分近く犠牲にした。

最近天子は星刻と食事を共にしている。そのメニューが流動食めいたものなのは星刻の負傷が理由であった。


星刻の手によって朱禁城の真の主となった天子のその後の生活である。星刻はまだ日本で入院中の身であったが、病室内に高性能の通信システムを置き本国中華を始め、各国に指示を出していた。
病室には連日複数の見舞客が訪れた。その見舞客の顔ぶれはいずれも各国の指導者達である。時には数カ国のトップがはちあわせることもあった。この時期に世界では数多くの友好条約や商業条約が結ばれている。その多くがこの病室で作られた。ゆえにこの時期の条約を後世の歴史家は見舞外交条約群と呼んだ。
 見舞客の中には天子と一緒に人質とされていた各国代表達もいた。大国もあれば小国もあった。大国の代表は条約の目算が立つと自国から迎えを呼んで帰国して行った。しかし小国にはそんな余裕は無い。中にはいまだに本国との連絡が付かない者さえもいた。
 星刻はそんな小国の代表達を友好条約というお土産を持たせて本国に送り届けさせた。
 天子は帰国後少ししてから、星刻のすすめでいくつかの国を友好訪問している。この時に訪問先として選ばれた国はあの時星刻に帰国させてもらった国々であった。どの国も中華には恩義を感じており、天子が多少の失敗をしても全く問題にならない。天子はそうやって外交のコツを覚えていく。
 
歴史教師は本を閉じた。これまで読んだ資料では天子が男女の色ごとや愛や恋にも終わりや裏切りがある事を知るチャンスは無い。それが単なる偶然か、誰かの強い意図の結果かは、・・・(証拠は無い)。歴史教師は今日の調べたことは自分の日記にだけ書こうと思った。